自殺ダメ


 (自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)

 第三界

 私は先ず新帰幽者の群・・・・私達の住む死後の世界の岸へと、昼夜のけじめなく押し寄せる、かの澎湃(ほうはい)たる生命の波浪につきて、定義を下しておきたいと思う。生と死とは、結局同一の意義を有つ。私は生だの死だのという言葉を聞くと、変な気持に襲われる。近頃の私はモウ大分言葉の無い、単に思想のみで生きる生活に慣れてしまったのである。
 ごく大雑把にいえば、新帰幽者は大体三つの範疇に分けられると思う。即ち-
 (一)霊の人(スピリットマン)
 (二)魂の人(ソールマン)
 (三)肉の人(アニマルマン)
 無論これ等は更に幾つにも区分し得るが、兎に角右の三用語だけは銘記することが良いと思う。何となれば、その何れかに属することによりて、各自の前途の相場が決まる訳であるから・・・・。
 これから私は各界の状況を分類する。
 第一が取りも直さず地上生活。
 第二が冥府と称せられる過渡の世界。
 第三が地上生活の心影又は反射で生きている生活で、一部の人士はこれに『常夏の国(サマーランド)』などという名称を与える。が、私としてはこれを『夢幻界』と呼びたい。
 第四は地上そっくりの形態を保持しているが、しかしその体質は、次第々々に精妙稀薄の度を加えつつある生活である。ここでは物質界との連絡が強い。
 第五は精神的要素の勝った生活で、所謂類魂の中に混じり、同一系統に属する他の霊魂達のあらゆる経験-但しそれはただ情的行為だけに限る-に通暁する。類魂につきては別の機会に説明する。
 第六は『時』の内と外とに跨る自覚の生活である。時の測定を形態を帯びて送った生涯を以って尺度とする。この中には極度に隠微な形態の生活、又程度の差こそあれ、要するに一種の私物の生活が含まれるのである。
 最後に来るのが第七の境涯、ここで前進中の魂がその本霊と融合するのである。この至福境に於いて体はいよいよ超越の世界に歩み入り、不滅なる文字の意義が初めて判って来る。もうここでは物質とすっかり絶縁してしまい、又時とも絶縁する。そしてあらゆる生命の背後の大精神、神と合一し、又あらゆる世界の生活に於いて、汝と連繋を保っていた汝の本霊と合一する。
 (評釈)大体前節の繰り返しのようなもので、別に言うべきこともない。但し帰幽者を三種類に分類したのはいささか良い思いつきであろう。結局『霊の人』とは超越味のある人、『魂の人』とは人間味の脱けない人、『肉の人』とは動物的本能の奴隷となっている人のことらしいが、成る程そう分類すればされないこともないらしい。