無論今では、その後のスピリチュアリズムの飛躍的発展によって、1848年のハイズヒル村で起きた現象の詳しいメカニズムが明らかとなっている。当時は極めて特殊な異常現象のように思われていたが、よく分かってみると、宇宙の全ての現象と同じく、きちんとした法則と条件の重なり合いによって生じていたのである。
 簡単に言えば、霊界側に地上的波動をもつスピリットがいて、彼等は地上の霊媒的素質をもつ人間から発散される特殊なエネルギーを活用する方法ないし技術を心得ている。一方、地上にそうした霊媒的素質をもった人間がいて、その両者が現象の起き易い条件下で揃うということである。譬えてみればカメラのシャッターを押すタイミングが、被写体とそれを撮る側との間でピタリ一致したようなものである。
 それと同じ効果を実験室で求めて見事に成功した最初の科学者が第一部で紹介したクローフォード博士で、『心霊現象の実在』『心霊科学の実験』の二冊に纏めている。その中で博士は、発生した物理現象の重量と同じ重量だけ霊媒の体重が減ることを確認している。結局、霊媒現象の秘密は、スピリットが霊媒のもつ特殊エネルギーを利用している点にある、ということになる。
 では、一体なぜ同じ人間でありながら、そうした体質の人間とそうでない人間とがいるのであろうか。これは、音楽的天才と音痴とがいるのはなぜかという疑問と同じで、その理由は分からない。当初は心霊現象といえば物理的なものと思われていて、テーブル現象(人間が手を触れなくても宙に浮く)や楽器演奏(人間が手を触れなくても演奏される)といった他愛ないものでありながらも、目に見え耳に聞こえるものばかりに注意が向けられた。
 その単純さが詐術(トリック)行為を生む原因ともなったのであるが、その後、それとは別に、知的ないし精神的要素の強い心霊現象もあることが分かって来た。自動書記・霊視・霊聴・直接談話・入神談話等々、キリストやその弟子達が見せたのと同じものであり、それも全て、たった一つの霊的エネルギーの顕現であることが明らかになってくる。
 詐術行為を助長した原因の一つとして、実験室を暗くする必要があったことが挙げられるが、それは必ずしも絶対的条件ではなく、この後詳しく紹介するD・D・ホームなどは、いつでもどこでもやってみせた。それはホームの能力の偉大さを物語るものではあるが、同時に、明るい部屋より暗い部屋の方が、又、じめじめした天候よりもカラッとした天候の方が、良い現象が見られるというのも事実である。
 そこに、心霊現象もかなり物質的要素が関与していることの証拠があると言えるであろう。無線電信も昼間より夜間の方が鮮明であり、雨の日は聞こえにくいという事実は右の事実を裏付けているし、心霊実験では赤色光を使うのが一番害が少ないとされている事実は、写真家の体験と共通している。