自殺ダメ


 (自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)

 これは[『霊訓』W・S・モーゼス著 浅野和三郎訳]に付録として付いていた文章です。


 この復刻版の原本は、昭和13年11月、心霊科学研究会から出版されたものである。

 ステッドの通信 序説

今回心霊文庫の第六篇として『ステッドの通信』を選びましたが、これは確かに大方の期待に添った処置と考えます。何となれば近年欧米に現れつつある無数の霊界通信中でも、この通信は嶄然(ざんぜん)として一頭地を抜いている観がありますから・・・。
 御承知の通りウィリアム・テイ・ステッドは生前から熱心なる心霊研究家であり同時に又優秀な自動書記の能力者でもありました。現にその著作には『事実の幽霊談』『ジユーリアの通信』等不朽の名篇があります。不幸にしてステッドは1912年4月8日、渡米の途上タイタニック号の沈没と運命を共にしましたが、帰幽後に於ける彼の活動と言ったら実に素晴らしいもので、いやしくも気の利いた霊媒が見つかりさえすれば、彼はたちどころにこれに憑りて人間界に向かって通信を試みつつあります。
 近年彼が狙いをつけたのは実にロンドンの閨秀(けいしゅう)作家ドウソン・スコット女史でした。女史の告白にもある通り、女史は近年しきりに自動書記能力の発達に苦心し、亡夫その他から首尾よく立派な通信を受け取ることに成功しましたが、ある日の実験に際して、俄然としてステッドからの通信に接したのであります。通信者はこの界の老大家、受信者はこの界の花形役者-これでは立派な通信が出来上がる筈です。前後併せて三十四章、何所にも一点の弛(たる)み、寸毫(すんごう)の無駄を発見し得ません。
 私は本書が専門の心霊研究者はもとより、いやしくも思想問題、信仰問題に携わる、全ての方々に是非繙読(はんどく)して頂きたいと思います。必ずやそれ等の人達に幾多有益なる思索上の手懸りを与え、幼稚無用なる論争の大半を一掃することになるであろうと信じます。

 昭和六年三月七日 浅野和三郎識