その日は青年心霊グループPsychic Youth Groupの代表四人が出席していて、質問の順番が回ってきた。最初に出された質問は複雑だった。

-我々青年グループと同じように、今多くの若者が真実を求めております。我々の子供が育つ環境をより良いものにしたいと願っております。そんな時になぜ人間同士が殺し合い、傷つけ合うのでしょうか。なぜ人種同士、或いは宗教同士で憎み合うのでしょうか。なぜこうまで愛が乏しいのでしょうか。我々は平和が欲しいのですが、いつ、どういう形で平和になるのでしょうか。我々の先輩-我々よりも人生の知恵を身に付けている筈の世代が成就し得なかったことを、果たして我々に為し得るでしょうか。我々にあるのは若さと力とやる気です。そして無知と愚かさ、強欲と憎しみを無くす為の闘争に参加したいのです。何かアドバイスを頂ければ有り難いのですが・・・

「これはまた、大変な質問をしてくださいましたね」と言ってから、改まった口調でこう続けた。
「あなたの仰る[無知]と[愚かさ]は、別に今に始まったものではありません。従って、それを一晩の内になくする魔法のような手段はありません。大自然の働きの基調は革命(レボリューション)ではなく進化(エボリューション)です。進化の過程はゆっくりと、そして着実に進行します。物的なものの生長も、無理強いすると取り返しのつかないことになります。霊的なものも同じです。一気呵成に事を成就させようとすると誤ります。
 悲観的な気持からそう申すのではありません。霊的実在に少しでも目覚めた者は希望に溢れた物の見方をするべきであると、私は常々説いております。無知から、或いは愚かさから、人間がいかに無謀なことをしても、それにも自ずと限界というものがあります。大自然には法則というものがあり、そればかりは人間にはどうしようもないからです。
 といって、今すぐ提案できる万能薬は、私達も持ち合わせません。申し上げられる事は、霊的知識が広がり、その結果として無知が少なくなるにつれて、人間同士の対立が減り、戦争が減り、強欲が減り、光明の地域が増えていくということだけです。私達が人間に代わって地上環境を改めるわけにはいきません。受け入れる用意のある人間に霊的真理を教え、その人に生き方を正してもらうことしかできません。
 人間にも、ある一定限度内でのことですが、選択の自由が与えられています。大霊の創造活動の一端を担って進化に貢献することも出来ますし、それを阻止したり、遅らせたり、邪魔立てすることも出来ます。それもアンチテーゼ(対立要素)としての貢献なのです。
 大霊は人間を、操り人形やロボットとしてこしらえたのではありません。大霊の属性の全て、いわゆる神性を潜在的に所有しているのです。ですから、自らの判断力を行使して選択すべきなのです。戦争という手段を選ぶことも許されます。が、戦争では問題は解決されないどころか、更に問題を生み出すこと、強欲や自己中心の考えは、その内部に自分自身の破滅のタネを宿していることを知るべきです。
 ナザレ人イエスも、[剣を取るものは剣にて滅ぶ]と言っております。それ位のことは人間もいい加減に悟って欲しいものです。あなた方としては、一人ひとりが、出来うる範囲内で霊的知識を広めることを心掛ければよろしい。自分自身が光明を見出したように、今度は誰か自分以外の人、たった一人に光明を見出させてあげることが出来たら、それだけでこの度の地上生活は有意義だったことになるのです。以上が私から申し上げられるお答えです」

別のメンバーが代表して「正直言って現在のスピリチュアリズム運動は次元が低く・・・・」と言いかけたところ、シルバーバーチが-
「ちょっとお待ちください。私はその[スピリチュアル運動]とやらには関心はありません。私達霊団としては霊的能力のある人、或いは、それを発達させる段階に来ている人を援助することを仕事としており、その人がどこかの団体組織に属しているか否かは問いません。
 組織というものはそれなりの目標をもって活動しており、それはそれで結構です。が、私達は、いついかなる場においても人の役に立つことをする人を援助することをもって、第一の責務と心得ております。
 名称はどうでもよろしい。スピリチュアリスト、セオソフィスト(神智学会員)、ローゼクルーシャン(バラ十字会員)、こうしたものはただのラベルにすぎません。肝心なことは、各自がその能力に応じて精一杯、真理の普及に努力することです。霊媒能力を私達が重要視するのは、その能力を通して地上界で真理普及の為に最大の貢献が出来るからです。途方もなく大きな責任を担ったものであり、その能力を授かった者には聖なる信託がなされているのです」