●除霊で背骨痛から解放された女性
 憑依が原因となっている慢性的病弱の特異なタイプのひとつに、背骨の痛みに何年も苦しんでいるG夫人の例がある。どの医者に診てもらっても一向に良くならなかった。
 我々のもとを尋ねて来られて何度か治療を施すうちに、背骨と首の骨を損傷して死んだスピリットが除霊された霊媒に乗り移った。
 霊団の説明によると、そのスピリットはG夫人がまだ子供の頃にオーラに紛れ込み、神経系統に絡まってしまい、死んだ時の損傷がそのまま続いていると思う想念が、G夫人にも移っていたのだという。
 除霊後、G夫人は痛みからすっかり解放されている。


 1923年7月4日
 スピリット=ジェームズ・ホクセン
 患者=G夫人


 霊媒に乗り移った時の様子は麻痺状態にあるような感じで、頭が肩の方へ垂れていた。最初のうち話すことが出来ず、首のところを指差しながら、とても痛むかのようにうめき声をあげていた。
 招霊会に同席していたG夫妻は、真剣な表情で見守っている。
博士「苦しんでいた時の癖はお止めなさい。痛みを忘れるのです。(そう言ってから霊媒の手先と腕を動かしてみせて)ほら、腕は固くないでしょう?首と骨をまっすぐ伸ばしてごらんなさい。もう麻痺してませんよ。
 いいですか、あなたは肉体を失ったのです。もうスピリットになっておられて、地上をうろつきまわり、人様に迷惑をかけていらっしゃるのです。お名前をおっしゃって頂けませんか」
 スピリット「(G夫人を見つけて)ああ、いた!」(と言って両手を差し出してG夫人のところへ行こうとする)
G夫人「だめ、私のところへ戻ってはだめ!来ないで!」
スピリット「ああ!」(と泣きながら、G夫人のところへ行こうとする)
博士「これ以上の身勝手は許されません。助けに来てくださってる高級霊の方の言うことを聞かないといけません。楽になるにはその病気のことを忘れるしかありません。うめいたり泣いたりしても救われません」
G夫人「この方はお医者さんです。治してくださいますよ」
博士「さあ、話してごらんなさい」
スピリット「もう、あの火はごめんです」
博士「いつまでもそんな状態だと、またお見舞いしますよ」
スピリット「もういいです。(もがきながら)ああ、あの火はもういい!」
博士「よく聞きなさい。だいぶ前に何かが起きたはずなのですが、何だったのか、覚えていませんか」
G夫人「さ、先生に答えて」
博士「現在の本当の状態を理解することです。あなたは多分、かなり前に死んだのです」
スピリット「ああ、背中が!背中が!」
博士「背中がどうしたのですか」
スピリット「砕けたのです」
博士「どうして?」
スピリット「馬から落ちて」
博士「どこにお住まいでしたか」
スピリット「思い出せません。死んだようにも思えたことがありますが、今は死んでる気はしません。落馬して背骨と頭と首がバラバラになってしまって・・・。頭が背骨から外れてしまいそうなのです」
(G夫人は、年中そういう感じがすると訴えていた)
博士「落馬したのは、いつのことですか」
スピリット「分かりません。ここのところを打ったのです」(と言って首の左側に手をもっていく)
博士「そのことを忘れるのです。そんな感じを持ち続ける必要は、もうないのです。今あなたが使っている身体は、健康体です。あなたの姿が私達には見えていないことは、ご存知ですか」
スピリット「あの火はもう結構です。首にひどくこたえました」
博士「あなたに出て頂く為に必要だったのです。なぜ、あのご婦人につきまとうのですか」
スピリット「首が、首が、そして頭が!痛くて我慢できません」
博士「その苦しみは、どれくらい続いているのですか」
スピリット「もう、何年もーずいぶん昔からです」
G夫人「落馬したのは、大人になってからですか、それとも、子供の時でしたか」
スピリット「ずいぶん前に痛めたのですが、まだ痛みます」
G夫人「どこでの話ですか。カリフォルニアですか」
スピリット「いえ、もっともっと遠いところです。でも、地名が出てきません」
博士「ずっとさかのぼってごらんなさい。記憶が戻りますよ」
G夫人「イリノイ州?それともアイオワ州?」
スピリット「今、目を覚ましたばかりですので、少し待ってくださらないと。首がひどく痛みます。それに頭も。首が折れたのです。頭が背骨から外れてしまって・・・」
G夫人「あなたには、もう、物質でできた頭はないのですよ」
スピリット「だったらなぜ、あの火が頭のてっぺんに来るんですか!」
G夫人「あれで、あなたは、救われるのです」
スピリット「火ですよ!火ですよ!」
G夫人「首は少しも痛くはないはずですよ」
スピリット「痛むんです、それが!」
博士「いえ、痛むはずはありません」
スピリット「私は麻痺してしまったのです。脊髄をやられたのです。動けないのです。ああ、首が動かない。折れてしまった!」
博士「折れた首は、もう墓に埋められましたと言ってるのが分かりませんか。あなたには、もう肉体はないのです。その身体は、本物の肉体ですよ。ですが、それは、いつまでもお貸しするわけにはいかないのです」
スピリット「あなたは、私の身体がどれほど痛いかが分かってないのです」
博士「あなたが、そう思い込んでいるから痛むのです。墓に埋められたものがなぜ痛むのですか」
スピリット「墓に埋められているというのは、どうして分かるのですか」
博士「それはあなたの身体ではないからです」
スピリット「私の身体が墓に埋められているという証拠でもあるのですか」
博士「あなたというご本人がここにいらっしゃるということが、何よりの証拠です。あなたが今喋っている身体は、あなたのものではないのです」
スピリット「どうして、そんなことが言えるのですか」
博士「あなたには、理解しようという気持ちが欠けています。独りよがりなのです。本当は事実に気づいていますね?」
スピリット「教会にもよく通いましたし、イエス・キリストのこともよく知っています」
G夫人「どういう教会でしたか」
スピリット「メノー派教会です」(G夫人はメノー派教徒として育てられた)
G夫人「どこにありましたか」
スピリット「カンザスです。昔の話ですけどね」(G夫人は何年か、カンザスに住んでいた)
G夫人「何という町ですか」
スピリット「Nー」
G夫人「あなたのお名前は?」
スピリット「忘れてしまいました。首が痛みます」
G氏「町に住んでたのですか」
スピリット「いえ、農業地帯です」
G氏「お名前は?」
スピリット「あったのでしょうが、しばらく呼ばれたことがないので・・・」
G氏「馬から落ちた時の様子は?」
スピリット「丘を登って行く途中で、兎が飛び出して来て、それに驚いた馬が急に走り出したのです。手綱をしっかり握っていなかったものですから」
G氏「乗馬は、あまり得意でなかったのですね?」
スピリット「鞍をつけてなかったのです。しがみつこうとしてもー」
G氏「乗馬用じゃなかったようですね」
スピリット「私は雇用人でしたから」
G氏「年齢はいくつでしたか」
スピリット「十六か七だったと思います」
G夫人「お母さんは、あなたのことを何と呼んでいましたか」
スピリット「知りません」
博士「メイベルと呼んでたんじゃないですか」
スピリット「男の子をメイベルなんて呼びませんよ。肩と背骨が折れてるんです。首も何年もの間ずっと折れたままです」
博士「肉体はもうなくしたということを、しっかりと理解しないといけません。名前は何とおっしゃいましたか」
スピリット「ジェームズです」
博士「ただジェームズだけだったのですか。(手を指差して)これ、あなたの手ですか」
スピリット「違います。指輪なんかしたことはありません」
博士「その手は、一時的に使っておられるだけです。あなたのものではありません。私の妻のものなのです」
スピリット「自分の手が小さくなったように思ってました。そうそう、名前はジェームズ・ホクセンでした」
博士「あなたは、落馬した際に亡くなられたのですよ」
スピリット「頭が落ちてきそうだ!」
博士「落ちたら拾ってあげますよ。あなたはスピリットになっているのに、何も知らずにあのご婦人に迷惑をかけていたのです」
スピリット「スピリットって何ですか」
博士「それをこれからお話しようと思っていたのですーあなたは・・・ええっとー」
スピリット「ジェームズです」
博士「私の目には妻の身体しか見えてないものですから・・・お疑いなら、ここにいる人達のどの方でもいいですから、聞いてみてくてださい」
スピリット「頼るのなら、あなたの奥さんより他にいます」
博士「誰ですか」
スピリット「(G夫人の方を指差して)あの方のところへ戻りたい。あなたがいい」
G夫人「私のところへ戻ってきてはいけません。霊界へ行くのです」
スピリット「それは、どこにあるのですか」
博士「地球を取り巻いている、目に見えない世界です」
スピリット「(気取った言い方で)イエス・キリストに会いたいものですねえ」
博士「なんですか、そのものの言い方は」
スピリット「いけませんか。それより、首を治してくださいよ」
博士「今、あなたが置かれている実情を素直に理解すれば治るのです。あなたはスピリットになっていることを知らずに、一人の女性に迷惑をかけてきたのです。それで『火』を使ってその方の身体から追い出して、今、私の妻の身体を使って話をさせてあげているのです。あなた自身には、もう、肉体はないのです。今、あなたがいるスピリットの世界についての正しい知識を身につけないといけません」
G氏「私の名前をご存知ですか。お知り合いにGーという名前の人はいませんでしたか」
スピリット「いましたが、遠いところに住んでおりました」
G氏「Kーという名前の人は?」(G夫人の結婚前の名)
スピリット「別の町にいました」
G氏「落馬したところは、あなたの生まれ故郷ですか」
スピリット「私が生まれたのは、ずっと田舎です」
G氏「今年は何年だと思いますか」
スピリット「知りません」
博士「大統領の名前は何と言いますか」
スピリット「政治のことは新聞をあまり読まなかったので知りません。農場で雑用ばかりやっておりました。それも、ずいぶん昔のことです。このところ『火』をかけられなくなりました」
 博士「『火』を浴びせたのは、この私です。あれは電気なのです」
スピリット「いや、火でした。電気じゃない。電気だったらビリビリきますよ」
博士「それがあなたには『火』を浴びたように感じられたのです」
スピリット「何も悪いことをしてないのに、なんであんなひどい目に遭わせるのですか!」
博士「あなたは、あのご婦人を永いこと苦しめていたのです。あなたのせいで、自分の思うような生活が出来なかったのです。それで私が『火』を浴びせて、あの人の身体から出て頂いたのです。あたりをご覧になってみてください。どなたかの姿が見えるはずですよ」
スピリット「いっぱい来ています。(急に興奮して泣き出しながら)母さん!ああ、母さん!」
博士「あなたのことを心配して、助けに来られたのですよ」
スピリット「ああ、母さん、なぜあんなに早く死んじゃったの?僕はまだ子供だったのに・・・あれから何もかもムチャクチャになって、僕は一人で生活費を稼がないといけなくなったんだ」
博士「お母さんは、何かおっしゃってますか」
スピリット「『ジミー、一体どこへ行ってたの?』と言ってます。ずいぶん探したんだけど、見つからなかったのだそうです」
博士「それは、あなたがG夫人の身体の中に入っていたからですよ。それがあの方に大変な迷惑をかけていたのです。さ、お母さんとお行きなさい」
スピリット「母と会うのは久しぶりです」
博士「今年は1923年ですよ」
スピリット「まさか!」
博士「1923年7月4日です。そして、ここはカリフォルニアのロサンゼルスです」
スピリット「1893年ですよ、絶対に!」
博士「それは三十年前の話です」
スピリット「でも、事故に遭ったのは1896年です。それから何年も不自由な身体で過ごしましたけど、記憶にあるのは1896年です」
博士「二十七年前の話ですね」
スピリット「その永い年月をどうやって過ごしてきたのでしょう?私は眠り続けていたのでしょうか」
博士「眠っておられた時期もありますが、大半は地上の人間に迷惑をかけていたわけです」
スピリット「ずいぶん永い間、何かの中に閉じ込められていた感じです(G夫人のオーラ)。ある時期(落馬して死亡した直後)眠りに入っていくような感じがして、死ぬのかなと思っていましたところ、どこかに閉じ込められてから少し様子が変わりました。ドレスを着ていて、なんとなく女になったみたいに感じていましたが、何しろ首をやられていて、その首が今にも落ちそうな気がして・・・」
博士「G夫人のオーラの中に入り込んでいたのです。肉体はなくなったのに、首が折れたという観念を抱き続けていただけです。肉体は墓に埋められたのです」
スピリット「でも、今でも首が痛みます」
博士「それは、首が折れたという観念が残っているからです。『人は心に思ったとおりになる』というではありませんか。折れた首のことが心から離れないから、痛むような気がするのです。その身体は首は折れていませんよ。私の妻の身体ですから」
スピリット「あなたの奥さんの?今、どこにおられるのですか」
博士「眠っています。その足をご覧なさい。あなたの足だと思いますか」
スピリット「女性の足ですね」
博士「一時だけお貸ししているのです。さ、お母さんと一緒に行きなさい」
スピリット「母さん、連れてってくれますか」
博士「何とおっしゃってますか」
スピリット「連れてってあげるけど、その前に、あのご婦人に許しを請わないといけないと言ってます。でも、どうやってこの身体から出るのだろう?永いこと閉じ込められていて、体力も衰えちゃって・・・ねえ、母さん、来て手を貸してちょうだいよ。これからは言うことを聞きますから」
博士「そのうち何もかも事情がはっきりしますよ」
スピリット「死んでいくみたいな感じです」
博士「一時的な感覚です。身体から離れる前には死んでいくみたいな感じがしますが、それは、その身体のコントロールを失いつつある証拠です。死んだりなんかしません。死のうにも死ねないのです。死んでしまった人は一人もいません。スピリットは永遠に死ねないのです」
スピリット「健康な身体になれるのでしょうか」
博士「なれますとも。首が折れたことや痛みのことは忘れることです」
スピリット「では、母とまいります。奥さん、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
G夫人「もういいのですよ、ジェームズ。過ぎたことは忘れてください」
博士「高級霊の方達が色々と教えてくださいますから、素直に聞くのですよ。さ、お母さんとマーシーバンドの方達と一緒になったつもりになってごらんなさい」
スピリット「さようなら」