自殺ダメ


 (自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)

 前回の龍宮行きのお話は何となく自分にも気乗りが致しましたが、今度はドーも億劫で、気後れがして、成ろうことなら御免を蒙りたいように感じられてなりませぬ。帰幽後生前の良人との初対面の物語・・・・婦女の身にとりて、これ程の難題は滅多にありませぬ。さればとて、それが話の順序であれば、無理に省いてしまう訳にもまいりませず、本当に困っているのでございまして・・・。ナニ成るべく詳しくありのままを話せと仰るか。そんなことを申されると、尚更談話がし難くなってしまいます。修行未熟な、若い夫婦の幽界に於ける初めての会合-とても他人さまに吹聴するほど立派なものでないに決まっております。お聞き苦しい点は成るべく発表なさらぬようくれぐれもお頼みしておきます・・・。
 いつかも申し上げた通り、私がこちらの世界へ参りましたのは、良人よりも一年余り遅れておりました。後で伺いますと、私が死んだことは直ぐ良人の許に通知があったそうでございますが、何分当時良人は厳しい修行の真っ最中なので、自分の妻が死んだとて、とても直ぐ会いに行くというような、そんな女々しい気分にはなれなかったそうでございます。私は又私で、何より案じられるのは現世に残しておいた両親のことばかり、それに心を奪われて、自分よりも先へ死んでしまっている良人のことなどはそれほど気にかからないのでした。『時節が来たら何れ良人にも会えるであろう・・・』そんな風にあっさり考えていたのでした。
 右のような次第で、帰幽後随分永い間、私達夫婦は分かれ分かれになったきりでございました。無論、これが全ての男女に共通のことなのかどうかは存じませぬ。これはただ私達がそうであったと申すだけのことで・・・。
 そうする中に私は岩屋の修行場から、山の修行場に進み、やがて龍宮界の訪問も済んだ頃になりますと、私のような執着の強い婦女にも、幾分安心が出来て来たらしいのが自覚されるようになりました。すると、こちらからは別に何ともお願いした訳でも何でもないのに、ある日突然神様から良人に会わせてやると仰せられたのでございます。『そろそろ会ってもよいであろう。汝の良人は汝よりもモー少し心の落ち着きが出来て来たようじゃ・・・・』指導役のお爺さんが、いとど真面目くさってそんなことを言われるので、私は気まりが悪くて仕方がなく、覚えず顔を真紅に染めて、一旦はお断りしました。-
 『そんなことはいつでも宜しうございます。修行の後戻りがすると大変でございますから・・・・』
 『イヤイヤ一度は会わせることに、先方の指導霊とも手筈を決めて置いてある。良人と会った位のことで、直ぐ後戻りするような修行なら、まだとても本物とは言われぬ。こんなことをするのも、やはり修行の一つじゃ。神として無理には進めぬから、有りのままに答えるがよい。どうじゃ会ってみる気はないか?』
 『それでは、宜しきようにお願い致しまする・・・・』
 とうとう私はお爺さんにそう御返答をしてしまいました。