以下の文章は、[迷える霊との対話]という、霊的知識の書物から抜粋した文章です。また、自殺に関するその他の霊的知識は、[自殺してはならない霊的な理由]に書かれています。

 ●人間を自殺に追い込む憑依霊
 “どうしてまた、あの人が・・・・”と思いたくなるような、原因らしい原因がまったく見当たらない自殺の大半は、自縛霊による憑依や唆しが引き金となっていることが判明している。
 それには邪霊が意図的に自殺を唆している場合と、既に自殺をして霊界に来ていながらその事実に気付かず、自殺が失敗したと思い込んで、何度も自殺行為を繰り返しているうちに、波動の合った人間に憑依して、その人間を道連れにしてしまった場合とがある。
 いずれにしても、その行為の結果は例外なく惨めである。

 ●突然首吊り自殺した女性のスピリット
 最初に紹介するのは、私自身も少年の頃に通ったことのある日曜学校の女の先生で、X夫人と呼んでおく。妻とは一面識もない。知的で、霊性も豊かで、勿論熱心なクリスチャンで、二人の子供に恵まれた幸せな家庭の母親だった。
 どこからどう見ても、何一つ不幸の陰は見当たらなかったその先生が、ある日、突如として首を吊って死んでしまった。ご主人も子供も、訳の分からない悲劇に呆然とするばかりだった。
 それから10年後の冬のことである。シカゴの拙宅で、妻と二人きりで寛いでいた時に、突然、妻にあるスピリットが憑依して、苦しそうに喘ぎながら首のところに手をやって、もがき始めた。
 よくあることだが、自分が既に死んでいることに気付いていないスピリットが再び物質と接触すると、死に際の断末魔をもう一度体験するのである。この場合も同じだった。
 いろいろと尋ねていくうちに、そのスピリットは、驚いたことに、私の知っている日曜学校の先生で、首を吊って自殺したことを述べた。その時もまだ地上圏に釘付けにされていて、それまでの地獄のような精神的苦痛を述べ、さらにこう続けた。
 「肉体から離れてすぐ、私の愚かな行為の原因が分かりました。私達一家の幸せな生活を妬む教会関係の人達の念によって引き寄せられた邪霊の一味が、私のすぐそばに立っていて、上手くいったとばかりに、ほくそ笑んでいる姿が見えたのです。
 なんとかしてもう一度肉体に戻りたいと思いましたが、時既に遅しでした。その日から今日まで、どれ程の絶望と悔恨の情に苛まれたことでしょう。楽しかった家庭は破壊され、夫は生きる勇気を失ってしまいました。子供達はまだまだ私の世話が必要だったのに!私が近づいて語りかけても、全く通じません。私は、今日まで薄暗い闇の中で、悶々として過ごすしかありませんでした」
 私の説得によって慰めを得て、霊界の事情に目覚めたX夫人は、喜んで高級霊の手引きに従って霊界入りし、心を入れ替えて、改めて地上の愛する家族のために役立つ仕事をすると誓ってくれた。
 その後何年かして、我々のサークルで自殺志向の強い患者を扱っている最中に、突然X夫人が戻ってきて、次のような体験談を語ってくれた。

 1918年11月17日
 スピリット=X夫人

 「あれ以来随分になります。この度は自殺を考えておられるこの若い女性に、一言ご忠告申し上げたいと思ってやって参りました。
 何年も前の話になりますが、私は二人の可愛い子供と優しい夫に恵まれた、幸せな家庭の主婦でした。私共夫婦が相性が良くて仲睦まじかったせいか、教会関係の方達の中にはそれを妬ましく思う人が多くいたようです。
 当時の私は、バプテスト派教会に属していたせいもあって、自分が霊感が強いということを知りませんでした。ただひたすら家庭を守ることに専念しておりました。が実は、見えざる世界に、私を陥れようとする者がいたようです。ある日、いつものように明るく夫にキスをして送り出した後、ふと、誰かに捕まえられたような感じがしたのです。
 それから後のことは何も知りません。何一つ知らないのです。何か妙な感じがして、誰かに捕まえられて身動きが取れなくなったところまでは覚えているのですが、それからあと自分がどんなことをしたか、まるで分からないのです。
 暫くして我にかえってみると、全てが一変しておりました。目の前で夫が激しく慟哭しているのです。どうしたのだろうと思っているうちに、なんと、私の身体が首を吊ってぶら下がっていることを知ったのです。
 ああ!その時の私の苦悶をどう表現したらいいのでしょう!夫は部屋の中でぶら下がっている私の体の前で、悲嘆に暮れて泣き崩れています。なのに私はどうしてあげることも出来ませんでした。夫のそばに立ったまま、なんとかしてもう一度その身体の中に戻れればと願いましたが、駄目でした。二人の子供も泣きじゃくっています。その二人にも、私は何もしてあげられないのです。
 そのうち、何人かの邪悪そうなスピリットがすぐ近くに立って、私達一家の悲劇のシーンを見つめながらニタニタしているのを見て、やっと事情が分かりました。人の幸せを妬む彼等は、私を霊的に金縛りにし、私の身体に憑依して自殺させたのです。
 夫は、私が首を吊っているシーンを忘れることが出来ません。子供はまだ小さくて、面倒を見てやる必要がありました。私がやってあげるべきところを、夫が背負うことになってしまいました。
 もとより私は、自分の意志で自殺した訳ではありませんが、それから10年もの永い間、その行為が私の目の前から離れませんでした。といって、もはやどうしようもありません。そのことでどれほど苦しい思いをしたことでしょう。子供が可哀想で、可哀想で!ある日のことです。とても寒い日でした。ふと生き返ったような感じがしたのです。そして、なんとなく温かい感じがするのです。自分がどこにいるのかも分かりませんでしたが、とにかく生き返ったような感じがしました。先生(博士)が事情を説明してくださり、一時的に先生の奥様の身体を使わせてくださっていることを知りました。そして、知り合いのスピリットが霊界へ案内してくださることも知りました。
 そのことがあってから気持が幾分安らぎました。現在いるような美しい環境に行けたのも先生のお蔭です。しかし、それまでの10年の永かったこと!目に映るのは自分が首を吊っているシーンと、いたいけない我が子の姿でした。夫に子供・・・・どんなにか私の手を必要としたことでしょう!が、私には為す術がありませんでした。
 死にたい気持を抱いておられる方々に申し上げます。どんなことがあっても、それを実行に移してはなりません。自ら死を選んだ時、どれ程の地獄の苦しみが待ち受けているか、人間はご存じないし、また理解することも出来ないことでしょう。一旦その肉体から離れてしまうと、二度と戻れません。ということは、地上での義務がそれっきり果たせなくなるということです。
 子供達は、自分達の母親が自殺したという思いを拭うことは出来ません。夫も子供も私を許してはくれないでしょう。スピリットに唆されたとはいえ、苦しむのは私でしかありません。
 霊界の法則をお知りになれば、その結果の恐ろしさが分かって、自殺などしなくなるはずです。自分で死のうなどという考えは、棄て去って下さい。寿命が来るまで、なんとしてでも、この地上で頑張るのです。私が苦しんだ10年間は、地上に存在しているべき期間でした。本来ならその期間を地上で過ごしてから、こちらへ来るべきだったのです。そうすれば、その間に夫と子供のために私が果たすべき義務を果たすことが出来たわけです。
 私に割り当てられた寿命を全うせずにこちらへ来るべきではなかったのです。それで、10年間にもわたって私の目の前から、首を吊った自分の姿が消えなかったのです。そして、その間ずっと、夫と子供が私を必要としていたことを思い知らされたのです。
 もう今では、家族がこちらで再会するまで明るく過ごすことが出来ます。子供達のために、霊界から精一杯世話をしてあげることが出来ます。
 どうか夫によろしく伝えて下さい。夫は今でも孤独です。すぐそばにいてあげることは出来ても、その孤独感を慰めてあげることは出来ないのです。
 では、さようなら」