「分かりました」とクリス・ライダー氏は答え、さらに次のような質問を述べた。

-ある種の薬物を使用することで一時的に心霊能力が覚醒した状態となります。私はこのことに関心をもっています。これは将来の霊的能力の開発の新しい方法として一考の価値があると思うのですが、いかがでしょうか。

 「断じて、そして真っ向から、私は薬物の使用に反対です。
 心霊能力は人類に先天的に潜在しているものです。霊が使用すべき能力として用意されているのです。物質と霊とを繋ぐ架け橋であり、当然開発し発達させるべきものですが、あくまでも鍛練と正しい心掛けと生き方の中で育まれるべきものであって、不自然な促進剤の使用によって行うべきものではありません。一個の種子を例にとっても、それを不自然に促進栽培したらどういうことになるか、ご存知のはずです。
 薬物によって幻覚症状が誘発されることがあることは事実です。それによって一時的に身体と精神と霊との繋がりが緩められるからです。しかし、そんな状態で実在を直観し次元の高い啓示に接することはできません。
 さらに、それ以前の問題として、私は、たとえ健康のためであっても薬剤を使用するのは間違いであると考えます」

-仰ることは分かるのですが、そういう代替の手段もあってよいのではないかと思うのです。今のお考えは古い薬物観ではないでしょうか。

 「そういう御意見にも私は耳を傾けてまいりましたが、いかなる手段を講じようとも、インスタントコーヒーを入れるような調子で霊性を発現することは出来ません。霊性の伴わない能力を発揮してどうしようというのでしょう?まだ反論なさいますか」

-正直を申しますと、ここへ来た時はあくまでも自論を主張してやろうと思っておりましたが、お話を伺って我が身の浅はかさを恥じ入っております。

「恥をかかせるつもりなど毛頭ありません。私は人を傷つけたり辛い思いをさせるようなことを申し上げたくはないのですが、永遠の真理から外れるようなことを申し上げるようになった時は、私の使命から外れたことになってしまいます。
 薬物中毒患者-いかなる種類のものであれ、安易な手段、手っ取り早い方法で幸せを求めようとする堕落者-を扱うのも、私たちの仕事なのです。
 いけません!幸せに近道はありません。タネ蒔きと刈り取り、原因と結果の法則が厳然と存在するのです。万一その摂理が逆転して、一瞬のうちに罪が赦されて聖人君子になれるとしたら、神の公正が愚弄されたことになります。摂理の働きは絶対なのです。
 人間には三つの義務があります。自分自身への義務、生活を共にする者への義務、そして地上の同胞への義務です。自分一人の勝手な振る舞いは許されません。薬物を使うのは自分の勝手という言い訳は許されません。正しい手段で、しかも努力の積み重ねによって身につけないといけません。もしも努力も葛藤もなしに得られるものだったら、それは初めから手に入れる価値のないものです」

-分かりました。最後にもう一つだけ質問があります。
 さる有名なスピリチュアリストの本に、戦地で戦友と共に一瞬の内に戦死して、その時のショックがその後も残っている霊の話が出ておりました。あなたのお話では霊が傷つくことはないと仰っていますが、この場合はどう理解すればよいのでしょうか。

「一時的に傷つき、ショックが残ることはあります。が、肉体の傷が癒えるのと同じで、そのうち正常に復します。
 事故死や戦死のような予期せぬ状態での死は霊にショックを与えます。死というものに何の予備知識もなかったために、その反動のようなものが生じるわけです。それで調整期間というものが必要となり、その間に自分が置かれている身の上についての理解と、霊的感覚の覚醒を促します。
 あくまでも一時的なものです。霊が取り返しのつかない傷を負うことはありません」