スイスから参加した二人のゲスト(夫妻)を交えたある日の交霊会で、原子力が話題となった。
 まず奥さんから質問があった。

-放射能の危険から身を守るにはどうすればよいのでしょうか。そもそも原子の秘密は人間が発見することになっていたのでしょうか。

「地上生活のそもそもの目的は霊的・精神的・物的の三つの側面での体験を積むことです。この地球という天体上で得られる限りの、幅広い体験を積む為に誕生しているのです。したがって、この地上界に秘められている知識-これは事実上無限です-は、人間にそれだけの能力がそなわれば、当然、自由にその能力を開発して発見してよいに決まっています。
 人間が自然界の秘密を探ろうと努力することは結構なことです。問題はその動機です。発見した知識を全人類のために役立てるためでなくてはなりません。敵軍や自然界を破壊するためであってはなりません。人間には自由意志があります。根元的には神性を有し、その当然の資格として、自分で選択する自由がそなわっています。ですから、その自由意志を行使して、何の目的のために知識を使うかの判断をすればよいわけです。
 人類が精神的ならびに霊的に進化すれば、その自然の結果として、人生の目的が自分以外のもの-同胞だけでなく同じ地上に生息する動物も含めて-にとって地上がより住み良い所となるようにすることであることを悟るものです。あらゆる発見、あらゆる発明、あらゆる新しい知識がその観点からの判定を受けなければいけません。すなわち、それが結果的に人類および動物の進化を促進するものであり、妨げるものではないとの判断がなくてはなりません。
 問題は、人類の知的能力が霊的発達を追い越すことがあることです。それがいろいろと厄介な問題を生ぜしめます。霊的に未熟な段階で自然界の大きな秘密を知ってしまうことがあります。今仰った原子エネルギーの発見がそれでした。
 ですが、人間に為しうることには、自然の摂理によって、おのずから限界というものがあります。地球という天体を、そこに住むものもろともに破壊してしまうことはできません。困った事態を引き起こすことはできるでしょうが、地上の生命のすべてを根絶やしにすることはできません。思わぬ秘密を発見しては試行錯誤を重ねながら、正しい使用方法を学んでいくしかないのです。
 原子エネルギーも、使い方一つで、神性をもつ人間としてあるまじき悲惨な環境のもとで生きている無数の困窮者に、大きな恵みをもたらすことができますし、現に、既に恵みを与えています。
 あなたが最初に仰った放射能の危険性のことですが、私は、あなたが心配なさるほど深刻なものになるとは考えません。その影響を中和する対抗措置を発明するのは、そう難しいことではないでしょう」