もう一組の夫婦は娘を失っていたが、今はもう連絡も取れて得心している。その日の要望は、自分達だけで霊的交信がもてるようになりたいので、その為のアドバイスを聞くことであった。趣旨を聞いてシルバーバーチはこう答えた。
 「お二人が今お考えになっていることを実現するのは容易なことではありません。戦争という特殊な情勢が地上と霊界との関係に大きく影響しており、連絡が大変混乱していることをまず認識しなければなりません。ご自宅で交霊会を催そうとしても中々上手く行かないのはその為です。
 永年の経験をもつ霊媒と強力な背後霊団が控えているサークルにおいてさえ、今は交信が非常に難しくなっております。まして初心者であるあなた方が上手く行かなくても不思議ではありません。
 まず第一に、まだ霊的能力そのものが十分な時間をかけた鍛練をされておりません。指導と強化がなされておりません。まだこれからという段階です。今の状態で行うと近付いた霊の誰にでも好きに操られてしまいます。それに、霊力を補助してくれるメンバーが足りません」

 「忍耐が要ると思っております」と奥さんが言うと、

 「それもそうですが、メンバーが少なくとも三人以上は必要です。お二人だけでは霊力の相乗効果が十分に出ません。その結果そちら側からドアを開けることが出来ても、そのドアから入って来るお客さんを整理する力が足りないことになります。すると当然、開けっ放しの入口からゾロゾロと際限もなくお客さんが入って来て混乱してしまいます。そうした点を改めない限り成功は望めないと思います」(その〝成功〟の意味が大切であろう。そうしたお客さんが〝喋る〟霊言現象にしても〝書く〟自動書記現象にしても、現象そのものなら簡単に〝成功〟するであろうけど、果してその〝通信霊〟が期待した通りの人物なのか、それともイタズラ霊がそう名乗っているに過ぎないのかが問題である。これには霊媒の霊格と入神の程度、審神者(さにわ)の霊格と体験と直感力が絡んで来るのでそう簡単に片付けられないが、一番危険なのは唯々諾々として何でも有り難く拝聴してしまう安易な好奇心と慢心である-訳者)

 メンバーの一人が「招かれざる客が入らないようにするのが支配霊の役目ではないのでしょうか」と聞くと、

 「そうなのですが、その為にはそれなりのエネルギーを供給してもらわねばなりません」

 「その門番のことですが、どんな責任を負っているのでしょうか」とご主人が尋ねる。

 「門番の仕事は門の番をすることです。ですが、その為には、入って欲しくない霊を締め出す為に必要な〝柵〟を拵えられるだけのエネルギーを供給してもらわねばなりません。そのエネルギーはあなた方人間から頂くのであり、それが総合されて初めて威力を発揮するものであることをご存知でしょうか。出席者一人ひとりから少しずつ頂いて、それを責任者である支配霊が纏めるのです。そこで霊界側で用意したエネルギーをミックスして交霊会の運営の為に使用するのです。
 もしも誰かれの区別なく通りかかりの霊にどうぞお入りくださいと言わんばかりにドアを開けっ放しにしておくと、みんな喜んで入って来ます。なぜかと言うと、それは言わば薄暗い場所に明りを灯すのと同じで、その明りを見て低級な霊がぞくぞくと寄り集まって来ます。すると門番も制し切れなくなります。それだけのエネルギーを十分に具えていないからです。
 このサークルではそういう事態は起こりません。何十年も掛けてメンバーを厳選した上でサークルを構成しているからです。それでも、極めて稀にではありますが、急に邪魔が入って、少しの間中断せざるを得なかったことはあります。ですが、悪巧みをもった者ばかりとは限りません。色んなタイプの霊がいるものです。ただ単に地上の人間と話をしてみたいと思う者、好奇心から割り込んで来る者、軽薄な見栄からお節介を焼く者など、色々です」

 この後シルバーバーチは、そうした交霊会を開くことを考えるよりも、二人は霊的知識という宝を手にしているのだから、それを知らないまま悲しんでいる同じ境遇の人達に教えてあげる仕事に精を出すべきであることを説いた。すると哲学に興味を持っているご主人が哲学的な問題を提出した。
 「宇宙創造の目的についてどういうお考えをお持ちですか。その目的に付随して、なぜこんなに多くの苦痛と邪悪と苦闘とが無ければならないのか、それが分かりません。人類の立場からはそうした目的が理解出来ないのです」

 「目的はあります。永遠の時の中で成就すべき目的があります。生命は無窮の過去から存在し未来永劫に亘って存在し続けます。しかしその生命の辿る道は、一つの頂上を極めると次の頂上が見えて来るという、果てしない進化の道程です。一つの頂上を極める毎にあなたの霊的資質が向上して行くのです。
 鍛練によって人間は内部の神性が目覚め、より広く、より豊かなものを表現してまいります。地上的な垢が落とされ、霊の純金が姿を現します。これは当然のことながら苦痛を伴わない過程ではあり得ません。が、それも宇宙的機構に仕組まれた一部-比較対照の中で真理に目覚めるように意図された機構の一部なのです。
 苦痛を知らずして健康の有り難さを知ることは出来ません。日蔭を知らずして日向の有り難さは分かりません。そうしたことの全てが、リズムと調和の中で展開する創造活動の一大パノラマを演じているのです。
 人間は永遠の海を当てもなく波に翻弄されているコルクではありません。永遠の創造活動の中の不可欠の存在なのです。自分の努力、自分の行為、自分の生活がそうした永遠の創造過程になにがしかの貢献をしているのです。神の息吹の一部であり、無限なる霊の一部であり、永遠なる宇宙の一部であり、それが自分を通して働き、雄大なる宇宙的機構に光輝を加えることになるのです」

 「とりあえず私達にもそれが分かるとしましょう。苦と薬の効用は理解出来ます。しかし、為になっているとは思えない存在が沢山あるように思うのです」

 「人間生活のことでしょうか」

 「人間生活もそうですが、特に小鳥や昆虫のような動物の世界においてです。比較対照という機構を理解するよう要求されても、自分の置かれた苦しい立場からしか見つめることが出来ません」

 「こう申しては失礼ですが、あなたは物事をガラス越しに薄ボンヤリと見つめておられます。真剣ではいらっしゃるかも知れませんが、極めて小さなレンズで覗いて全体を判断しようとなさっています。あなたにはまだ永遠の尺度で物事を考え判断することがお出来になりません。この途方もなく巨大な宇宙の中にあって、ほんの小さなシミ程の知識しかお持ちでないからです。しかし今、それよりは少しばかり多くの知識を私達がお授けしているわけです。
 少しだけです。全知識をお授けしましょうとは申し上げません。それは私達も持ち合わせていないのです。私達はあなた方地上の人間より少しばかり多くの知識を手にしているだけです。あなた方より少しばかり永い生活体験があるからに過ぎません。あなた方がこれから行かれる世界、私達が本来の住処としている世界において、自然法則の仕組みと働きの幾つかを見て来ているからです。
 その体験と、私達より更に多くを知っておられる上層界の方々から教わったことを土台として私達は宇宙人生の計画と目的について一段と明確な認識を得ております。そこに完璧な摂理の働きを見ております。自然の摂理です。手落ちということを知らない法則、絶対に誤まることのない法則、極大から極小に至るまでの宇宙間の全存在の全側面を認知し、何一つ無視することのない法則、全てを包括し、全ての活動に責任をもつ法則です。
 私達はその法則の完璧さに驚嘆しております。絶対に誤まることがないのです。そして私達は、これまでに明かして頂いたその完璧さ故に、愛と叡智と慈悲によって育まれた完全な計画の存在を知り、現時点で理解し得ないこと、まだ明かして頂いていない側面も又、同じく完璧な法則によって支配されているものと確信しております。そう確信するだけの資格があると信じるのです。
 その法則が構想においても働きにおいても完璧であるからには、当然その中に人間的な過ちに対する配慮も用意されているに決まっております。埋め合わせと懲罰が用意されております。邪悪の矯正があり、過ちと故意の悪行に対する罰があり、何の変哲もなく送った生活にもきちんとした裁きが為されております。
 私から申し上げられるのはそれだけです。私がこれまで送って来た(三千年に亘る)生活において、〝自分は神の法則によって不当に扱われている-不公平だ〟と真剣に言える者を一人も知りません。私の知る全ての者が神の永遠の公正はその規模において無限であり、その適用性において完全であることを認めております」

 「霊界にも時間があるのでしょうか。それから、ある事が行われなくなって霊が困るというようなことがありますでしょうか」

 「地球と接している幽質の界層を超えてしまうと、あなた方が理解しておられるような時間は存在しなくなります。こちらの世界は地球の自転とは何の関係もありません。昼もなく夜もなく、季節の変化もありません。地上世界で使用されている意味での時間はありません。太陽は見たところ昇ったり沈んだりしていますが、こちらにはそういうものがないのです。以上が最初のご質問に対する答えです。二番目のご質問はよく分かりませんでした。もう少し分かり易く述べてください」

 ここで代わって奥さんが「定期的に開かれているサークルを中止したら娘さんが残念がるかということです」と言うと-

 「それに対しては〝イエス〟という答えしかないでしょう。ですが、次のことを知って頂かねばなりません。私もあなた方の世界のことは少しばかり体験しており、色々と難しい面があることを理解しておりますが、そうした中で、忙しい時間の幾ばくかを割いて、背後霊との霊的な交流をもつことを心掛けてくださると、背後霊はとても助かるということです。そして、これは何度も申し上げていることですが、背後霊との繋がりを求め、たとえ表面的には何の反応も無くても、霊的には必ず何かが起きているものです。
 ですから、例えばテーブルも何も用いずに何分間か、ただお二人で座って黙祷するというだけでいいのです。言葉に出すのもいいかも知れません。が、それも必ずしも必要ではありません。心を空にして穏やかな気持の中で精神を統一するだけで十分です。
 その統一状態の中で霊の力が働くのです。そうした静かな精神状態というのが、物的生活に振り回されている騒々しさに一時的なストップをかけることになります。その僅かな時間を霊性の開拓と、自宅内での霊的存在の認識へ向けたことになります。
 地上の人間は静かな精神状態をもつことの効用を十分に認識しておりません。私がよく申し上げているように、あなた方にとって無活動の時が私達にとって活動の時なのです。あなた方が静かに受身の心でじっとしている時が私達にとって一番近付き易いからです。
 今お二人がお嬢さんをご覧になられたらびっくりなさいますよ。どんどん大きくなっておられます。今ではもうお二人が知っているかつてのあの少女ではありません」

 「成長したのだなあと思うことがあります」と母親が言う。既に何人もの霊媒を通じて色々と証言を得ているからである。

 「勿論ご両親への愛は変わっていませんよ。それが一番大切なのです」

 最後に二人がシルバーバーチに礼を言いかけると、いつものようにこう述べた。
 「私が言ったからといって何もかも信じることはありません。私だって間違ったことを言っているかも知れません。あなた方にとって成る程と得心のいったことだけを受け入れてくださればいいのです。これは私がいつもお願いしていることです。
 あなた方は私達に手を貸し、私達はあなた方を援助するという形で、お互い協力し合いながら宇宙の真理を究めていくのです。お互いがお互いから学ぶことが沢山あります。誰一人として間違いを犯さない者はいませんし、全能者ではないからです。私達だって皆人間的存在です。永遠の道を旅する巡礼者なのです」
       
       
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