シルバーバーチの交霊会にはありとあらゆる階層の人々が〝叡智の言葉〟を聞きに訪れる。ある日の交霊会に英国労働党の下院議員が招待された。まずシルバーバーチがこう語る。
 「私が地上へ戻って来たのは基本的な霊的真理をほんの僅かだけ述べる為です。私から見れば-地上の年齢で言えば私は大変な年寄りです-あなた方の世界が必要としているのは、神学という名の仰々しい抽象的な教義の寄せ集めではなくて、霊の力に動かされた古(いにしえ)の賢聖によって説かれた、宗教の根幹であるところの二、三の単純な真理、すなわち人類はお互いがお互いの一部であること、そして肌の色の違いの内側には全てを結び付ける共通の霊的な絆があるということ、これだけです。
 お互いの血管を同じ血液が流れている-つまり同じ霊が各自の本性に潜んでいるということです。宇宙の大霊が私達を一つの家族にしたのです。子供である人間が互いに差別をつけ、潜在する一体性に気付かず、かくして私共が戻って来て、地上のいかなる組織・団体もそこに霊的実在がない限り真の進歩は得られないことを教えてあげなければならないことになるのです。
 四海同胞、協調、奉仕、寛容-こうした精神こそ人生の基本であり、これを基礎としない限り真の平和は有り得ません。持てる者が持たざる者に分け与えることによって互いに奉仕し合い、睦み合い、援助し合うこと-この単純な真理は繰り返し繰り返し強調しなければなりません。これを個人としての日常生活において、民族としての生活において、そして国家としての在り方の中において実践する者こそ、人間としての本来の生き方をしていることになる-これだけは断言出来ます」
 ここでその議員が公僕としての選ぶべき道を尋ねると-
 「要求されたことが正しいと思われればおやりになればよろしい。いけないことだと思われれば、私が述べたことにはお構いなく、おやりにならないことです。但し、間口は広いものです。辿って行けば、更に大きなものへと導かれて行くことでしょう」
 この議員は開会頭初に「私は今、にっちもさっちもいかない板ばさみの状態なのです」と述べて、政治上の問題での決断を迫られていることを告白していた。そこでシルバーバーチはこう続けた。
 「人間は無言の内に苦しみ、悲哀と苦痛も味わわなければなりません。これは人類の永年の伴侶なのです。遠い遠い昔、どうみても何一つ苦労はなかったであろうと思われる昔からです。
 あなたはそれに勇敢に対処して来られました。いつも正面から取り組み、〝これでいいのだろうか〟という単純素朴な問いかけを忘れませんでした。そして、正しいと信じたら、躊躇うことなくその方向へ突き進まれました。そうした中で一つだけあなたの人生で最大の悲しい出来事がありましたが、それはここで触れるのは適当でないでしょう。
 あなたがこの地上に生を享けたのは、果たすべき宿命があるからです。地上を去るまでに成就すべきことがあるからです。あなたは実に大きな貢献を為す立場におられます。多くの恵まれない人々が光明を見出す-つまり理解力を身に付ける一助となり、より大きな自由を獲得させてくれる霊的エネルギーの存在に目覚めさせてあげる仲立ちとなることが出来るからです。その役目に徹することです。そうすれば他の全てのことも自然に上手く行きます。
 あなたは何一つ心配なさることはありません。あなたを包み、あなたを導いてくれる愛が鉄壁の守りを固めており、あなた自身の我侭から間違った方向へ進まない限り、あなた程の知識と理解力があれば決して道に迷われることはないでしょう。
 いかがですか、自分を包み込む大きな愛の力を意識されることがありますか」
 「いつも忝(かたじけな)く思っております」
 「あなたは私共の世界から大いなる愛を受けておられます。かつて偉大なる奉仕の生活を送った霊で、私達が〝光り輝く存在〟と呼んでいる人達によって守られております。
 私が時折思うことは、地上の人間-その中でもせめてこうした霊的知識を手にされた方々にその〝光り輝く存在〟を一目ご覧に入れてあげられたら、ということです。人間の進歩を我が事のように喜び、挫折を我が事のように嘆き悲しみながらも、人間の霊的進化とその豊かな実りの時期の到来を確信して、日夜守護し支援しております。
 あなたもコツコツとよく頑張って来られました。色々と苦労されました。涙を流されたこともありました。悩み苦しまれたこともありました。全てに見放され、誰からも顧みられず、絶望の状態に置かれた時の魂の孤独がいかなるものであるかも知っておられます。又一方、滅多に味わう人のない高い魂の高揚も味わって来られました。絶望の底も覗かれました。魂というものは〝ゲッセマネの園〟を耐え忍ぶまでは〝変容の丘〟に登り着くことは出来ないのです」
 そう述べてから、かつての労働党創設者の一人キア・ハーディからのメッセージをこう伝えた。
 「あなたのことをとても誇りに思っていると仰っていますよ。正しいと信じた大義-人間にとって物的にも精神的にも霊的にも最善と信じたことの為には絶対に世間に阿(おもね)ずに身を捧げる人全てを誇りに思っておられます。彼は物的水準を高める為だけでなく、霊性の発達を促し、精神のもつ芸術性を培う為に、人間の全ての願望を叶えさせてあげたいという一念に徹している人を尊敬しておられます。それがあなたの唱道しておられる福音でもあると仰っていますが、そうなのでしょうね?」
 「そうありたいものと願っております」

 この後シルバーバーチは司会者のハンネン・スワッハーに向かってこう語った。
 「今地上世界では物的身体をもつ人類としての基本的人権が次々と認められつつあります。しかし、目に見える形にこそなっておりませんが、霊的人間としての人権も徐々に認められつつあります。今あなた方は画期的な新しい時代-一人でも多くの人間がより大きな自由を享受する新しい時代の夜明けに立っておられます。
 死の境界を通過して私共の霊の世界へ来られた方は、ある種のエネルギー、莫大なエネルギーを発揮するようになります。そのエネルギーが不幸に泣いている人々、物的生活の喜びを味わえずにいる人々の為に役立ちたいと願う人々の活性剤となります。
 人間はその本来の霊的属性を発揮しようとする行為が妨げられることはありません。妨げとなるのは自分自身の貪欲であり、強欲であり、利己心です。それが霊の本来の権利であるところの自由を求めようとする怒涛のような魂のうねりを妨げるのです。が今や霊力の莫大な威力の援助を得て、その霊的本性が地上界において発揮されつつあります。
 それは物的分野、政治的分野、経済的分野といった、人間がとりわけ関心の強い分野でのみ発揮されつつあるのではありません。その霊力の奔流の影響を受けて、私共スピリットの道具となる新しい人材が次々と輩出されることでしょう。
 こうした人達の手によって悲しみの底に沈んでいる人が慰められ、病人が癒されるだけでなく、所謂霊的啓示(インスピレーション)が大規模にもたらされることでしょう。スピリチュアリズムに関心を向ける人が増え、この訓えこそが悩みの時に導きを、困難に遭っては慰めを、取り越し苦労と煩わしさの中にあっては安らぎと確信を与えてくれるものであることを知ることでしょう」
 そして次の言葉をもってその日の交霊会を閉じた。
 「そういう次第ですから、皆さんと共にホンの僅かな時だけでも精神の活動を止め、周りに霊力の存在を意識し、より大きな仕事を成就せんとして私達を援助し鼓舞してくださっている偉大なる存在を認識致しましょう。そうした偉大なる存在にとって、神に仕えることは神の子の為に働くことに他ならず、しかもその多くが、いずこへ向かうべきかも知らずにさ迷っているのです。
 願わくばあなた方と私達とが一致協力して迷える人々を導き、苦難の最中にある人々を勇気付け、背負える重荷を重荷として感じないよう、物の観方を啓発してあげることが出来ますように。そして又、私達が成る程神の使者であることを行為によって顕示し、神の一部としてその名に恥じない存在であらしめ給わんことを」

 別の日の交霊会に、さる大手の新聞社の編集長が招かれた。それが二度目だった。その編集長に対しシルバーバーチは終息したばかりの第二次世界大戦に言及して次のように述べた。
 「恐ろしい戦争による苦悩と災禍と悲劇と窮乏、目を覆う流血と混沌と動乱が終わっても、今度はそれを体験してこちらへ来た犠牲者達にそれと全く同じ精神的並びに霊的騒乱が生じるものです。
 そうして、その激変の最中で実は、真理の光に照らして思考することを知らない者によって幾世紀もの間金科玉条とされてきた思想・信仰-宗教的打算からしか物を考えない者によって形作られ、いじくり回されて来た教説が全て粉砕されることにもなりました。
 唯物主義の根幹が破壊され、致命傷を負っております。もっとも、いかにも仰々しい教説を説きながらも、その実、自己の打算によってのみ動き、人類の福祉など眼中にない小さなグループがそこかしこに存在しております。
 その中には唯物主義的体制-地上特有の機構-を牛耳り戦時の苦悩と圧迫の中で培ったところの、より明るく、より幸せで、より良い世界を実現していく可能性の発現を妨げんとする派も幾つか見受けられます。
 しかし新しい世界、より良い世界-数知れぬ人間が霊的自由、精神的自由、そして身体的自由を見出すであろう世界の建設に携わる者は、同じ目的の為に活躍している無数の死者(と、あなた方が呼んでおられる人達)を呼び寄せます。
 同時に、遙か上層の世界から同じく人類の霊的覚醒の為に心を砕き、地上世界から得られる生き甲斐と豊かさと美を存分に得させようと活躍している数多くの高級霊をも呼び寄せます。
 かくして人類の福祉の為に働く人々は、予期した以上の成果を得る事になるのです。人類の福祉がかつて真の意味での成果を克ち得たことは一度もありません。いつも裏切られ、好機を奪われ、邪魔が入り、その神聖なる使命の達成を阻止されて来ました。その使命とは、人類の全てに一人の例外もなく宿されているところの神性を最大限に発揮されることです。
 少し大袈裟に響くかも知れませんが、私の言わんとするところはお判りでしょう?」
 「判ります。よく判ります」
 「本当に必要なのは単純で素朴な真理なのです。新しい大真理ではなく、驚異的な啓示でもなく、新しい神勅でもありません。
 その素朴な真理はいつの時代にも、いかなる国においても、必要性と理解力の程度に応じたものが授けられてきております。必ず霊覚を具えた男性及び女性がいて、その人達を通じて霊力が地上に注がれ、先見の明をもって人々を導き、癒し、慰めてきました。これからもそうでありましょう。
 それと同じ霊力があなた方の今の時代に更に一段と強化されて注がれております。キリスト教で〝聖霊〟と呼ばれているスピリットの降下に伴って生じる各種の心霊現象を繰り返し演出して、古くから説かれている同じ真理、すなわち生命に死はないこと、霊は不滅であることを説き、人間の霊性、その根源、宿命、存在の目的、宇宙の大霊との繋がり、隣人との繋がり、そうして、そこから派生する驚異的な意味を力説しているのです。
 その霊力が今まさに奔流となって注がれ、そうした真理が改めて説かれております。確かに古くから説かれてきた真理なのですが、地上人類は今新しい進化の周期を迎えて、その古い真理を改めて必要としているのです。一宗一派に片寄った古い、勿体ぶった、因習的教義へは最早何の敬意も払う必要はありません。権威に対して盲目的に従う必要はありません。ドグマを崇拝する必要はもうなくなりました。
 そうした類のものは全て無力であることが証明され、人間は成長せんとする精神と進化せんとする魂の欲求を満たしてくれるものを求めてまいりました。こうした霊力の顕現に伴って必ず人生の純粋に物的な分野においてもより大きな覚醒が生まれ、同時に、正義と同胞精神が世界の隅々にまで行き渡って欲しいとの願いが生じるのは、その為なのです。
 それは一ヶ月や一年はおろか、十年や百年でも達成されないでしょう。しかし、人類は自ら目覚め、真の自我を見出していかねばならないという宿命的法則があります。従って、重責を担う立場の人、人類に道標を残して行くべき使命を負う者は、それを忠実にそして立派に果たすべき重大な任務があることになります。
 いつの日かあなたも、あなたご自身の〝事務報告〟を提出しなければならない時がまいります。あなただけではありません。全ての人間が自分自身の事務報告の提出を要請されます。その際、あたら好機を逸したことに対する後悔を味わうこともありましょうし、為すべきことを為し遂げたとの自覚に喜びを味わうこともありましょう。
 相変わらず絶望感が支配し暗黒の多い地上世界にあっては、光明と真理の為に闘う人々が不安や懸念を抱くようなことがあってはなりません。強力な霊力、宇宙最大のエネルギーがその献身的な仕事を通して守護し援助してくれているからです。正しい道を歩んでいる限り勝利はきっとあなたのものとなります」

 この後、その編集長の同僚で最近他界したばかりの霊からのメッセージを伝えてから、再び本題に戻ってこう語った。
 「私があなた方の世界での仕事を始めてから随分長い年月になります。あれやこれやと煩わしい問題が生じることにもすっかり慣れました。そして、あなたのようなお仕事をしておられる方が来てくださり私が少しでもお役に立つことも嬉しく思っております。それが私を通じて霊の力が働いていることの証であるからこそ嬉しいのです。これまでの全体験によって私は、霊の力はその忠実な通路さえあればきっと事を成就していくことを学んでおります。
 いかなる反抗勢力、いかなる敵対行為、いかなる中傷、いかなる迫害をもってしても、悲しみに満ちた人々の魂の琴線に触れ、病める身体を治し、迷える人々に光明を見出す道を教え、人生に疲れた人々を元気付けることの出来る献身的な通路がある限り、その仕事が挫折することは決してありません。
 本来なら、こうしたことはとうの昔に教会という権威を担った人々によって成就されていなければならないところです。それが現実には成就されていません。というよりは、その肝心なものが置き去りにされているのです。そして今や霊的にも物的にも、その担い手は教会とは何の縁もない普通一般の人達となっております。もし教会関係の人々が自分達の本来の存在意義を自覚すれば、もし自分達の本質がその神性にあることを理解すれば、そしてもし自分の身の回りに存在する莫大な知識の宝庫、霊力、エネルギーを自覚すれば、それを活用して新しい世界をわけなく建設することが出来るところなのですが・・・
 しかも、それは是が非でも成就して頂かねばならないのです。なぜならば私達霊界の実情を言わして頂けば、毎日毎日引きも切らず地上から送り込まれて来る不適応者、落伍者、放蕩者、社会のクズともいうべき人達-要するに何の備えもない、何の用意もない、何の予備知識も持たなくて一から教えなければならない人間の群には、もううんざりしているのです。本当はこちらへ来て直ぐからでも次の仕事に取り掛かれるよう、地上での準備をしておくべきなのですが、現実にはまるで生傷の絶えない子供を扱うように看護し、手当をしてやらねばならない者ばかりなのです。
 そういう次第で、あらゆる形での霊的知識の普及が是非とも必要です。人類が霊的事実を理解してくれないと困るのです。真理に導かれる者は決してしくじることはありません。真理は理解力をもたらし、理解力は平和と愛をもたらし、心に愛を秘めた者には解決出来ない問題は何一つありません。人類の指導者が直面するいかなる難題も、霊的真理と霊的叡智と霊的愛があればきっと消滅していくものです。私の見解に賛同してくれますか?」
 「ええ、勿論ですとも」
 「その目的の為に、あなたはあなたなりの方法で、私は私なりの方法で、その他真理を幾らかでも普及出来る立場にある人全てが、その人なりの方法で努力しなければなりません。そうすることが世界を、或いは少なくとも自分の住む地域を豊かにすることになるのです」

 この後編集長と交霊会の常連との間で、その他界したジャーナリストの人物評に花が咲いた。するとシルバーバーチがこう述べた。
 「皆さんは人間が他界して私達の世界へ来ると、その人の評価の焦点が全く異なったところに置かれることをご存知ないようですね。皆さんは直ぐに地上時代の地位、社会的立場、影響力、身分、肩書といったものを考えますが、そうしたものはこちらでは何の意味もありません。そんなものが全て剥ぎ取られて魂が素っ裸にされた後、身を纏ってくれるのは地上で為した功績だけです。
 しかしこの方は地上で本当に人類の為に貢献されました。多くの人から愛されました。その愛こそが死後の救いとなり、永遠の財産となっております。金銭は全て地上に置き去りにしなければなりません。地上的財産は最早自分のものでなくなり、愛、情愛、無私の行為だけが永遠の資質となるのです。魂が携えて行くのはそれだけであり、それによって魂の存在価値が知れるのです。
 従って同胞からの愛と尊敬と情愛を受ければ、それが魂を大きくし、進化を促すことになります。真の判断基準によって評価される界層においては、そうした要素が最も重要視されます。肝心なのはいかなる人間であるかであり、何を為してきたかです」

 この後新聞とジャーナリストのあり方について長い議論があり、その中で編集長がシルバーバーチに尋ねた。
 「他界したジャーナリスト達はその後も我々のことを心配してくれているでしょうか」
 「心配しておられます」
 「でも資金の面についてではないでしょう」と言ってから、他界したばかりの同僚はその生涯を捧げた新聞社のことを案じてくれているかどうかを尋ねると、シルバーバーチは、まだ他界して間がないので地上のことをあれこれと案じているだろうけど、その内霊界の事情に順応して行くでしょうと語って、最後にこう締め括った。
 「地上で学ぶべきことは人の為に役立つということ、これに尽きます。それは様々な能力によって実践出来ます。光明を捧げることもそうですし、生活に彩りを添えてあげるのもそうですし、しょげ返っている人を元気付けてあげるのもそうですし、真理を見出す道案内をしてあげるのもそうです。人の為に役立つ手段は幾らでもあります」
       
       
自殺してはならない霊的な理由 自殺志願者は、まず[自殺の霊的知識]を読んで!
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