自分自身についての単純・素朴な真理-これを本当に理解している人がなんと少ないことであろう。ところがその自分自らを知らない人間がとかく他人のことについては、あたかも深い洞察力をもっている人間であるかのような口を利くものである。曰く-〝あいつも、もうそろそろ気付いてもよさそうなものだが・・・・〟〝いつになったら目が覚めるのだろう〟〝あの人がもし側から見られるように自分で自分を見つめることが出来たら、さぞかし・・・・〟等々。他人についての単純な真理を表現したこうした言葉はよく耳にするが、それを口にする本人も自分自身についてはとかく何も知らないものである。
 こうした中にあって、古来、その霊性の高さと教説の崇高さにおいて際立ったものを見せる存在がいる。人間それ自身についての彼等の説くところには永遠の真実味がある。
 ソクラテスがそれであり、イエスがそれであり、そしてこのシルバーバーチがそれである。ロンドンの霊媒(バーバネル)の言語機能を借りて語る、三千年前に地上を去ったという古代霊シルバーバーチは、交霊現象にまつわるあらゆる障壁を乗り越えて、しかも稀にみる言語感覚の冴えをさりげなく発揮しながら、こう語る。

 「私に出来ることは永遠・不変の宇宙の原理・原則を指摘することだけです。地上世界のことが全て探求し尽くされ、説明し尽くされ、理解され尽した後に、尚且つ誰一人として完全に究めることも説明することも出来ない永遠の摂理があります。それは構想においても適用性においても無限です。人間の全てが、日々決断を迫られる問題に直面した時に、自分が霊的存在であること、大切なのは物的なもの-それはそれなりに存在意義はあっても-ではなくて、それがあなたの本性、永遠の霊的本性に与える霊的な意義であることを自覚することが出来るようになれば、どれだけ素晴らしいことでしょう。
 物的なものはいずれ朽ち果て、元の塵に帰ります。野心、欲望、富の蓄積、こうしたものは何の役にも立ちません。所詮はあなた方も霊的存在なのです。真の富はその本性に宿されているものだけであって、それ以上では有り得ませんし、それ以下でもありません。そのことを生涯を通じて悟っていかなくてはいけません。それを悟った時、あなたは真の自分を見出したことになり、自分を見出したということは神を見出したということになり、そうなった時のあなたこそ真の意味での賢者と言えるのです。
 私の目には、あれこれと〝大事なこと〟があって毎日あっちへ走りこっちへ走りして、忙しく暮らしながらその実〝一番大事なこと〟を見落とし、なおざりにしている為に、心が絶望的でヤケになっている大勢の人々の姿が見えます。この辺りに私共が説く教えの核心があるのですが、お判りになりますか。その人達が日々の生活の中に生きる喜び-神の子として当然味わうべき充足感を見出してくれるようにと願って霊界から舞い戻って来るそもそもの目的がそこにあることが判って頂けるでしょうか。
 それは所謂宗教、教会、信条、教義といったものより大切です。人類を分裂させ戦争と混沌と騒乱の原因となって来た、その類のモノのいずれにもまして大切です。が、それは自分という存在についての(霊的存在であるという)至って単純な事実に過ぎないのです。なのに、それを悟っているのはごく僅かな人達だけで、大多数の人は知らずにおります」

 さて、こうした霊的啓示を我々は、たまたま良い霊媒がいたから得られた、気紛れで無計画なものと受け止めがちである。が、シルバーバーチがこれから明かすように、その背後では幾重にも組織された霊団によって、遠大な計画の下に推進されている。(訳者注-シルバーバーチに限っていえば霊媒のバーバネルが誕生する以前から計画を立て英語の修得や心霊現象の研究と準備を重ねて来たというが、同じことが各国・各民族において太古よりそれ独自の形で推進されて来ており、これから先には本格的なものが計画されていることであろう。地上人類は言わばケンカや遊びから学ぶ幼児期を終えて、やっと本格的な霊的真理を学ぶ時代に入りつつある-そんな程度の段階にあるのではなかろうか)
 シルバーバーチはこう語っている。
 「私達霊団の使命は列記とした目的ないし意義をもつ証拠を提供し、それによって心霊的法則というものが存在することを立証する一方、生きる喜びと霊的教訓を授けるということです。物理的法則を超えた別の次元の法則の存在を証明するだけでなく、霊についての真理を啓示するということです。
 そうした使命をもつ私達には、真っ向から立ち向かわねばならない巨大な虚偽の組織が存在します。過去幾世紀にも亘って積み重ねられて来た誤りを改めなければなりません。人間が勝手に拵えた教義を基盤として築き上げられてきた虚飾の大機構を解体しなくてはなりません。
 私達の努力は常に、物質界の神の子等にいかにして魂の自由を見出し、いかにして霊的真理の陽光を浴び、いかにして教義の奴隷となっている状態から脱け出るかをお教えすることに向けられております。これは容易な仕事ではありません。なぜなら、一旦宗教という名の足枷をはめられたが最期、迷信という名の厚い壁を突き破って霊的真理が浸透するには永い永い年月を要するからです。
 私達は霊的真理の宗教的意義をたゆまず説き続けます。その霊的な重要性に目覚めれば、戦争と流血による革命より遙かに強烈な革命が地上世界にもたらされるからです。
 それは魂の革命です。その暁には世界中の人々が受けて当たり前のもの-霊的存在としての様々な自由を満喫する権利を我が物とすることでしょう。
 私達が忠誠を捧げるのは教義でもなく書物でもなく教会でもありません。宇宙の大霊すなわち神とその永遠不変の摂理です。
 いずれ地上世界に強力な霊が注がれます。世界各地において霊的勢力の働きかけが認識されるようになります。これまで蔓延ってきた利己主義と無知に歯止めをかける為の大きな仕事があるからです。それはいつか必ず成就されます。が、その途中の段階においては大きな産みの痛みを味わわなくてはならないでしょう。
 その仕事を支援せんとして私共の世界から大勢のスピリットが馳せ参じております。あなた方の顔見知りの人、血の繋がりのある人もいれば、愛の繋がりによって引かれてくる人もいます。背後霊というとあなた方は直ぐに顔見知りの名前を思い浮かべがちですが、一方には全くあなた方の知らない人達で、ただ自分の力を役立てることにのみ喜びを覚えて援助してくれている人達がいることも、どうか忘れないでください。
 聖書にはサウロ(後のパウロ)がダマスカスへ行く途中、天からの光に包まれ、目が眩んで倒れ、それがきっかけで改心する話がありますが(使徒行伝9・3、22・6)、世の中はそんな具合に一気に改まるものではありません。一人ずつ霊的真理に目覚め、一人ずつ神の道具となっていくという形で、少しずつ光明が広がって行くのです。霊的なものは大事に育て慎重に広めて行く必要があることを銘記しなければなりません。急激な改心はえてして永続きしないものです。私達の仕事は永続性が生命です。
 一個の魂が神の道具となった時、一個の魂が暗黒から光明へ、無知から知識へ、迷信から真実へと目覚めた時、その魂は世界の進歩に貢献していることになります。なぜなら、その一人ひとりが言わば物質万能主義の棺に打ち込まれる釘のようなものだからです。
 発達にも二つの種類があることを知ってください。霊そのものの発達と、霊が使用する媒体(注)の発達です。前者は魂そのものの進化であり、後者は単なる心霊的能力の開発に過ぎません。霊的進化を伴わない心霊能力だけの発達では低い次元のバイブレーションしか出せません。両者が相携えて発達した時、その人は偉大な霊能者であると同時に偉大な人物であることになります。(注-その働きを普段我々は精神或いは潜在意識として捉えている。この中に所謂超能力が宿されている。シルバーバーチは別の所でそれがいずれは人類の当たり前の能力として日常茶飯に使用されることになると述べているが、ここでは、それがすなわち人格の向上を意味するものでないことを指摘し、超能力者だからといって直ぐに崇めたがる風潮を戒めている。訳者)
 私達が携えてくるメッセージは地上人類にとって実に素晴らしい恩恵をもたらします。魂を解放し、神からの遺産(神的属性)の素晴らしさに目を開かせます。あらゆる足枷と束縛を棄てるように教えます。霊的真理の本当の有り難さを教えます。物的生活の生き方と同時に霊的生活の生き方も教えています。美と愛と叡智と理解力と真理と幸福をもたらします。人の為に、ひたすら人の為に、と説くメッセージです。
 ところが、そのメッセージを携えて来る私達が、神を正しく理解していない人々、霊の働きかけの存在を信じない人達によって拒絶されております。それはいつの時代にもよくある話です。
 一方、現在の地上の状態はそうした私達スピリットの働きかけをますます必要としております。流血に次ぐ流血、そしてその犠牲となった人々の涙の絶えることがありません。無明故に地上人類は摂理に従った生き方をしておりません。暗黒と絶望の道を選択しております。そこで私達が希望と光明と平和と調和をもたらす知識を携えて来たのです。無知故に私達を軽蔑します。私達のメッセージを拒絶します。私達を背後から導いている強大な力の存在に気付いてくれません。しかし霊的実在を教える大真理は必ずや勝利を収めます。
 摂理に逆らう者は自らその苦い実りを刈り取ることになります。摂理に従って生きる者は物的・霊的の両面において豊かな幸せを刈り取ります。
 暗闇が蔓延する地上にあって、どうか希望を失わず、あなた方と共に人類の高揚の為に動いている多くの霊、物的世界を改善しようとしている霊の努力は必ず実ることを信じて頂きたいのです。その背後に控える霊力は宇宙で最も強力な力だからです。
 価値あるものは苦難と悲哀なしには達成出来ません。地上は地上なりの教訓の修得方法があるのです。それは避けるわけにはいきません。今、霊的勢力が地上全土に亘って活動を開始しつつあり、あらゆる地域の人々に霊的メッセージが届けられ、その心を明るく照らし、その光が広まるにつれて物質万能主義の闇を追い散らしていきます。
 私達は罰の恐ろしさをチラつかせながら説得することはしません。恐怖心から大人しく生きる、そんな卑屈な臆病者になって欲しくはありません。内部に宿る神性を自覚し、それを発揮することによって霊性を高め、一段と崇高な真理と叡智を身に付けて頂くことを目指しております。
 その為には、まず、これまでに得たものに不満を抱くようにならなければなりません。なぜなら、今の自分に満足出来ず、更に何かを求めようとするところに、より高い知識を得る可能性が生まれるものだからです。満足する人間は進歩が停滞します。満足出来ない者は更に大きな自由へ向けて突き進むことになります。
 私達は決してあなた方に〝理知的に難しく考えず、ただ信じなさい〟とは申しません。逆に〝神から授かった理性を存分に駆使して私達を試しなさい。徹底的に吟味しなさい。その結果もし私達が述べることの中に低俗なこと、邪険なこと、道義に反することがあると思われたら、どうぞ拒絶してください〟と申し上げております。(訳者注-シルバーバーチがそう述べる時、自分の訓えを押し付けるつもりはないという態度の表明であると同時に、次のような事実を踏まえていることも指摘しておきたい。それは、シルバーバーチの名が広まるにつれてその名を騙る霊が出没していることである。これは霊媒のバーバネルの在世中にもあったが、他界後も世界各地であるようである。シルバーバーチは自分が霊媒とは別個の存在であることを証明する為に他の霊媒、例えばロバーツ女史を通してバーバネル夫妻に語ったことはあるが、それもそう約束した上でのことだった。そういう事実を踏まえて、だから、変だと思われたら遠慮なく拒絶してくださいと言うことにもなった)
 私達はひたすらあなた方に〝より高潔な生活〟、自己犠牲と理想主義を志向する生活を説いております。もしそれをお認め頂ければ、それは私達の教えの中身に神の旗印が押されていることを証明するものと言えましょう。
 たった一個の魂でも目覚めさせることが出来れば、悲嘆に暮れる者をたった一人でも慰めてあげることが出来れば、怖気付いた人の心を奮い立たせ人生に疲れた人に生きる勇気を与えることが出来れば、それだけでも努力の甲斐があったことにならないでしょうか。
 私達のメッセージを耳にして心に動揺を来たし、困惑し、ワケが分からなくなりながらも、先入主的信仰によって身動きが取れずにいる人が大勢おります。しかしその人達も、牢獄に閉じ込められた魂へ向けて呼びかける自由の声を耳にして煩悶しています。
 そういう人達にこそ私達のメッセージを届けてあげるべきです。思いも寄らなかったものが存在することを知ってそれを必死に求めようとする、そのきっかけとなります。真理とは全て踏み石の一つに過ぎません。
 この霊媒の口をついて出る言葉にもしもあなた方の理性に反発を覚えさせるもの、神の愛の概念と矛盾するもの、愚かしく思えるもの、あなたの知性を侮辱するものがあるとすれば、それは、最早私の出る幕ではなくなったことを意味します。私の時代は終わったことになります。
 この交霊会もこれまで数え切れない程催されておりますが、その間私が魂の崇高なる願望と相容れないものを述べたことは、ただの一度もないと確信しております。私達は常にあなた方の魂の最高の意識に訴えているからです。
 地球人類は地球人類なりに、自らの力で救済手段を講じなくてはなりません。出来合いの手段はないのです。前もって用意されたお決まりの救済手段というものはないのです。その為にはこれが生命現象だと思い込んでいる自然界の裏側に目に見えない霊的実在があること、そして物質界に生活している人間は物的存在であると同時に霊的存在であり、物的身体を通して自我を表現しているという事実をまず理解しなくてはなりません。
 物的身体は、神の意図された通りに、生活上の必需品をきちんと揃えることによって常に完全な健康状態に保たねばなりません。一方、霊はあらゆるドグマと信条による足枷から解放されねばなりません。そうすることによって実質的価値、つまり霊的に見て意味のないものに忠誠を捧げることなく、真実なるものの為にのみ精を出すことになり、過去幾千年にも亘って束縛して来た信条やドグマを巡っての戦争、仲違い、闘争を無くすことが出来ます。
 私達は神を共通の親とする全民族の霊的同胞性を福音として説いております。その理解を妨げるものは地上的概念であり、虚偽の上に建てられた教会であり、特権の横領(注)であり、卑劣な圧制者の高慢と権力です。(注-宗教組織の発達に伴って内部において権力の構造が生まれる。それは人間的産物に過ぎないが、それを宇宙の絶対者から授かったものと錯覚し主張し始める。それを〝横領〟と表現したのである-訳者)
 私達の霊訓が理解されて行くにつれて地上の民族間の離反性が消えて行くことでしょう。各国間の障壁が取り除かれて行くことでしょう。民族的優劣の差、階級の差、肌色の違い、更には教会や礼拝堂や寺院同士の区別も無くなることでしょう。それは、宗教には絶対的宗教というものはなく世界の一つひとつが宇宙の真理の一部を包蔵しており、自分の宗教にとって貴重この上ない真理が他の宗教の説く真理と少しも矛盾するものでないことを理解するようになるからです。
 そうしていく内に、表面上の混乱の中から神の意図(プラン)が少しずつ具体化し、調和と平和が訪れます。こう申し上げるのも、あなた方にその神のプランの一部-私達が霊の世界から携わり皆さんの一人ひとりが地上において果たさなければならない役割を正しく理解して頂く為です。
 私達が説いていることはかつて人類の進歩の為に地上へ降りた各時代の革命家、聖者、霊格者、理想主義者達の説いたことと少しも矛盾するものではありません。彼等は霊的に偉大な人物でしたから、その霊眼によって死後の生命を予見し、その美しさが魂の支えとなって、あらゆる逆境と闘争を克服することが出来たのでした。彼等は地上世界にいずれ実現される神のプランを読み取り、その日の為に物質界の子等の魂を高揚させるべく一身を投げ打ったのでした。
 彼等も悪し様に言われました。援助の手を差し延べんとしたその相手から反駁され嘲笑されました。しかしその仕事は生き続けました。それは丁度、今日世界各地の小さな部屋で行われている、このサークルのような交霊会の仕事が、そのメンバーの名が忘れ去られた後も末永く生き続けるのと同じです。強大な霊の力が再び地上世界へ注ぎ込まれ始めたのです。いかなる地上の勢力をもってしてもその潮流をせき止めることは出来ません。
 人間は問題が生じると直ぐ流血の手段でカタをつけようとします。が、そんな方法で問題が解決したためしはありません。流血には何の効用もありませんし、従って何の解決にもなりません。なぜ神から授かった理性が使えないのでしょう。なぜ相手を出来るだけ大勢殺すこと以外に、解決法が思いつかないのでしょう。なぜ一番多くの敵を殺した者が英雄となるのでしょう。地上という所は実に奇妙な世界です。
 地上には是非私達のメッセージが必要です。霊のメッセージ、霊的真理の理解、自分の心の内と外の双方に霊的法則と導きがあるという事実を知る必要があります。そうと知れば、迷った時の慰めと導きと援助をいずこに求めるべきかが判るでしょう。
 こうした仕事において私達は、自分自身のことは何一つ求めていません。栄光を求めているのではありません。地上の人達の為に役立てばという、その願いがあるだけです。永い間忘れられて来た霊的真理を改めて啓示し、新しい希望と生命とを吹き込んでくれるところの霊的なエネルギーを再発見してくれるようにと願っているだけです。
 今や、これまでの古い規範が廃棄され、あらゆる権威が疑問視され、その支配力が衰えつつある中で人類は戸惑っておりますが、そんな中で私達は絶対的権威者であるところの宇宙の大霊すなわち神の存在を、けっして 機能を停止することも誤ることもない法則という形で啓示しようとしているのです。地上世界がその法則に順応した生活規範を整えていけば、きっと再び平和と調和が支配するようになります。
 そうした仕事は、廃棄された信仰の瓦礫の中にいる人類が不信感と猜疑心からその全部を棄ててしまうことなく、真なるものと偽なるもの、事実と神話とを見分け、永い間人類の勝手な想像的産物の下に埋もれて来た真に価値あるもの、全ての宗教の根底にあるもの、霊についての真理を見出すように指導するという、私共霊団に課せられた大きな使命の一環なのです。