心霊写真というのは、普通に撮った写真に他界した筈の人物像が写る現象で、記録を辿ると米国ではW・H・マムラー、英国ではF・A・ハドソンが最初に撮ったことになっている。
 マムラーが撮った有名な心霊写真にリンカーン大統領が写っているものがある。噂を聞いてリンカーン未亡人が匿名で訪れて撮影してもらったところ、左肩に手を置いた大統領が写っていた。マムラーは最初そうとは気づかず、出来上った写真を夫人に見せたところ、居合わせた別の女性が、
 「それ、リンカーン大統領によく似てますわね」と言った。そこで夫人が、
 「ええ、私はリンカーンの家内でございます」と言ったので、それで初めてマムラーも事実を知ったという。原板には息子の姿も写っているが、うっすらとしていて現像出来ないという。
 スピリチュアリズムの観点から本格的に心霊写真と取り組んだのは、イングランド北西部のクルー市に住むウィリアム・ホープである。ホープは元々職工で、ある日の昼の休憩中に仲間の一人をレンガ塀を背にして撮ってやったものに、その仲間とは別に一人の女性の姿が写っていて、しかもその姿を通して背後のレンガ塀が見える。本人に見せると、それはかなり前に亡くなった姉だが、どうやってこんな写真を拵えたのかと訊ねられた。その時のことをホープはこう書いている。

 「当時はまだスピリチュアリズムのことは何も知らなかった。工場の仲間達にそれを見せたところ、その中の一人が〝それは心霊写真というやつだよ。もう一度同じ場所で同じカメラで撮ってみるといいよ〟と言った。その通りにやってみたら、やはり同じ女性が写っていた。しかも今度は小さい子供を連れていた。不思議なことがあるものだと思い、興味が募って行った」

 やがてホープは英国国教会の副監督でスピリチュアリズムに理解のあったコリー氏の勧めもあって心霊写真を専門的に研究するようになり、間もなく同市に住む霊能者のバックストン女史と組んで〝クルー・サークル〟という心霊写真専門の機関を設立した。ウィリアム・クルックス教授や牧師のチャールズ・トウィーデールもそこを訪れて実験し、文句の付けようのない成果を収めている。
 私もこのサークルが撮影した写真数十枚を検証しているが、私の知っている人で、既に他界しているに間違いない人物の写真が何枚もあり、しかも、それと同じ写真は生存中に撮ったことはないことが確認されている。その中には私の両親と戦死した息子が一緒に写っているのがある。息子は地上時代より遙かに幸せそうで、生き生きとし存在感がある。