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自殺してはならない理由


 《正直言って私は、あなた方の世界に戻るのは気が進みませんでした。地上というのは、一旦その波長の外に出てしまうと、これといって魅力のない世界です。私が今定住している世界は、あなた方のように物質に閉じ込められている者には理解の及ばない程透き通り、光り輝く世界です。
 くどいようですが、あなた方の世界は私には魅力ある世界ではありませんでした。しかし、やらねばならない仕事があったのです。しかもその仕事が大変な仕事であることを聞かされました。まず英語を勉強しなければなりませんでした。地上の同志を見つけて、その協力が得られるよう配慮しなくてはなりませんでした。それから私の代弁者となるべき霊媒を養成し、更にその霊媒を通じて語る真理を出来るだけ広く普及させる為の手段も講じなくてはなりませんでした。しかし同時に、私が精一杯やっておれば上方から援助の手を差し向けるとの保証も得ました。そして計画は順調に進められました》
 シルバーバーチ

 「随分前の話ですが、私は物質界に戻って霊的真理の普及に一役買ってくれないかとの懇願を受けました。その為には霊媒と同時に心霊知識を持つ人のグループを揃えなくてはならないことも知らされました。私は霊界にある記録簿を調べ上げた上で、適当な人物を霊媒として選び出しました。それはその人物がまだ母胎に宿る前の話です。私はその母胎に宿る瞬間を注意深く見守りました。そしていよいよ宿ったその霊が自我を表現し始めた時から影響力を行使し、以来その関係が今尚続いているわけです。
 私はこの霊媒の霊と小さな精神の形成に関与しました。誕生後も日常生活のあらゆる面を細かく観察し、霊的に一体となる練習をし、物の考え方や身体の癖を呑み込むように努めました。要するに私はこの霊媒を、霊と精神と身体の三つの側面から徹底的に研究したのです。
 次に私は霊的知識の理解へ向けて指導しなければなりませんでした。まず地上の宗教を数多く勉強させました。そして最終的にはその全てに反発させ、所謂無神論者にさせました。これで霊媒となるべき準備が一通り整いました。
 その上で、ある日私はこの霊媒を初めて交霊会へ出席するよう手引きしました。そこで、用意しておいたエネルギーを駆使して-いかにもぎこちなく内容も下らないものでしたが、私にとっては極めて重大な意義をもつ-最初の霊的コンタクトをし、他人の発声器官を通じて喋るという初めての体験をしました。
 その後は回を追う毎にコントロールが上手くなり、ご覧の通りになりました。今ではこの霊媒の潜在意識にあるものを完全に支配して、私自身の考えを百パーセント述べることが出来ます。
 要請された使命をお引き受けした時私はこう言われました-〝あなたは物質の世界へ入り、そこであなたの道具となるべき人物を見出したら、今度はその霊媒の下に心が通い合える人々を集めて、あなたがメッセージを述べるのを補佐してもらわねばなりません〟と。私は探しました。そして皆さん方を見出してここへ手引きしました。
 私が直面した最大の難問は、同じく地上に戻るにしても、人間が納得する(死後存続の)証拠つまり物理現象を手段とするか、それとも(霊言現象による)真理の唱道者となるか、そのいずれを選ぶかということでした。結局私は難しい方を選びました。
 自分自身の霊界生活での数多くの体験から、私は言わば大人の霊、つまり霊的に成人した人間の魂に訴えようと決意したのです。真理を出来るだけ解り易く説いてみよう。常に慈しみの心をもって人間に接し、決して腹を立てまい。そうすることで私が成る程神の使者であることを身をもって証明しよう。そう決心したのです。
 同時に私は生前の姓名は絶対に明かさないという重荷を自ら背負いました。仰々しい名前や称号や地位や名声を棄て、説教の内容だけで勝負しようと決心したのです。
 結局私は無位無冠、神の使徒であるという以外の何者でもないということです。私が誰であるかということが一体何の意味があるのでしょう。私がどの程度の霊であるかは、私のやっていることで判断して頂きたい。私の言葉が、私の誠意が、そして私の判断が、暗闇に迷える人々の灯となり慰めとなったら、それだけで私は嬉しいのです。
 人間の宗教の歴史を振り返ってご覧なさい。謙虚であった筈の使徒を人間は次々と神仏に祭り上げ、偶像視し、肝心の教えそのものをなおざりにして来ました。私共霊団の使命はそうした過去の宗教的指導者に目を向けさせることではありません。そうした人達が説いた筈の本当の真理、本当の知識、本当の叡智を改めて説くことです。それが本物でありさえすれば、私が偉い人であろうがなかろうが、そんなことはどうでもよいことではありませんか。
 私共は決して真実から外れたことは申しません。品位を汚すようなことも申しません。又人間の名誉を傷付けるようなことも申しません。私達の願いは地上の人間に生きる喜びを与え、地上生活の意義は一体何なのか、宇宙において人類はどの程度の位置を占めているのか、その宇宙を支配する神とどのような繋がりをもっているのか、そして又、人類同士がいかに強い霊的家族関係によって結ばれているかを認識してもらいたいと、ひたすら願っているのです。
 と言って、別に事新しいことを説こうというのではありません。優れた霊格者が何千年もの昔から説いている古い古い真理なのです。それを人間がなおざりにして来た為に、私達が改めてもう一度説き直す必要が生じて来たのです。要するに神という親の言いつけをよく守りなさいと言いに来たのです。
 人類は自らの過った考えによって、今まさに破滅の一歩手前まで来ております。やらなくてもいい戦争をやります。霊的真理を知れば、殺し合いなどしないだろうにと思うのですが・・・・。
 神は地上に十分な恵みを用意しているのに、飢えに苦しむ人が多過ぎます。新鮮な空気も吸えず、太陽の温かい光にも浴さず、人間の住む所とは思えない場所で、生きるか死ぬかの生活を余儀なくされている人が大勢います。欠乏の度合が酷過ぎます。貧苦の度が過ぎます。そして悲劇が多過ぎます。
 物質界全体を不満の暗雲が覆っています。その暗雲を払い除け、温かい陽光の射す日が来るか来ないかは、人間の自由意志一つに掛かっているのです。
 一個の人間が他の人間を救おうと努力する時、その背後には数多くの霊が群がってこれを援助し、その気高い心を何倍にも膨らませようと努めます。善行の努力は絶対に無駄にはされません。奉仕の精神も決して無駄に終わることはありません。誰かが先頭に立って藪を切り開き、後に続く者が少しでも楽に通れるようにしてやらないといけません。やがてそこに道が出来上がり、通れば通る程平坦になっていくことでしょう。
 高級神霊界の神々が目に一杯涙を浮かべて悲しんでおられる姿を時折見かけることがあります。今こそと思っていた折角の善行のチャンスが、人間の誤解と偏見とによって踏み躙られ無駄に終わってしまうのを見るからです。そうかと思うと、嬉しさに顔を思い切り綻ばせているのを見かけることもあります。名もない平凡人が善行を施し、それが暗い地上に新しい希望の灯を灯してくれたからです。
 私は直ぐそこまで来ている新しい地球の夜明けを少しでも早く招来せんが為に、他の大勢の同志と共に、波長を物質界の波長に近付けて降りてまいりました。その目的は、神の摂理を説くことです。その摂理に忠実に生きさえすれば神の恵みをふんだんに受けることが出来ることを教えてあげたいと思ったからです。
 物質界に降りて来るのは、正直言ってあまり楽しいものではありません。光もなく活気もなく、鬱陶しくて単調で、生命力に欠けています。例えてみれば弾力性の無くなったヨレヨレのクッションのような感じで、何もかもだらしなく感じられます。どこもかしこも陰気でいけません。従って当然、生きる喜びに溢れている人は殆ど見当たらず、どこを見渡しても絶望と無関心ばかりです。
 私が定住している世界は光と色彩に溢れ、芸術の花開く世界です。住民の心には真の生きる喜びが漲り、適材適所の仕事に携わり、奉仕の精神に溢れ、互いに己の足らざるところを補い合い、充実感と生命力と喜びと輝きに満ちた世界です。
 それに引き替え、この地上に見る世界は幸せであるべきところに不幸があり、光があるべきところに暗闇があり、満たされるべき人々が飢えに苦しんでおります。なぜでしょう。神は必要なものは全て用意してあるのです。問題はその公平な分配を妨げる者がいるということです。取り除かねばならない障害が存在するということです。
 それを取り除いてくれと言われても、それは私達には許されないのです。私達に出来るのは、物質に包まれたあなた方に神の摂理を教え、どうすればその摂理が正しくあなた方を通じて運用されるかを教えてさしあげることです。ここにお出での方には是非、霊的真理を知るとこんなに幸せになれるのだということを身をもって示して頂きたいのです。
 もしも私の努力によって神の摂理とその働きの一端でも教えてさしあげることが出来たら、これに過ぎる喜びはありません。これによって禍を転じて福となし、無知による過ちを一つでも防ぐことが出来れば、こうして地上に降りて来た努力の一端が報われたことになりましょう。
 私達は決してあなた達人間の果たすべき本来の義務を肩代わりしようとするのではありません。成る程神の摂理が働いているということを身をもって悟ってもらえる生き方をお教えしようとしているだけです。
 今こうして語っている私は、(四十年程前に)初めて語った、あの霊と同じ年輩の霊です。説くメッセージも同じです。古くからある同じ真理です。ただ、語り聞かせる相手は同じ古い世界ではなくなりました。世の中は変わっており、霊的叡智に耳を傾ける人が増え、霊力の受容力が増しております。
 霊的真理も大きく前進しました。私達の影響力がどれ程行き渡っているか、出来ることならそれを皆さんにお見せしたいところです。努力がこれ程報われたことを私はとても誇りに思っております。かつては悲しみに打ちひしがれていた心が今では喜びを味わい始めています。光明が暗闇を突き通したのです。かつては無知が支配していたところに知識がもたらされました。
 自惚れているわけではありません。宇宙について知れば知る程私は、ますます謙虚な念に満たされてまいります。が同時に、導いてくださる霊力の存在も知っているのです。それが私のような者にも頂けるのです。私が偉いからではありません。私が志している真理普及への努力を多としてくださってのことです。これまでの永い年月を通じて、この交霊関係はずっとその霊的援助を受けてまいりました。これからも皆さんが望む限り、与えられ続けることでしょう。
 改めて申し上げますが、私はただの道具に過ぎません。地上へ霊的真理、霊についての単純な真理、すなわち人間も一人ひとりが神の一部としての霊であるという認識をもたらさんとしている多くの霊の内の一人に過ぎません。
 人間も神の遺産を宿しているのであり、その潜在する神性のお蔭で神の恩寵の全てを手にする資格があります。その為の努力を続ける上において手枷足枷となる制度や習慣をまず取り除かないといけません。又私達の仕事は魂と精神だけの解放を目的としているのではありません。肉体的にも(病気や障害からの)解放してあげないといけません。
 それが今私達が全霊を捧げている仕事なのです。微力ながら奮闘努力している仕事なのです。もしもこの私が一個の道具として皆さんのお役に立つ真理をお届けすることが出来れば、私はそれを光栄に思い、嬉しく思います。
 私が皆さんと共に仕事をするようになって相当な期間になりますが、これからも皆さんとの協同作業によって地上世界に是非とも必要な援助をお届けし続けることになるでしょう。皆さんは知識をお持ちです。霊的真理を手にされています。そしてそれを活用することによって一層有効な道具となる義務があります。
 私のことを、この交霊会でほんの僅かな時間だけ喋る声としてではなく、いつも皆さんのお側にいて、皆さんの霊的開発と進化に役立つものなら何でもお届けしようと待機している、脈動する生きた存在とお考えください。
 これまで私は、皆さんが愛を絆として一体となるように導いてまいりました。より高い界層、より大きな生命の世界の法則をお教えし、又人間が(そうした高級神霊界の造化活動によって)いかに美事に出来上がっているかを説き明かそうと努力してまいりました。
 又私は、そうして学んだ真理は他人の為に役立つことに使用する義務があることをお教えしました。儀式という形式を超えたところに宗教の核心があり、それは他人の為に自分を役立てることであることを知って頂こうと努力してまいりました。
 この絶望と倦怠と疑念と困難とに満ち溢れた世界にあって私は、まずはこうして皆さん方に霊的真理をお教えして、その貴重な知識を皆さん方が縁ある人々に広め、ゆくゆくは全人類に幸せをもたらすことになるように努力してまいりました。
 もしも皆さんの行く手に暗い影が過ぎるようなことがあったら、もしも困難が降りかかったら、もしも疑念が心を揺さぶり、不安が宿るようなことがあったら、そうしたものは全て実在ではないことを自分に言い聞かせるのです。翼を与えて追い出してやりなさい。
 この大宇宙を胎動させ、有機物と無機物の区別なく全生命を創造した巨大な力、星も惑星も太陽も月も拵えた力、物質の世界へ生命をもたらし、あなた方人間の意識に霊性を植え付けてくださった力、完璧な摂理として全生命活動を支配している力、その大いなる霊的な力の存在を忘れてはなりません。
 その力は、あなた方が見捨てない限り、あなた方を見捨てることはありません。その力を我が力とし、苦しい時の避難所とし、心の港とすることです。神の愛が常に辺りを包み、あなた方はその無限の抱擁の中にあることを知ってください」

 一読者の手紙から-
 《文章の世界にシルバーバーチの言葉に匹敵するものを私は知りません。眼識ある読者ならばそのインスピレーションが間違いなく高い神霊界を始源としていることを認めます。一見すると単純・素朴に思える言葉が時として途方もなく深遠なものを含んでいることがあります。その内部に秘められた意味に気付いて思わず立ち止まり、感嘆と感激に浸ることがあるのです》