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自殺してはならない理由


 もうね、色々と望んでも無理だから、普通でいいよ。普通というと、何か、残念な響きの言葉だが、普通でいいよ。普通ではない高みなど、余程恵まれた人しか辿り着けないのだから。

 普通でいいよ。服も普通。靴も普通の数千円のものでいい。普通の職業でいい。はぁ、普通でいい。なにも、そんなに高いモノを望んでも、そりゃ、自分の身分に合っていなかったら、入手できないからな。

 はぁ、普通を望んでいれば、今頃、普通の生活をしていたかもしれない。なんで俺は、あんなに画家になりたいとか、バカなことを考えていたのだろう。普通の金銭感覚を持っていれば、あんな、頭が良くなる機械なんて買わなかったのに。そりゃ、俺は知能が低いけど・・・低いから騙されたんだけどさ・・・煽てられて買わされたんだけどさ・・・でも、それも、俺が普通の身分よりも高みを望んだから、その気持ちを業者が上手くくすぐって、俺に買わせることに成功したのだろう。もしもその時の俺が、馬鹿でも、そのまま普通の暮らしが出来ていれば、まぁいいや、みたいに考えていたなら、騙されることもなかっただろう。その後のローン地獄に陥ることもなかっただろう。

 あんまり、高いモノを望まず、普通レベルのモノで満足しよう。普通が一番いいよ。有名プロスポーツ選手みたいなのは、ああいう人達は、選ばれた人達なので、一般人には真似は無理なんだよ。だから、無闇に彼ら・彼女らみたいになれるなんて、思わない方がいい。

 ただ単純に、生きられればいいではないか。仕事も、今迄の俺は、好きな仕事じゃないと生きている価値がない、みたいな考えだったのだが・・・どうも、俺には一流の才能も適性も頭脳も無いということが判明したので、もう、悟りました。俺が有名グラフィックデザイナーみたいになれる可能性は、ゼロだったのだ。そもそも、彼らは幼少の頃から美術なりデザインなりの勉強をしており、大学も美術大学に現役合格して、卒業後も一流広告代理店に勤務するようなエリート中のエリートなのだ。そんな、頭脳も才能も有り余る奴らに、俺は勝てる筈はなかったのだ。う~ん、夢見がちだった。

 うん、普通でいいや。といっても、普通以外、俺には無理だよ。社会の上層部に進出できる可能性は、ゼロだからな。エクセルでさえ、難しすぎて習得不可能だったんだから。そりゃ、エクセル程度なんて、普通の事務員でも使いこなせているけどな。それさえも出来ない。家電量販店でインターネット契約の営業をした時も、俺一人だけ、圧倒的に駄目だったからな。もう、他人に比べて、圧倒的に能力が無いんだ。そんな奴が、他人よりも遥かに高い地位を望んでも、そりゃ、無理だよ。普通レベルの待遇の仕事でも、就くのは難しいのに。

 はぁ、もう、あまり高望みはよそう。というか、俺の能力では、普通レベルでさえ難しい。もっと、俺も、普通を最初から望んでいれば、今頃、普通の生活が出来ていただろうになぁ。でも、これも人生か。過去に、その時生きていた俺は、その時、そういう判断をしてしまった訳だから、それは仕方がないか。とにかく、これからを生きよう。これからが大事だからな。うん、自殺せずに、これからも困難は色々と発生するだろうけど、とにかく、精神的に潰れないように気を付けながら、生きていきますよ。