自殺ダメ


 (自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)

 先刻も申し上げた通り、私は小娘に導かれて、あの華麗な日本間に通され、そして薄絹製の白の座布団を与えられて、それへ座ったのでございますが、不図自分の前面のところを見ると、そこには別に一枚の花模様の厚い座布団が敷いてあるのに気付きました。『きっと乙姫様がここへお座りなさるのであろう』-私はそう思いながら、乙姫様に何と御挨拶を申し上げてよいか、色々と考え込んでおりました。
 と、何やら人の気配を感じましたので頭をあげてみますと、天から降ったか、地から湧いたか、モーいつの間にやら一人の眩い程美しいお姫様かキチンと設けの座布団の上にお座りになられて、にこやかに私の事を見守ってお出でなさるのです。私はこの時ほどびっくりしたことは滅多にございませぬ。私は急いで座布団を外して、両手をついておじぎをしたまま、暫くは何と御挨拶の言葉も口から出ないのでした。
 しかし、玉依姫様の方では何処までも打ち解けた御様子で、尊い神様と申し上げるよりは寧ろ高貴の若奥方と言ったお物腰で、色々と優しいお言葉をかけてくださるのでした。-
 『あなたが龍宮へお出でなさることは、かねてから通信がありましたので、こちらでもそれを楽しみに大変お待ちしていました。今日は私が代わってお会いしますが、この次は姉君様が是非お目にかかるとの仰せでございます。何事も全てお心易く、一切の遠慮を棄てて、訊くべきことは訊き、語るべきことは語ってもらいます。あなた方が地の世界に降り、色々と現界の苦労をされるのも、つまりは深き神界のお仕組で、それが私達にも又となき良い学問となるのです。きけばドウやらあなたの現世の生活も、中々楽なものではなかったようで・・・・』
 いかにもしんみりと、溢れるばかりの同情を以って、何くれと話しかけてくださいますので、いつの間にやら私の方でも心の遠慮が除り去られ、丁度現世で親しい方と膝を交えて、打ち解けた気分でよもやまの物語に耽ると言ったようなことになりました。帰幽以来何十年かになりますが、私がこんな打ち寛いだ、和やかな気持を味わったのは実にこの時が最初でございました。
 それから私は問われるままに、鎌倉の実家のこと、嫁入りした三浦家のこと、北条との戦闘のこと、落城後の侘住居のことなど、有りのままにお話しました。玉依姫様は一々頷きながら私の物語に熱心に耳を傾けてくだされ、最後に私が独り寂しく無念の涙に暮れながら若くて亡くなったことを申し上げますと、あの美しいお顔をばいとど曇らせて涙さえ浮かべられました。-
 『それはまァお気の毒な・・・あなたも随分辛い修行をなさいました・・・・』
 たッた一言ではございますが、私はそれを聞いて心から有り難いと思いました。私の胸に積もり積もれる多年の鬱憤もドウやらその御一言で綺麗に洗い去られたように思いました。
 『こんなお優しい神様にお会いすることが出来て、自分は何と幸福な身の上であろう。自分はこれから修行を積んで、こんな立派な神様のお相手をしてもあまり恥ずかしくないように、一時も早く心の垢を洗い清めねばならない・・・・』
 私は心の底で固くそう決心したのでした。
       
       
自殺してはならない霊的な理由 自殺志願者は、まず[自殺の霊的知識]を読んで!
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