(シルバーバーチの霊訓第四巻・巻末付録・訳者近藤千雄解説)

 本書は Silver Birch Anthology (シルバーバーチ名言集-1955年初版-)の全訳である。全訳と言っても、編者のネイラー氏がそれまでの霊言の中から〝珠玉の訓え〟と言えるものを集めたもので、その三分の一以上に相当する部分が邦訳シリーズの前三巻に出ているので、当然それは削除せざるを得ず、その穴埋め(といっては語弊があるが)の為に前三巻の原書でカットしておいたもの、及びオースチン編 Teachings of Silver Birch から関連した部分を抜粋してある。このことに関しては本文の「まえがき」の末尾でも「訳者注」として述べておいた。原書を読まれる方が不審に思われるのではないかと思ったからであるが、ついでにもう一つ念の為に付け加えさせて頂けば、編者が霊言のオリジナル原稿(速記録とテープ)から収録する時、編者自身の判断で部分的に削除したり段落を適当につけている(週刊の「サイキックニューズ」月刊の「ツーワールズ」に転載されているものと照合するとそれが判る)ので、私が訳す際にも所々私の判断によって段落を変えたり削除されているものを付け加えたりしている箇所があることである。
 とにかく私は公表された限りのシルバーバーチの霊言を三十年間近く書物と雑誌とテープを通じて徹底的に親しみ、1981年には霊媒のバーバネルに直接面会してその肉声にも接して、それが私の脳裏に焼き付いている。今も折をみてカセットテープを聞いてその感じを忘れないようにしながら訳している。大袈裟に、そして、いささか僭越(せんえつ)のそしりを覚悟の上で言えば、翻訳に携わっている時の私はシルバーバーチに成り切っていると理解して頂きたい。(なぜか正座して威儀を正さないと訳せない)
 さて、本文の中で〝巻末「解説」参照〟と記した部分が二箇所ある。両者は表面的には関係ないようで実は重大な関連性があるので、ここで解説しておきたい。
 一つは四章の次の一文である。「私が残念に思うのは本来霊的存在であるところの人間があまりに霊的なことから遠ざかり、霊的法則の存在を得心させる為に私達がテーブルを上げてみせたりコツコツと叩いてやらねばならなくなったことです」
 これは所謂物理的心霊現象のことで、事実シルバーバーチの交霊会でも物理霊媒を呼んで種々の心霊現象を行っていた。心霊治療も行っていた。その最高責任者、総監督の立場にあったのがシルバーバーチであるが、物理現象の演出に直接携わるのはそれを専門とする霊団であり、心霊治療にも治療霊団が組織されていた。
 太古より霊的啓示には物理現象と病気治療はつきもので、イエスも盛んに活用している。それを聖書では〝しるしと奇跡〟 Signs and Wonders と表現しているが、実際は聖書に記されているより遙かに多く起きていた筈である。ところが霊界通信の真実性を確信し始めた人はとかく現象的なものを軽蔑し始める傾向があり、奇妙なことにキリスト教徒が最も傾向が強いが、これは間違いであると同時に極めて危険なことでもある。
 確かに物理的現象に直接携わるのは低級霊であり、モーゼスの『霊訓』の中でイムペレーターが述べているところによれば、所謂地縛霊が漸く目を覚まして修養と償いの為に高級霊の指導下で働いていることが多いようである。言うなれば〝更生の場〟を与えられているわけである。こうした場合は監督に当たる霊、所謂支配霊が高級であるから危険性はまず無い。
 それよりも意外に陥り易い危険は、寧ろそういうものを軽蔑して自分自身の、或いは自分が所属するサークルないし宗教団体の霊言や自動書記のみを絶対のものとし、その霊媒の口ないし手を通して得られたものは何も彼も真実のもの絶対のもの高級なものと決めてかかってしまうことである。
 そういう間違った考えが定着する原因はどこにあるかと言えば、心霊現象の基本、つまり精神的現象と物理的現象の原理(心霊学)についての認識が十分でないことにある。このことが同じく四章の一文の裏面の事情と繋がって来る。「私達は人類を破滅の道へ追いやろうと画策している悪霊の集団ではありません」
 これはキリスト教界がスピリチュアリズムのことをそう決め付けるので、それを念頭に置いて述べているのであるが、キリスト教と切り離して考えても、心霊問題に関わる者が忘れてならない大切なことを暗々裏に述べている。つまり現実にそういう意図をもって画策している悪霊・邪霊の集団がうようよしているということである。
 先のイムペレーターもその点を再三にわたって指摘しているし、オーエンの『ベールの彼方の生活』の中でも、通信を横取りしようとして隙を狙っている連中がいるので油断がならないと述べている。そういう霊は上手く横取りした通信内容をさも自分のものであるかのように巧みに利用して、いかにも立派な高級霊であるかの如く振る舞い、その内通信の中にそれとなく偽りの事実を混入して問題を生じさせ、〝それみろ。霊界通信なんて全部誤魔化しなんだ〟という風評を立てさせ、そしてほくそ笑む。なぜそんなことをするかと言えば、高級神霊による計画推進を挫折させんとしているまでで、別に深い意図はない。
 では霊界通信の真偽をどうやって見分けるかということが問題となるが、シルバーバーチは常に批判的精神をもって理性的に判断するように-砕けた言い方をすれば、とことん疑ってかかれと説く。確かにこうした活字になってしまえばそれしかないが、実際にその場に立ち会った時は、一種の直感力が何よりの武器となる。その雰囲気から読み取るのである。
 実は霊媒のバーバネル亡き後、サイキックニューズ社は早速別の霊言霊媒を探し出して、その霊言を心霊誌に連載し始めた。私もそれを読んで、正直のところ最初は中々の内容だと思った。そしてその後の発売されたカセットを直ぐに取り寄せて、大きな期待をもって聞いたが、ものの一分も聞き続けることが出来なかった。直感的にこれは偽物という気がしたのである。念の為カセットを裏返して後半の部分を聞いてみたが、やはり一分と聞く気になれなかった。それから一週間程してもう一度気を取り直して三分間程聞いてみたが、やはりその雰囲気からは本物という判断は出来なかった。果たせるかな、その後間もなくしてその霊媒のトリックが暴かれて、それきり連載も中止された。そして代わって連載されたのは又もやシルバーバーチであった。古い霊言集からの抜粋である。
 本物にはどうしようもない強みがある。英国新聞界の法王とまで呼ばれ、へそ曲がりの毒舌家として世界的に知られたハンネン・スワッハー(シルバーバーチの交霊会は当初はこの人の家で催され司会もこの人が務めた)すら手も足も出なかった程である。そのスワッハーがこう述べている。
 「が、一旦活字になってしまうとシルバーバーチの言葉もその崇高さ、温かさ、威厳に満ちた雰囲気の片鱗しか伝えることが出来ない。出席者は思わず感涙にむせぶことすらあるのである。シルバーバーチがいかに謙虚に喋っても、高貴にして偉大なる霊の前にいることを我々はひしひしと感じる。決して人を諌めない。そして絶対に人の悪口を言わない」
 内容的にいいことを言っているというだけでは霊言としての真価は分からない、ということが以上のことから理解して頂けると思う。問題は雰囲気であり風格である。私の翻訳もシルバーバーチという古代霊の風格を出すことに一番苦心している。原書を読まれる方もそれが読み取れるまで読み込んで頂きたい。文法や構文に振り回されていては本当の意味は読み取れない。これはシルバーバーチに限ったことではないが・・・。
 知識は力なりという。これから幽明交通が一層盛んになっていくにつれて次々と霊界通信なるものが輩出されることであろうが、その真偽性、純粋性、優秀性を適確に判断出来るようになるには、スピリチュアリズムの全体像を理解すると同時に、その基本であるところの心霊学を勉強することが、直感的判断力を自然に養ってくれると信じる。といって心霊学を好奇心からいじくり回していては何にもならない。こうした言わば落とし穴と誘惑に満ちた世界に踏み入って宝を探す為の学問的基盤として、心霊現象の原理つまり霊界側がどういう形で物的世界に働きかけているのかを知ることが必要不可欠であることを指摘しておきたい。
       
       
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