招待客の夫婦がシルバーバーチの霊言集を読んで感動と勇気付けを受けていることを述べて感謝すると-
 「私はマウスピースに過ぎませんが、この私を通して届けられた訓えがお役に立っているということは、いつ聞かされても嬉しいものです。私達がこの仕事を始めた当初はほんの一握りの少数に過ぎませんでした。それが地上の皆さん方の協力を得て、素朴ではありますが深遠な霊的真理が活字になって出版されるに至りました。それによって霊的真理に目覚める人が大幅に増えつつあることは何と有り難いことでしょう。
 地上の霊的新生の為の大計画を初めて教えられ、並大抵の苦労では済まされない大事業だが一つあなたもこれまでに手にしたもの(霊的幸福)を犠牲にして参加してみないかと誘われた時、私のようなものでもお役に立つのであればと、喜んでお引き受けしました。
 進化の階梯を相当高くまで昇った光輝溢れる存在の中で生活している者が、その燦爛(さんらん)たる境涯を後にして、この暗くてジメジメした、魅力の乏しい地上世界で仕事をするということは、それはそれは大変なことなのです。しかし幸いなことに私は地上の各地に協力者を見出すことに成功し、今ではその方達との協調的勢力によって、そこここに心の温かみを与えてくれる場を設けることが出来ました。お蔭でこの地表近くで働いている間にも束の間の安らぎを得ることが出来るようになりました。
 他の大勢の方々と同じように、お二人から私がお役に立っていることを聞かされると、こうして地上圏へ突入して来なければならない者が置かれる冷え冷えとした環境に又一つ温かみを加えることになります」
 ここでメンバーの一人が「今のご気分はいかがですか」と言い、「こういう質問をした者はいないみたいですね」と述べる。
 「有り難いことに私は地上の病気や悩みに苦しめられることがありません。私は頗る健康です。あなた方のように年を取ることもありません」

-私はそのことをお聞きしたのではありません。(地上圏が冷え冷えとしていると聞かされたので、その日の交霊会へ来てみてどんな気分かと尋ねたのであろうが、それに対する次の返事も何となく噛み合っていない-訳者)

 「これからも霊的成長を続けたいと願っております」

-悩み事というのは無いのですね。

 「この地上へ来た時しかありません」

-死後の世界がそんなに素晴らしい所だとは知りませんでした。地上を去った時と同じ状態でいるとばかり思っていました。

 「同じ死後の世界でも、どこに落ち着くかによって違って来ます。バラにもトゲがあります」
(質問者が〝素晴らしい世界〟のことを a bed of roses 〝バラの花壇〟と表現したのでそう述べた-訳者)

-何の悩みもないのでしょうか。

 「あります。が、それも全て今携わっている使命に関わったことだけです。だからこそ時折地上を去って、私を地上へ派遣した霊団の人達の下へ帰り、今度地上へ行ったらこうしなさいとの指示を仰ぐのです。私達も数々の問題を抱えています。が、それは全て神の計画の達成という目的に付随して起きることです」

 ここで、最近新しい方法で、スピリチュアリズムの普及を始めている二人のメンバーにシルバーバーチが「何かお困りになっていることがありますか」と尋ねると、一人が「大した問題はありません。とにかくお役に立つことが出来れば嬉しく思っております」と述べた。するとシルバーバーチが-
 「あなた方は本当に恵まれた方達です。私はいつも思うのですが、あなた方のような(真理普及に携わる)人達が、いつか、ご自分の身の回りで立ち働いている霊の存在を是非目の当たりに出来るようになって頂きたいのです。そうすれば、携わっておられる仕事の偉大さについて一段と認識を深められることでしょう」

 別のメンバーの関連質問に答えて-

 「私達はまだまだ舵取りに一生懸命です。あらん限りの力を尽くしております。が、地上的条件による限界があります。やりたいことが何でも出来るわけではありません。私達が扱うエネルギーは実にデリケートで、扱い方が完全でないと、殆ど成果は得られません。コントロールが上手く行き、地上の条件(霊媒及び出席者の状態)が整えば、物体を私達の意のままに動かすことも出来ます。が、いつでも出来るというものではありません。そこでその時の条件下で精一杯のことをするしかないわけです。ですが、最終的な結果については私達は自信を持っております。
 神の地上計画を妨害し、その達成を遅らせることは出来ても、完全に阻止することは出来ません。そういう態度に出る人間は自分自らの進歩の最大の障害となっているのです。愚かしさ、無知、迷信、貪欲、権勢欲、こうしたものが地上で幅を利かせ、天国の到来を妨げているのです。
 物的な面では、全ての人に行き渡るだけのものが既に地上にはあります。そして霊的にも十分過ぎる程のものがこちらに用意されています。それをいかにして受け入れる用意のある人に行き渡らせるか、その手段を求めて私達は一層の努力をしなければなりません。問題はその受け入れ態勢を整えさせる過程です。何かの体験が触媒となって自我を内省するようになるまで待たねばならないのです。外をいくら見回しても救いは得られないからです。
 これまでこの仕事に携わっている方々の生活において成就されたものを見ても、私達は、たとえ一時的な障害はあっても、最後は万事が上手く行くとの自信があります。皆さんの全てが活用出来る莫大な霊力が用意されているのです。精神を鎮め、受容性と協調性に富んだ受身の姿勢を取れば、その霊力がふんだんに流入し、人間だけでなく動物をも治癒させる、その通路となることが出来ます。
 ここにおいでの皆さんの多くは自ら地上への再生を希望し、そして今この仕事に携わっておられます。地上にいらっしゃる間に自我の可能性を存分に発揮なさることです。そして最後に下される評価は、蓄積した金銀財宝で問われるのではありません。霊的なパスポートで評価されます。それを見ればあなたの霊的な本性が一目瞭然です」

-霊媒が他界した場合、それまでの支配霊は別の霊媒を探すのでしょうか。

 「それは霊媒現象の種類によります。物理現象が盛んだった初期の頃は、そうした現象を起こす為の難しい技術をマスターした指導霊が大勢いました。その種の霊はそれまでの霊媒が他界すると別の霊媒を探し出して仕事を継続しました。
 精神的心霊現象の場合には滅多にそういうことはありません。なぜかというと支配霊と霊媒との繋がりが物理霊媒の場合より遙かに緊密だからです。オーラの融合だけの問題ではありません。時には両者の潜在的大我の一体化の問題もあるのです。そんな次第で、霊媒が他界すると同時に支配霊としての仕事も終わりとなります。そして支配霊は本来の所属界へ帰って行きます。私の場合、この霊媒が私の世界へ来てしまえば、別の霊媒を通じて通信することはありませんし、通信を試みるつもりもありません。なぜならば、この霊媒を通じて語る為の訓練に大変な年数を費やして来ましたので、同じことを初めからもう一度やり直す気にはなりません。
 私の場合、霊媒との関係は誕生時から始まりました。仕事がご承知のような高度なものですから、まず初期の段階は、通信を出来るだけ容易にする為に必要な霊体と霊体、幽体と幽体の連係プレーの練習に費やさねばなりませんでした。
 その内霊媒が生長して自意識に目覚め、人間的に成長し始めると、今度は発声器官を使用して、どんな内容のものでも伝えられるようにする為の潜在意識のコントロールという、もう一つの難しい仕事に取り掛かりました」

 人間的な年齢で言うと何歳になるのかと尋ねられて-
 「私がお教えしようとしている叡智と同じ年季が入っているとお考えくださればよろしい。有り難いことに私はこうしてお教えしている自然の摂理の驚異的な働きをこの目で確かめることが出来ました。つまり、あなたがこれから行かれる霊的世界において神の摂理がどう顕現しているかを見ております。その素晴らしさ、その大切さを知って私は、是非とも後戻りしてそれを地上の方にも知って頂こう-きっと地上にもそれを受け入れて本当の生き方、すなわち霊的なことを最優先し、物的なことをそれに従属させる生き方に目覚めてくれる人がいる筈だと思ったのです」