○シルバーバーチの最大の発見

ポール「それを聞きたいです。是非話してください」

シルバーバーチ「私にとっての最大の発見は地上の多くの人達が善意と情愛と僚友意識と、そして愛までもこんなに沢山持っておられることを知ったことです。又、訴え方が正しければ、その愛を本性から呼び覚ますことが出来るということ、最高の波長にさえ反応してくれるということ、気高い品行を志し、気高い思念をもつことが出来るということ、自己の利益や打算を超えた、より大きなものに心を動かされうるということ、理想主義、愛他精神、奉仕的精神にも共鳴してくれるものであることを知ったことです。
 この冷たくて鬱陶しい、およそ魅力のない陰鬱な地上での仕事に打ち込んで来たこれまでの永い年月を振り返ってみて、私は一度もお目にかかったことのない人でありながら、私の訓えで救われたという気持から、感謝の愛念を送ってくださる方々が増えることによって、地上にこうまで温かみがもたらされるものかと、驚きの念を禁じ得ません。それ程多くの愛を頂戴することになろうとは予想もしませんでした。私にとってはそれこそが感謝の源泉であり、それが私を更に鼓舞し、同時に、勿体無いことだという気持にもさせられます。なぜなら私はそれに値する程のことはしていないという自覚があるからです」

 ルースとポールにとって、この答えはさすがに意外だったようである。子供心に、もっと楽しい話を予想していたのであろう。が、二人は却って興味をそそられ、更に質問する。

○物質文化の発達が利己主義を生んだ

ポール「シルバーバーチさんが地上へ降りて来られてから地上にはどんな変化があり、霊界ではどんな変化がありましたか」

シルバーバーチ「大雑把に言えば、地上における変化は〝文明化〟といわれる過程でしょう。人類は物質的な面で大きく飛躍しました。大自然の仕組みについて多くの発見をしました。山頂を征服し海底を探査するようになりました。大陸と大洋を横断するようになりました。物質的な面では非常に高度なものを成就しました。驚異的な発達ぶりであったと言えましょう。しかし、同じ発達が精神面と霊的な面に見られないのです。人類は物質と精神と魂の内の物質面だけが異常に成長してしまいました。他の二つの側面がそれについて行っていないのです。それが利己主義という、地上で最も厄介な罪を生むことになったのです。
 さて、こうした事実から学ばねばならない教訓があります。それは、物質面での発達を、全面的ではなくてもいいから、霊的並びに精神的側面にもある程度反映するようにならない限り、人類は自らの存在の産物、自らの創造の成果を平和的生活の中で味わえるようにはならないということです。そうならない限り地上には混沌と無秩序と不協和音が絶えないということです。良いことをしようという意欲を起こさせ、協調と奉仕の仕事へ鼓舞するのは精神と霊の発達なのです。
 精神と霊の発達は利己主義を滅ぼし、代わって霊的教訓をもたらします。精神と霊に宿された才能を開発し、その上で物質的文明の産物を自分一人の為でなく他の全ての人達の為に活用するようになれば、所謂地上天国が実現されます。地上世界の全ての人間が自分より不幸な人の為に役立てる何等かの才能を具えているのです。
 さて、その間に霊界ではどんな変化があったかというご質問ですが、これは地上世界のことより、遙かにお答えしにくい問題です。簡単に言ってしまえば、地上とのコミュニケーションの橋をかける仕事がかつてなく組織的となり、二度と地上世界がチャンネル(霊媒・霊能者)の不足から霊界と絶縁状態となることのないよう、入念な計画が工夫されそして実行に移されているということです。これ以上の説明は難しいです」(訳者注-シルバーバーチの念頭には多分、オーエンの『ベールの彼方の生活』第四巻で叙述されているように、天界の大軍がキリストを中心として組織されてゆっくりと降下し、それが今日スピリチュアリズムという名の下での霊的浄化運動となっていることがあったのであろう)

メンバーの一人「霊界においてそうした大きな仕事が成就され、コミュニケーションの為の回線が敷設され、計画が順調に推進されていることを知って私達も嬉しく思います。これには優れた霊媒が要請されることになりますが、今それが非常に不足しております」

シルバーバーチ「道具はその内揃います。霊力が多くのチャンネルを通じて恩恵をもたらすようになります。どんどん増えていきます。これまでの成果を見てこの程度のものと思ってはなりません。決してこの程度で終わるものではありません。昨日よりは今日、今日よりは明日と、ますます大きなことが成就されていきます。それが進歩というものです。我々も進歩していくのです。〝我々の後は誰が引き継いでくれるのだろう〟-そう心配なさる方が必ずいるものですが、あなた方の仕事が終われば代わって別の人が用意されます。かくして霊力が今日以上に地上へ流れ込み続けます。それは誰にも阻止出来ません」

ルース「今はスピリチュアリズムという形で霊界と地上界との間にコミュニケーションが開かれておりますが、それ以前にも大きなコミュニケーションの時代があったのでしょうか」

シルバーバーチ「一時的にインスピレーションが溢れ出たことはありますが、長続きしていません。この度のコミュニケーションは組織的であり、協調的であり、管理・監督が行き届いており、規律があります。一大計画の一部として行われており、その計画の推進は皆さんの想像も及ばない程の協調体制で行われております。背後の組織は途方もなく巨大であり、細かい所まで見事な配慮がなされております。全てに計画性があります。
 そうした計画の下に(19世紀半ばに)霊界の扉が開かれたのです。この度開かれた扉は二度と閉じられることはありません」(訳者注-1848年の米国でのフォックス家での心霊現象を皮切りに、地球の一大浄化活動が始まったということ)

○睡眠中は何をしているか

ルース「あたし達は眠っている間はどんなことをしているのでしょうか」

シルバーバーチ「皆さんは毎晩その肉体を後にして別の世界へ行きます。訪れた世界での体験は二種類に分けることが出来ます。一つは教育を目的としたもので、もう一つは純粋に娯楽を目的としたものです。教育的体験では、いずれ訪れる霊界生活で使用する霊的身体について教わります。娯楽を目的とした体験の場合は、例えば霊界で催されている色々な会場を訪れます。
 いいですか、ルースちゃん、あなたは昨晩私の世界の庭園へ連れて行ってもらったのですよ。それからポール君は音楽を聞きに行ったのですよ」

ポール「二人共そのことを覚えていないなんて、つまんないですね」

シルバーバーチ「確かに、そう思うのも無理ないかも知れませんね。でも、それは肉体から離れている間の(異次元の)体験を肉体の脳で理解しようとするからなのです。ポットの水全部をグラスに入れようとしても入りませんね。それと同じです。でも、夢を注意して見ていると好いヒントになるものが見つかる筈ですよ」

ルース「訳の分からない夢はどう理解したらいいのですか」

シルバーバーチ「変テコな夢のことですか?あれは、(異次元の)体験を脳で思い出そうとするからそうなるのです。脳は小さな袋のようなものです。霊体が肉体に戻って来て、その間の体験を脳に詰め込もうとするのですが、小さな袋には全部が入り切れないのです。それを無理して押し込もうとする為にあのような変テコな形になるのです。夢というのは別世界での体験がそのまま現れるのではなく、その断片的な思い出に過ぎません」

ポール「シルバーバーチさんのお仕事で僕達にもお手伝い出来ることがあれば教えてください」

シルバーバーチ「私にあなた達の愛の念を送ってください。私を信頼し、善意の思念を送ってください。それが私の何よりの食べ物であり飲み物なのです。ただただ愛が欲しいのです。善意を頂きたいのです。それさえ頂ければ私は幸せなのです。しかし、どうぞ私の仕事のことで心配しないでください。自分でちゃんとやりますから」

 ここで一旦話題が外れてメンバーの人達と話した後再びルースとポールに向かって次のような感動的な教訓を述べた。
 「お二人のこれからの人生が日向ばかりだとは申し上げられません。曇りの日もあることでしょう。時には雨に打たれることもあるでしょう。困難なことがあるでしょう。試練に出会うこともあるでしょう。人生は一本調子のものではありません。色彩もあり変化もあります。障害に出会うことでしょう。何もかも上手く行く楽しい日々もあれば、全てが絶望的に思える暗い日々もあることでしょう。そうした様々な体験の中でこそ性格が培われるのです。人生を形作っている様々な体験の中で培われるのです。
 もしも人生が初めから終わりまで楽に行ったら、もしも乗り切るべき困難もなく耐え忍ぶべき試練もなく、克服すべき障害もないとしたら、そこには何の進歩も得られないことになります。レースは競い合うからこそ価値があるのです。賞は楽には貰えず一生懸命頑張った後に頂くから価値があるのです。そういう価値ある人間になるように努力なさい。この世に克服出来ない悩みはありません。ですから、悩んではいけないのです。征服出来ない困難はないのです。力の及ばない程大きな出来事は何一つ起きないのです。
 一つ一つの経験から教訓を学ぶことです。難しいと思った時は、怯まず自分に鞭打つのです。そうすればそれだけ前より強い人間となります。自分が霊であること、それが肉体を通して表現しているのだということ、そして自分という永遠の霊に傷を負わせたり害を及ぼしたりするものは決して生じないということを忘れないことです。
 世間でいう〝成功者〟になるかならないかはどうでもよいことです。この世的な成功によって手に入れたものは、その内あっさりと価値を失ってしまいます。大切なのは自分の霊性の最高のものに対して誠実であること、自分でこれこそ真実であると信じるものに目を瞑ることなく、本当の自分自身に忠実であること、良心の命令に素直に従えることです。それさえ出来れば、世間がどう見ようと、自分は自分としての最善を尽くしたのだという信念が湧いて来ます。そして、いよいよ地上生活に別れを告げる時が来た時、死後に待ち受ける生活への備えが十分に出来ているという自信をもって、平然として死を迎えることが出来ます。これが私からのアドバイスです」

ルース「今のお話で私達の最後の質問をしなくてもよくなりました」

シルバーバーチ「さて私はそろそろ行かねばならなくなりました。私の去り難い気持はお分かり頂けると思います。折角の親しい繋がりを暫くの間断たねばならないからです。私はもうすっかり地上のお付き合いが好きになってしまいました。しかし同時に、暫くこの繋がりを断たないことには、却って私の存在価値が小さくなることも事実なのです。何となれば、これから先の仕事に必要なエネルギーが摂取出来るのは内奥の世界においてのみだからです。
 その世界に戻ると私は地上へ帰りたい気持が薄らぎます。そこが私の本来の住処だからです。何しろそこは天上的な喜びに満ちた光輝溢れる世界なのです。しかし私にはまだまだ為さねばならない仕事があります。これまでに成した仕事が果してこれで良かったのかどうかを確かめたいのです。そこでこれから霊の絆において親密な間柄にある同志達と会ってきたいのです。
 私が居ない間も私のことを忘れないでくださいね。私の影響力だけはずっと残っていることを知ってください。その内又私が自ら引き受けた仕事の推進の為に戻ってまいります。日常生活において皆さんを絶え間なく見守り付き添ってあげる為に戻ってまいります。皆さんと生活を共にすることは私にとって一つの楽しみなのです。お役に立つことが出来ることを光栄に思っているのです。
 では、又会う日までお別れすることにいたしましょう。私はいつも愛をもって訪れ、愛をもって去ります。皆さんに神の御恵みの多からんことを」