自殺ダメ


 [霊界通信 新樹の通信](浅野和三郎著)より

 (自殺ダメ管理人よりの注意 この文章はまるきり古い文体及び現代では使用しないような漢字が使われている箇所が多数あり、また振り仮名もないので、私としても、こうして文章入力に悪戦苦闘しておる次第です。それ故、あまりにも難しい部分は現代風に変えております。[例 涙がホロホロ零る→涙がホロホロ落ちる]しかし、文章全体の雰囲気はなるべく壊さないようにしています。その点、ご了承ください。また、言葉の意味の変換ミスがあるかもしれませんが、その点もどうかご了承ください)

 死後に於ける霊魂の存続、並びに顕幽両界の交通-それがただ一片の理論であったのでは、一向面白くも可笑しくもない話で、大の男がこれに向かって、精魂を打ち込むだけの価値は殆どないでしょう。で、私としては、一時も早くこの実際的方面の仕事を開拓したいと、年来熱誠を込めて来た訳ですが、それは漸く近頃に至りて、平たく言うと、新樹の帰幽によりて、いささか解決の曙光が見え出しました。丁度盲目の親が、子供に手を引かれて、とぼとぼと険路を辿ると言った姿であります。
 新樹の帰幽が手掛かりとなりて、先ず動き出したのは彼の母の守護霊であり、次に出動したのは彼自身の守護霊でありました。お蔭で私の為には、そろそろ彼岸との交通機関が整いかけ、ドウやら暗中模索の状態から脱することが出来ました。時を置かずに、私は早速日本の霊魂界に向かって、探求調査の歩を進めました。古い所では、千年二千年前に帰幽した歴史中の人物との交通、新しい所では、十年二十年前に現界を見棄てた近代人の霊魂との連絡、要するに殆ど八つ当たり式に、霊界の門戸を叩き始めたのであります。無論私でさえも、かくして獲たる通信全部が、全部信頼すべきものであるとは考えておりませんから、単に間接に、文書によりて、これに接するだけの機会しか与えられていない一般世間の方々は、恐らく半信半疑の域を脱することが容易に出来ますまい。殊に近頃日本の出版界では、霊界通信などと銘打てる、眉唾式の贋作が続出している有様ですから・・・。
 が、いたずらに尻込みばかりしていたのでは、こうした新事業の開拓に、目鼻がつく見込みは到底ありませんから、私としてはいかなる疑惑、いかなる嘲笑をも甘受する覚悟で、片っ端からこれを発表して行こうかと考えています。現在の私は、幽界に於ける我が愛児の、精一杯の努力が、どこまでこの道に貢献し得るかを、ひたすら考えるだけで、その他に思いを及ばす余裕とてはないのであります。
 とりあえず私がここに紹介したいと思うのは、新樹を介して、乃木大将と会見を試みた次第であります。