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自殺してはならない理由


 《心霊治療の本質は〝魂〟に関わることであり、身体に関わることではありません。魂に受け入れ準備が出来ていれば、治療は難なく奏効します。摂理として当然そうなるようになっているのであり、それ以外にありようがないのです。霊的治療は物的身体に宿る魂という容器に霊的生命力を注入する作業です。その生命力は肉体の中の生命の中枢へ向けて仕掛けられる霊的刺激剤であり、回復力であり、再活性力です》
 シルバーバーチ

 中央アフリカ及びインドを中心に治療活動を続けている二人の治療家が招かれた。二人はウーリンドウとアメンラという名で知られているが、いずれも仮名である。商業関係の仕事を止めて本格的に治療活動に専念しておられる。奉仕的精神から治療費を一切取らないのであるが、その日常生活は〝絶対に裏切らない神の供給源〟の存在を見事に実証している。
 来る日も来る日も治療の為の旅を続けていると、時には生活費が底をつき、空腹の為にベルトを更に締めなければならなくなることもある。にも関わらず必要なものだけは、お願いしなくても、必ず届けられる。その届けられる経路は驚異としか言い様のない程思いがけないことがしばしばであるという。
 南アフリカから英国に立ち寄った時に永年の夢が叶ってシルバーバーチの交霊会に出席することが出来た。二人はシルバーバーチの霊言を生活の指針としてきている。そのシルバーバーチが二人にこう語った。

 「私達にとって霊の道具として活躍しておられる方のお役に立つこと程大きな喜びはありません。他人の為に倦まず弛まず尽力しておられる方が私の述べる言葉を少しでも役に立つと思ってくだされば、私を地上へ派遣した霊団のマウスピースであることを光栄に存じます。
 我々はお互い同じ使命に携わっております。病める地上世界が自らを癒す事業を援助し、無謀な愚行に走るのを食い止め、無数の人間の悲劇の根源となっている自己中心主義の貪欲の行為を止めさせ、霊がその本来の輝きと美質を発揮するように導くという責務を負っております。
 この道が楽でないことは今更私から申し上げる必要はありません。バラの花に飾られた優雅な道でないことは申し上げるまでもありません。苦難は進化を促し、魂を調整する為の不可欠の要素なのです。魂が真の自我に目覚めるのは苦難の中にあってこそです。人生の上辺だけを生きている人間には、魂が自己開発する機会がありません。地上的方策が尽き果て、八方塞の状態となったかに思える時こそ、魂が目覚めるものなのです。
 言い換えれば、物質が行き詰まった時に霊が目覚め、小さな神性の種が芽を出し、花を咲かせ、内部の美質を徐々に発揮し始めるのです。苦難はコインの裏側と思えばよろしい。闇なくしては光もなく、嵐なくしては晴天もありません。このことはお二人は既によく理解しておいでです。
 あなた方は豊かな恩寵に浴していらっしゃいます。奉仕活動に手を染め、全てを天命に任せる覚悟をされて以来、お二人は一度たりとも見落とされたり忘れられたり無視されたり、或いはやりたいように放ったらかされたことはありません。
 この道は、他にその恩恵を知る縁(よすが)のない人々に霊力と光明と癒しをもたらせることになる、雄大な霊的冒険です。宇宙最大の力の道具として働くことは大変光栄なことです。大霊より強力な力はこの宇宙には存在しません。その大霊がお二人に要求しているものは忠誠心であり、協調的精神であり、一途さであり、信頼心であり、そして知識が生み出す信仰心を土台とした絶対的な自信です。
 私から申し上げるまでもないことかも知れませんが、お二人は地上に生を享けるずっと以前からこの仕事を志願していらっしゃいました。又これも改めて申し上げる必要はないと思いますが、実はそれもこれもまだまだ序の口に過ぎません。地上生活は霊としての存在意識を全うするという大目的の為に学び鍛える、そのトレーニングの場に他なりません。
 挫けてはなりません。いかなる事態にあっても、不安の念を欠片程でも心に宿すようなことがあってはなりません。今日まで支えて来た力は、これからも決して見棄てるようなことはいたしません。絶対に裏切ることはありません。もしあるとしたら、この宇宙そのものが存在しなくなります。その根源的なエネルギー、存在の支えそのものが不在となることがあることになるからです。
 お二人は霊力という最大の武具を備えていらっしゃいます。それを、ある時は支えとし、ある時は安息所とし、ある時は避難所とし、ある時は至聖所とし、そしていつも変わらぬインスピレーションの泉となさることです。道を誤まらせるようなことは絶対にしません。縁あってあなたの下を訪れる人に最大限の援助をしてあげられるよう導くことに専念してくれることでしょう。
 物的な必需品は必ず授かるものだということをお二人は体験によってご存知です。飢えに苦しむようなことにはなりません。渇きに苦しむようなことにもなりません。身を包み保護するだけの衣類は必ず手に入ります。贅沢な程にはならないでしょう。が、進化せる霊は贅沢への願望は持ち合わせないものです。
 物的身体にはそれなりに最低限の必需品があります。神はその分霊の物質界での顕現の手段として創造された身体にどんなものが必要かはちゃんとご存知です。迷わずに前進なさることです。今日は今日一日の為に生きるのです。そして、過去が霊の導きを証明しているように、未来も間違いなくあなたが志願なされた使命を全うさせてくれるものと信じることです。
 これまで通りに仕事をお続けになることです。病の人を癒してあげるその力が、他ならぬ霊の力であることを理解させてあげるのです。その結果その人が魂に感動を覚えることになれば、それはあなたが霊的な勝利を収めたことになるのです。
 霊が正常で精神も正常であれば、身体も正常です。摂理として当然そうなるのです。身体は召使で霊が主人です。身体が従臣で霊が王様です。愚かな人間は身体を主人と思い王様と勘違いしております。そういう人の霊は〝支配する〟という本来の立場を知ることがありません。
 勇気をもって前進なさい。もしも私の申し上げることが勇気付けとなれば、その勇気付けの道具となったことを私は光栄に思います。お二人の背後には私達の世界でも極めて霊格の高い霊が控えています。大変な霊力と叡智を身に付けられたお方で、その悟りの深さが又深遠です。その方との協調関係を出来うる限り緊密にするよう、修養を怠らないでください。
 背負った重荷も、知識から生まれた信仰があれば軽く感じられ、重さが消えてしまうものです。行く手を遮る苦難や困難には堂々と立ち向かい、そして克服して行くべき挑戦だと思うべきです。きっと克服し、万事が上手く運ぶ筈です。
 見た目にいかに大きくても、物的な事態によって圧倒されるようなことがあってはなりません。この物質の世界には、その生みの親である霊の力を凌ぐものは何一つ存在しないのです。何事もきっと克服出来ます。そして心が明るく弾むことでしょう。万事が落ち着くべきところに落ち着きます。時間は永遠なのです。人間はその永遠の時の流れの中にあって、今という時間、その一瞬を大切に生きて行けばよいのです」

 《本当の霊的治療が功を奏した時はけっしてぶり返しません。法則は不変です。摂理は完全です。もとより私は霊の美質である慈悲心や哀れみの情、親切心、寛容の心を一瞬たりとも失いたくないと思っております。が、摂理は公平無私であり、自動的であり、不可変であり、神によって定められているのです》
 シルバーバーチ

 ローズ・バストン女史も人生半ばにして霊的治病能力を発揮し始めた庶民的な家庭婦人である。三十年以上に亘ってハンネン・スワッハー氏とのお付き合いがあり、その縁で、かつてスワッハー氏が住んでいたロンドンの邸宅に治療所を開設した。つい二、三年前のことで(本書の出版は1969年)、その開所式にはシルバーバーチも招かれてお祝いの言葉を述べた。久しぶりで面会したバストン女史にシルバーバーチが次のような励ましの言葉を述べた。

 「あなたの治療所の開所式へお招きを受けて祝辞を述べて以来この方、あなたと霊団との繋がりが緊密の度を増しております。治療所は不幸な人々、苦しむ人々を救う目的の為に存在しているのです。あなたの人生が常に霊団の導きを受けていることは私から改めて申し上げる必要はないと思います。
 あなたはこの仕事の為に生まれて来られたのです。その目的地に辿り着く為にあなたは数々の困難と苦難によって鍛えられ、茨の道を歩まされました。この仕事に相応しい人間となる為の試練と鍛練を積まねばなりませんでした。
 さて、これまでを振り返ってご覧になれば、色々とあった出来事も、皆モザイクの一部であることがお分かりになります。人生には基本的なパターンがあるのです。最初の内はそれが見分けられませんが、次第に何もかもがそのパターンに沿って落ち着くべきところに落ち着いていることが分かってきます。
 あなたも今や霊の道具として身体だけでなく、もっと大切なこととして、精神と霊とに慰安と軽減をもたらす仕事に携わって、地上生活の目的を成就しつつあることをこの上なく幸せなことと思うべきです。
 これまでと同じく、これからの人生も計画通りに進展するに任せることです。決して楽ではありません。私か思うに、これまでの人生がもっと楽だったら、あなたはそれを不満に思っていた筈です。試練の末に勝ち取る方が、何の苦労もなしに手に入れ、従って潜在する力に気付かないままで終わるよりもいいのです。
 なのに人間は努力もしないでいて自分にない才能を欲しがり、その為に、折角手にしてもそれを有り難く思わないのです。その点あなたは永い間ご自分の治病能力に気付かれませんでした。初めてそのことを聞かされた時はびっくりなさいました。
 病状を診察する能力はさして大切なものではありません。診察は往々にして身体的なことだけになりがちです。が、根本的な原因は身体よりも精神と霊とにあります。早く治そうと思ってはいけません。忍耐が大切です。あなたの方から霊力を強要しても無駄です。霊力というものはその通路に受け入れる用意が出来た時に初めて流入するのです。しかも病状に応じて調節しなければなりません。それはそれは微妙なプロセスなのです。強制的に扱おうとしても無駄です。
 万が一やる気を無くするようなことがあったら-人間なら時には意気消沈することがあるものです-その時は一旦歩みを止めることです。そしてそれまで奇跡ともいえる形で為し遂げられて来たことを振り返って、これだけのことが成就されて来たのなら、これから先もきっと上手く行く筈だという認識をもつことです。あなたに要求されることは、そこまであなたを導いて来た霊力に対する絶対的な忠誠心と自信とをもってあなたの責務を全うすること、それだけです。
 あなたなりのベストを尽くすことです。あなたの力の範囲内で出来る限りの努力をなさることです。恐れるものは何一つありません。困難はあります。が、それもきっと克服されます。毎朝が新しい霊的冒険の好機なのです。
 これはとても大切なことです。そういう覚悟で仕事に当たっておれば、邪魔が入ることは決してありません。容易でないことは私もよく承知しております。が、忠実な僕が辿る道が楽であることは有り得ないことです。お名前はローズ(バラ)でも、バラの花壇(注)とはまいりません。魂というものは何かの挑戦を受けて初めて自我に目覚めるものなのです。その時、居眠りをしていた潜在的な力が表面に出て来て発揮され始めるのです。(注-a bed of roses 安楽な身分、贅沢な生活のこと-訳者)
 が、あなたはこれまで啓示された光に忠実に従って来られました。ただの一度もあなたに託された信頼を裏切ることがありませんでした。私を始め、あなたの霊団の者はみんな、あなたのことを誇りに思っておられます」

 《霊の褒賞は奮闘努力の末に手に入るものです。宝くじのような具合に手に入れることは出来ません。霊の富はそれを手にするに相応しくなった時に与えられるのです。霊的開発が進むにつれて自動的に、それまでより少しだけ多くのものを身に付けて行くのです》
 シルバーバーチ