死後の世界に関する情報を伝えてくれるものとしてまず第一に挙げたいのは、現実に今その世界で生活しているスピリットから送られて来たメッセージである。既に述べたことだが、この新しい啓示は次の三つの点においてその信憑性が十分に裏付けられていると考えてよい。
 一つは、バイブルにいう〝しるし〟が実験会における心霊現象という形で伴っていること。もう一つは、多くの場合、スピリットが指摘する地上時代の事実が正確であり、霊媒がテレパシーや無意識の記憶によって知っていたという説明では、到底片付けられないものであること。そして三つ目が、複数の霊媒から色々な手段で個別に入手されたものであるにもかかわらず、その内容は、完全にとは言わないまでも、極めて類似しているという事実である。
 特に注目すべきことは、死後のある一定段階から先のことになると、意見がまちまちになってくることで、やはり、スピリットになったからといって直ぐに全知全能になるわけではなく、我々と同じく、高等な次元のことに関して深く瞑想する必要があるということである。従って、例えば生まれ変わり(再生・輪廻転生)の問題になると、見解に大きな食い違いが見られる。
 ただ、私見によれば、総体的に言えば再生を否定する見解の方が多いようである。しかし、数こそ少ないが、これを肯定する見解を述べるスピリットは、他の問題に関して極めて信頼性に富むことを述べている。その史実に鑑みて、この問題に関しては柔軟な態度を持つべきであると考える。
 さて、本論に入る前に、二番目に挙げた事実を裏付ける良い例を紹介しておきたい。これは、スコットランドの港町グラスゴーに住むフェニックス氏を霊媒とする直接談話の交霊会の記録で、司会者(さにわ)はスピリチュアリズムの世界では知らぬ者のないアーネスト・オーテン氏である。スピリットの声はメガホンの中から出ていた・・・

声「今晩は、オーテンさん」
オーテン「今晩は。どなたでしょうか」
声「ミルと申します。あなたは私の父をご存知です」
オーテン「いいえ、私はそういうお名前の方は存じませんが・・・」
声「いえ、ご存知です。先日、父と話をなさったばかりです」
オーテン「そうでした。今思い出しました。ほんの行きずりのご縁でお会いしました」
声「父に私からのメッセージを届けて頂きたいのですが・・・」
オーテン「どんなことでしょう?」
声「先週の火曜日の真夜中の出来事を父は〝気のせい〟にしていますが、そうではないと、ただそれだけお伝えください」
オーテン「分かりました。そう伝えましょう。あなたは他界なさってもう長いのですか」
声「かなりになりますが、こちらの時間はそちらの時間とは違いますので・・・」
オーテン「地上では何をしておられましたか」
声「軍医です」
オーテン「死亡の原因は?」
声「軍艦に乗っていて被弾しました」
オーテン「他に何かご用は?」
 この質問に対する返答は、ベルディの歌劇〝トロバトーレ〟の中のジプシーの歌を口笛で吹いた。音程は正確で、その後ダンスのクイックステップの曲が聞こえ、
「これは父へのテストケースです」
と述べた。
 オーテン氏は実験の後すぐさまミル氏を訪ねて事の次第を述べた。ミル氏はスピリチュアリズムには関心のない方であるが、オーテン氏が述べたことは全て正確であることを認めた。息子さんの死亡原因も本人の言った通りだった。火曜日の出来事というのは、ミル氏が書斎で仕事をしていると、息子が大好きだった〝トロバトーレ〟の中のジプシーの歌が聞こえた。部屋中を調べてみたが、そんな歌声のする原因が突き止められないので、〝気のせい〟だと思った。クィックステップの曲は息子さんがよくピッコロで演奏していたもので、ミル氏はそのテンポのステップが出来なくて、いつも家族のお笑い草にされたという。
 この例を挙げたのは、このようにスピリットの述べた地上時代のことが正確であれば、そのスピリットが今生活している世界についての叙述も真剣に受け止めてしかるべきだということを申し上げる為である。もっとも、何しろ我々には直接の確認のしようがないわけであるから、最終的には、多くの霊媒を通して入手したものを比較検討するしかないことは言うまでもない。