自殺ダメ


 [霊界通信 新樹の通信](浅野和三郎著)より

 (自殺ダメ管理人よりの注意 この文章はまるきり古い文体及び現代では使用しないような漢字が使われている箇所が多数あり、また振り仮名もないので、私としても、こうして文章入力に悪戦苦闘しておる次第です。それ故、あまりにも難しい部分は現代風に変えております。[例 涙がホロホロ零る→涙がホロホロ落ちる]しかし、文章全体の雰囲気はなるべく壊さないようにしています。その点、ご了承ください。また、言葉の意味の変換ミスがあるかもしれませんが、その点もどうかご了承ください)

 新樹の第三度目の大廟参拝は、ホンの最近のもので、この時は乃木大将と同行しました。
 昭和六年元旦-この日は午後から雪で、年賀の客も途絶え、いかにも落ち着きがよかったので、私は新樹を呼び出して、こんな事を言いつけたのであります-
 「今日は元旦であるから、この際もう一度、汝に大廟参拝をやってもらいたいと思うが、それにつきては、今度は一つ乃木さんをお誘いしてみてはくれまいか。是非御同行をお願いしたい、と言ったら、乃木さんはきっと承諾されるに相違ないと思うが・・・」
 すると間もなく新樹からの返答があった-
 「早速乃木さんにその旨を通信しましたが、乃木さんは非常なお歓びで、こんな御返答を寄越されました-「ワシは生前に度々大廟へお詣りをしたものだが、こちらの世界へ来てからは、お詣りどころか、まだそんな気分にさえなれなかった。あんたは実に良い事を教えてくださった。そう言われてみれば、ワシも是非お詣りをしたくなって。自分の方がずっと先へこちらの世界に来ているのに、後の烏に先になられて、何とも面目ない次第である・・・」そんな御返答なので、僕は早速乃木さんと御同行する事に話を決めました。ではこれから出掛けて参ります・・・」
 それから約十分の後に、新樹から報告がありました。乃木さんという新顔が加わっているので、同じ参拝でも、よほど趣の異なった箇所がありますから、多少の重複を厭わず、そっくりそのまま登載することにします-
 「乃木さんという方は、平生からあんな謹厳な方でありますから、この度の大廟参拝ということについては、よほど心を引き締めて、ちゃんとして出掛けなければならないという事になりまして、軍人ですからやはり軍服・・・例の青味がかったカーキ色の服に、長剣をさげて行かれました。僕ですか・・・僕はいつもの通り、さっぱりした洋服です。
 道すがらも、乃木さんの控え目にされているのには、僕殆ど恐縮してしまいました。どうしても乃木さんは、僕に先に立てと言われるのです。
 「ワシが先に亡くなったと言うても、こんな事は又別じゃ。あなたが先に気が付いて、あなたの方から誘われたのじゃから、どうか案内してください」
 僕は様々にお断りしたが、ドウしても乃木さんは聞き入れてくださいません。仕方がないから、僕が先へ立って案内役を務める事になりました。
 大廟の模様は、依然と少しも変わりません。例の小砂利を敷き詰めた境内、しんしんとした大木の森、白木造りのお宮・・・とても素敵です。乃木さんは辺りを見回して、こう言われました-
 「大分こりァ模様が違う。現界のお宮も結構じゃが、こちらの世界のお宮は又格別じゃ。何という御質素さ、何という神々しさであろう。ワシは近頃こんな結構な、清々しい気分に打たれたことがない。これにつけても、こちらの世界はやはりこちらの世界だけのことがあると思う。敬神と言っても、現界の敬神とは又訳が違うようじゃ」
 いかにも感激に堪えないと言った面持ちでした。
 僕達はいよいよ御神前に達して礼拝を済ましたが、その時僕は乃木さんに言いました-
 「あなたはここにお祀りしてある神様に、お目にかかられたことがおありですか?」
 「イヤまだそんな・・」と乃木さんは非常にたまげた御様子で、「自分などの境涯で、そんな事は思いも寄らぬ事じゃと思うていたが・・・。それとも浅野さん、このお宮では、神様にお目にかかる事が出来ますか?」
 「イヤ実は僕も最初そんな事は出来ないものと考えておりましたが、父から言われて、お宮の前でその事を念じましたら、スーッと神々しい女神のお姿がお現れになり、非常にびっくりしたことがあるのです。その後も一度、母の守護霊と同道で参拝して、お姿を拝みました。甚だ差し出がましいようですが、折角御同道したことですから、僕が一つ神様にお出ましを願い、あなたにも拝見出来るようお許しを願いましょう」
 乃木さんはいよいよびっくりし、
 「そんな事が出来るものなら、浅野さん、是非そうしてください」
 「そこで僕は御神前に額づいて、誠心込めて神様に祈願しました-
 「今日はこの方をお連れ致しましたから、度々のことで恐れ入りましたが、何卒神様のお姿を拝まして頂きます・・・」
 御祈願を終わるか終わらぬ中に、たちまちお宮の後方の一段高い所-前には木立の茂みの中でしたが、今日はそれとは違って、何もない虚空の一端に、いつもと同じく、白衣を召された女神のお姿がお出ましになりしたので、僕は乃木さんに「早く拝むように・・・」と通知しました。そうすると乃木さんは、はっとしてしまって、急いで、というよりかも寧ろ慌てて、低く低くお辞儀をしてしまいました。
 「乃木さん、拝みましたか?」僕は気にかかるので、下方を向いたまま訊ねますと、
 「拝みました・・・何とも有難うございました・・・」
 という返答です。
 再び上を仰いだ時には、もう神様のお姿は消えていました。何分乃木さんの歓び方は非常なもので、「大変に結構なことをさせて頂いた」と言って、涙を流して僕にお礼を言われます。僕は乃木さんに言いました。「僕にお礼なんか御無用です。幽界の居住者として、これしきの労を執るのは当然の事ですから・・・。今後も折があったら、又どこかへ御案内を致しましょう。又僕の知らないところは、どうか御指導をして下さるように・・・」
 僕は乃木さんと色々お約束をして、実に良い気持ちでお別れしました。乃木さんという方は、あんな老人で、生前地位の高かった方だから、僕を子供扱いにでもするかと思っていましたのに、却って僕を先輩扱いにしてくれるので、僕実に恐縮してしまいました。連れ立って歩いても、甚だ気持の良い方で、今後もあんな風の人と一緒に出掛けたら、面白いだろうと感じました・・・」

       
       
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