まえがき

 前著『新しき啓示』(第一部)で私は、迫り来る人類の意識革命の曙光のようなものについて述べた。本書では既に太陽は高く昇り、見えざる世界との関係も一段と明確になってきた。私はそれより詳細に、そしてより広汎にわたってお目にかけようと思う。
 今、ペンを手にして遠く人類の未来を思いやる私の脳裏に、かつてアルプス山脈の中で岩と雪だけの荒涼とした頂上から、遠くイタリヤの方角を見渡した時のことが甦って来る。ロンバルディアがまばゆい太陽の光の中で青い湖と緑の山並の一大パノラマとなって広がり、その遠い果ては黄金色のモヤとなって地平線を包み込んでいた。
 新しい啓示によって、今この荒れ果てた地上界の彼方に、約束された素晴らしい世界が待ち受けていることが明らかとなった。先駆者達は、もう、とうの昔にその峠を越えている。自ら目を被う者はいざ知らず、目をしっかりと見開いている者には、その素晴らしい世界が鮮明に見えている。最早その事実の認識を妨げるものは何一つ存在しない。
 私の同志の一人であるV・C・ディザーティス氏は、大乱の後にいつも囁かれる〝救済〟は、この度は霊界から地上界への下降の働きかけではなく、地上界から霊界へ向けての上昇の努力によって、両者が融合することによってのみ達成されることになろうと述べている。その当否は別として、少なくとも興味深い考えであることは確かである。
 しかし私の考えでは、そこまで大掛かりな逆転は無理としても、我々は既に科学と宗教について、そして人生そのものについての考え方を、根底から改めさせるに十分な知識を手にしている。その変革がどういう形を取るか、そして又、その根拠と証拠とはいかなるものか、それを本書で述べてみたいと思っている。

 1919年7月 A・コナン・ドイル