体外遊離という現象がある。気が付くと自分の肉体の側に自分が立っていたり、すぐ上の辺りを漂っていたという体験や、遠く離れた場所へ行って見たり聞いたりした話をして、それが事実だったという体験もある。私自身も、歯科医院で麻酔をかけられて昏睡中に、妻と子供達が車に乗っているところを鮮明に見て、後でそれが事実だったことを確認している。
 又、気絶しかかっている時とか死にかかっている時に、遠くにいる人に姿を見せた話は実に多い。これを〝生者の幻影〟などと呼ぶが、マイヤースとガーニーの二人が収集して分類したものだけでも数百例を数える。それを睡眠中などに意識的に行い、特定の場所を決めて訪問して帰って来ることが出来る人がいる。こうした夥(おびただ)しい例は、人間が肉体以外に目に見えない素材で出来たもう一つの身体を持っていることを裏付けていると言えるであろう。
 英米で出版社を経営しているアイザック・ファンク氏は『心霊現象の謎』という本を著している。その中に実に興味深い米国人医師の体験が載っている。
 フロリダの自宅での出来事であるが、その医師が持病の強硬症の発作で気を失っている間に、ふと気が付くと、側に自分の身体が横たわっている。が、それを見ている自分の身体も、倒れている身体とそっくりであることに気付いた。
 その時ふと、遠くにいる友人のことが頭に浮かんだので、行ってみようと思ったら、間もなくその友人のいる部屋に来ていた。近付いてその友人を見つめると、その友人も自分の存在に気付いたような眼差しで見返した。その後すぐに自分の家に引き返してみると、相変わらず肉体は硬直したままの状態で横たわっている。そこでその医師は、このままずっと肉体から離れたままでいようか、それとも戻るべきだろうかと真剣に考えた。が、やはりまだ死ぬべきではないと思って肉体に戻ったという。
 肉体に戻って意識を取り戻すとすぐ、さっきの友人の所へその事実を書いた手紙を送った。するとそれと入れ違いに、その友人からも手紙が届いて、〝君が部屋に来ているような感じがした〟と書いてあったという。時刻も丁度その頃になる。その友人は当の医師からの手紙を読んでからそう書いたのではない。入れ違いに届いたのである。そこが肝心なところである。
 では、一体この第二の身体は何なのであろうか。そして又、新しい霊的啓示の中でどう位置付けられるのであろうか。
 何なのか-この定義は極めて難しい。が、実体験として霊視能力者の目にはありありと映じているし、霊聴能力者にはその声が生々しい響きをもって聞こえているし、心霊写真では確かにフィルムに感光している。このことに関して私は自信を持って断言出来る証拠を手にしている。