以下の文章は、[迷える霊との対話]という、霊的知識の書物から抜粋した文章です。また、自殺に関するその他の霊的知識は、[自殺してはならない霊的な理由]に書かれています。

 これは招霊実験を始めた 頃で、1906年11月15日にシカゴで起きたものである。いつもの交霊会を催している最中に急に霊媒の様子がおかしくなって床の上に寝転び、しばらく人事不省のような状態が続いた。そのうちやっと憑依霊が引き出された。
 とても苦しんでいる様子で「もっと薬を飲めばよかった。死にたい。もう生きているのはイヤ!」という文句をくり出した。それから弱々しい声で、あたりが真っ暗で何も見えないと言った。部屋の電灯の明かりが直接顔に当たっているのに、それが見えないのだった。それから、か細い声で、「息子がかわいそう!」と言うので、事情を説明するようにきつく求めると、名前はメアリー・ローズといい、住所はサウス・グリーンストリート202、ということだったが、我々の全く知らない住所だった。
 最初のうち年月日がさっぱり思い出せなかったが、「今日は1906年11月15日ですか」と尋ねてみると、「いえ、それは来週です」という返事が返ってきた。それから色々と聞き出してみると、彼女は慢性の腹部疾患に悩まされ、その人生はいわば失望の連続だった。その惨めな人生に終止符を打ちたいと思って服毒したのだった。そして実際には自殺に成功しているのであるが、私と接触のあった当初はそれが理解出来なかった。
 というのも、大抵の自殺者がそうであるように、彼女は生命の不滅性と死後の世界の実在について全く無知だったのである。が、私との対話によって人生の目的、経験の意義、苦しみの効用が分かり始めると、自殺したことへの後悔の念に襲われ、真剣にゆるしを求めて祈り始めた。そしてそれが僅かながらも霊的視覚を開かせ、迎えに訪れていた祖母の霊姿がおぼろげながら見えた。
 あとでそのスピリットが述べた住所を調べてみたところ、間違いなかった。メアリー・ローズという女性がかつてその家に住み、今でも息子が住んでおり、母親はクック郡立病院へ運び込まれて一週間前に死亡したという話だった。私は念のため同病院を訪れて、さらに確定的な事実を発見し、記録のコピーを入手した。それには次のように記してあった。


 クック郡立病院 イリノイ州 シカゴ
 メアリー・ローズ
 1906年11月7日 入院
 1906年11月8日 死亡
 石炭酸中毒
 ナンバー・341106