自殺ダメ


 (自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)

 それから程経て、敦子さまが死んだことだけは何かの機会に私に判りました。が、その時はそう深くも心にとめず、いつか会えるであろう位に軽く考えていたのでした。それより又何年経ちましたか、或る日私が統一の修行を経て、戸外に出て、四辺の景色を眺めておりますと、私の守護霊・・・・この時は指導役のお爺さんでなく、私の守護霊から、私に通信がありました。『ある一人の女性が今あなたを訪ねて参ります。年の頃は四十余りの、大そう美しい方でございます』私は誰かしらと思いましたが、『ではお目にかかりましょう』とお答えしますと、程なく一人のお爺さんの指導霊に連れられて、よく見覚えのある、あの美しい敦子さまがそこへひょっくりと現れました。
 『まァお久しいことでございました。とうとうあなたと、こちらでお会いすることになりましたか・・・・』
 私が近付いて、そう言葉をかけましたが、敦子さまは、ただ会釈をしたのみで、黙って下方を向いたり、顔の色などもどこやら暗いように見えました。私はちょっと手持ち無沙汰に感じました。
 すると案内のお爺さんが代わって簡単に挨拶してくれました。-
 『この人は、まだ御身に引き合わせるのには少し早過ぎるかと思われたが、ただ本人が是非御身に会いたい、一度会わせてもらえば、気持が落ち着いて、修行も早く進むと申すので、御身の守護霊にも頼んで、今日わざわざ連れて参ったような次第・・・御身とは生前又となく親しい間柄のように聞き及んでいるから、色々とよく言い聞かせてもらいたい・・・・』
 そう言ってお爺さんは、そのままプイと帰ってしまいました。私はこれには、何ぞ深い仔細があるに相違ないと思いましたので、敦子さまの肩に手をかけて優しく申しました。-
 『あなたと私とは幼い時代からの親しい間柄・・・・殊にあなたが何回も私の侘しい住居を訪れて色々と慰めてくだされた、あの心尽くしは今も嬉しい思い出の一つとなっております。その御恩返しというのでもありませぬが、こちらの世界で私の力に及ぶ限りのことは何なりとしてあげます。どうぞ全てを打ち明けて、あなたの相談相手にして頂きます。兎も角もこちらへお入りくださいませ。ここが私の修行場でございます・・・・』
 敦子さまは最初はただ泣き入るばかり、とても話をするどころではなかったのですが、それでも修行場の内部へ入って、そこの森(しん)とした、清らかな空気に浸っている中に、次第に心が落ち着いて来て、ポツリポツリと言葉を切るようになりました。
 『あなたは、こんな神聖な境地で立派な御修行、私などはとても段違いで、あなたの足元にも寄り付けはしませぬ・・・』
 こんな言葉をきっかけに、敦子さまは案外すらすらと打ち明け話をすることになりましたが、最初想像した通り、果して敦子さまの身の上には、私の知っている以上に、色々込み入った事情があり、そして結局とんでもない死に方-自殺を遂げてしまったのでした。敦子さまは、こんな風に語り出でました。-
 『生前あなたにも、あるところまでお漏らしした通り、私達夫婦の仲というものは、上辺とは大変に違い、それはそれは暗い、冷たいものでございました。最初の恋に破れた私には、元々よそへ縁づく気持などは少しも無かったのでございましたが、ただ老いた両親に苦労をかけては済まないと思ったばかりに、死ぬるつもりで体だけは良人(おっと)に捧げましたものの、しかし心は少しも良人のものではないのでした。愛情の伴わぬ冷たい夫婦の間柄・・・他人さまのことは存じませぬが、私にとりて、それは、世にも浅ましい、つまらないものでございました・・・。嫁入りしてから、私は幾度自害しようとしたか知れませぬ。私が、それもえせずに、どうやら生き永らえておりましたのは、間もなく私が身重になった為で、つまり私というものは、ただ子供の母として、惜しくもないその日その日を送っていたのでございました。
 こんな冷たい妻の心が、何でいつまでも良人の胸に響かぬ筈がございましょう。ヤケ気味になった良人はいつしか一人の側室を置くことになりました。それからの私達の間には前にも増して、一層大きな溝が出来てしまい、夫婦とはたた名ばかり、心と心とは千里もかけ離れているのでした。そうする中にポックリと、天にも地にもかけ換えのない、一粒種の愛児に先立たれ、そのまま私はフラフラと気が触れたようになって、何の前後の考えもなく、懐剣で喉を突いて、一図に子供の後を追ったのでございました・・・・』
 敦子さまの談話を聴いておりますと、私までが気が変になりそうに感ぜられました。そして私には敦子さまのなされたことが、一応もっともなところもあるが、さて何やら、しっくり腑に落ちないところもあるように考えられて仕方がないのでした。
       
       
自殺してはならない霊的な理由 自殺志願者は、まず[自殺の霊的知識]を読んで!
[自殺の霊的知識]へ