自殺ダメ


 [霊界通信 新樹の通信](浅野和三郎著)より

 (自殺ダメ管理人よりの注意 この文章はまるきり古い文体及び現代では使用しないような漢字が使われている箇所が多数あり、また振り仮名もないので、私としても、こうして文章入力に悪戦苦闘しておる次第です。それ故、あまりにも難しい部分は現代風に変えております。[例 涙がホロホロ零る→涙がホロホロ落ちる]しかし、文章全体の雰囲気はなるべく壊さないようにしています。その点、ご了承ください。また、言葉の意味の変換ミスがあるかもしれませんが、その点もどうかご了承ください)

 この前伯父さんと約束しておいた、天狗の探検ですが、僕は第一に、その事を指導役のお爺さんに相談しました。お爺さんも賛成してくれ、解らぬところは教えてやるからと言うので、僕単身出掛けることにしました。
 天狗といっても、それには高尚なもの、やくざなもの等、沢山種類があり、又その数も大変多いそうです。その中僕の訪問しようとするのは、ZKという名前の天狗さんです。聞くところによれば、この天狗さんは大分功労経ており身体には毛が生え、一寸動物らしいところがある霊魂だそうで、かなりのお爺さんですが、時には若い風もするとのことです。
 種類も沢山、数も多い天狗さんを、どこにどうして尋ねてよいか見当がつきません。そこで指導役にお尋ねすると、兎に角深山目掛け、心の中でその天狗の名を念じて行けばよいとの事でしたから、僕はそうしました。扮装ですか。それはこの場合でもあり、慣れた洋服を着て行きました。
 やがて聞いた通りの山路に差し掛かりましたが、路は随分険阻です。が、現世のような、危なっかしい感じはしません。深い谷間もあり、四辺の草木の色は鮮やかに、美しい花なども咲いており、鳥の鳴き声も聞こえます。こちらには夜がありませんから、僕は気長な登山気分といった按配で進んで行きました。天狗さんの名を心に念じつつ・・・。
 と、遙か彼方の山の木立の中に、家が見えました。屋根が反り返って、中国風に赤く青く彩色してあります。いつもそんな家がある訳ではないが、僕が訪ねて行くというので、速やかに造ったものでしょう。どうも人が訪問して来る時に、家がないのは具合が悪いもので、僕にもそうした経験があります。多分指導役のお爺さんが、前もって通知しておいてくれたのでしょう。
 門の柱などありませんでしたが、門からかなり離れて玄関がありました。そこにはZK閣と横に書いた額が掛かっていました。書体もどうやら中国風です。そこで僕は「ごめんください」と言って案内を請いました。すると若い男が取り次ぎに出て来たが、その服装は黒い毛繻子(しゅす)様の、中国風の服を纏っていましたが、僕は近頃霊眼が利くので、一寸それを働かせますと、正体はやはり天狗でした。
 来意を告げて取り次ぎを頼むと、やがてZKさんが出て来られたが、やはり老人の姿でした。背はかなり高く、年の頃は七十位に見えます。白い髭を生やして、一寸兜巾に似た面白い帽子を被り、中国服に似て少し袖の広い、鼠色の服を着、立派な草履を履いております。僕は案内されるままに上り、一間に通りましたが、立派なテーブル椅子が備えてありました。家の飾り付けなど、何れも中国好みです。庭も木石の配置等美事に出来ていました。この天狗さん、初めはどうも中国に住んでいたらしいのです。
 椅子に腰をかけてから、僕は身の上をあらまし話し、今度訪問したのは外でもなく、こちらの様子を現世に通信したいからだと申しますと、よくそんなに早く通信出来るようになったものだと言って、お爺さん大いに褒めてくれましたよ。
 僕はこの天狗のお爺さんに、しょっちゅうここに住んでおられるのかと訊きました。すると、天狗さんはイヤ中々そうはいかない、GDという男によく呼ばれて、そっちの方へ出掛けて行かねばならぬと申します。もっともそうでない時は、主に山の中で生活しているが、時には又その男を山へ連れて来て修業をさせることもある。この修業中は、その男に何も食べずともよいようにしてやる。その法はその男にも教えてある。又この山には、薬草が沢山あるので、色々な薬を製造して、前にはその男に渡していたが、今では製造法をその男に教えて作らせることにした。この外木の実や何かで、ブドウ酒に似たような飲み物も作るが、その製法もその男に教えてあると、言っていました。
 それから僕は、どんな事でも出来るかと訊ねますと、どんな事でも出来ると言います。品物を取り寄せることなど訳はないと言いますから、それでは僕の生前好きだったボンタン(果物)を、現世から取り寄せてくれと頼みました。すると天狗さんは、暫し静座瞑目しました。僕はこの時とばかり目を見開いて、どうするのかと観ていました。やがて老人の体がブルブルと震えたなと思った瞬間に、大きなボンタンが、もう僕の前にあるんです。どうしてこうなるのか、とうとう僕には分からずじまいです。
 僕はそのボンタンを持ってみましたが、どうも現世の物よりは軽い。そこで僕は現世の物が欲しかったのだと申しますと、現世のものを取り寄せることは、ここでは少し具合が悪いと言うのです。仕方がないから、僕は天狗界産のそのボンタンの皮を剥いてみました。やはり水気がなく、身もいささかカサカサしています。色は紫がかった、実に綺麗なものでした。
 物品引き寄せはこれ位にして、僕今度は奇跡を見せて欲しいと頼みました。この天狗さんは、野蛮染みたところがないので、物を頼むにも甚だ頼み易いのです。すると天狗さんは、外へ出ようと言います。僕は姿でも消すのかと思いながら、後に付いて庭に出ました。庭には川が流れていて、それに橋が架かっています。天狗さんは橋を渡って行きますから、僕も渡ろうとして、橋に一歩足をかけた途端に、天狗さんの姿も、橋もなくなりました。何だか狐にでもつままれたような恰好で、暫し佇んでいると、二、三間川上の所に、同じような橋が架かっており、そこにお爺さんもちゃんといます。こんな芸当は、天狗さんには朝飯前の仕事で、訳なく出来るらしいのです。
 それから山の方へ行って、直径二尺もあろうという松の大木をへし折りました。それが大きな音を立てて、僕の方へ倒れて来るのです。が、僕いささか自信がありますから、退こうとはしませんでした。勿論当たるようなことはなかったのです。木を折る時に、天狗さんの姿が一寸見えなくなりましたが、木が折れると出て来て、大そう自慢らしい顔つきをしていました。
 それから僕は、この家は、僕が来る為に造ったんで、平生は洞穴の中にでも住んでいるのかと訊きましたら、お爺さんちょっと変な顔をしていましたよ。が、恐らく僕の言った通りなのでしょう。そこで僕は、現界へ通信する必要があるから、どうかこの家を崩壊させて頂き、その有様を見せてもらいたいがと頼みました。天狗さんは快諾して気合のようなものをかけました。すると、赤く青く濃く彩色してある家が、段々淡くなり、上の方から下の方へと、自然に消えて行きました。実に手際は鮮やかなものです。
 そこで僕は天狗さんに頼みました。家の崩壊するところは見せてもらいましたが、今度は家を造るところを見せて頂きたいと。これも天狗さん快諾され、やや暫くすると、又気合のようなものをかけました。すると何も無かった地面の上に、これは前とは反対に、下の方から上の方へと、赤い青い色が付き始め、それが段々濃くなって、前の通りの立派な家が出来上がりました。その出来上がった家を僕は触ってみました。僕が自家の家を触ってみた感じは、何だかカサカサしているのですが、この天狗さんの家も、同じような感じがしました。中国風のどっしりした風には見えますが・・・。
 これで大概目的を達しましたから、僕は辞去するとして、天狗さんに、今度は僕の家へ来られるよう約束しました。今度は僕の方から天狗さんを煙に巻いてやりましょう。その時には佐伯さんにも来てもらうことにしましょう。

 この談話は、GDなる男の談などともよく一致しているところがあり、薬草やら飲料やらについても、そうらしく思われる節が甚だ多い。又『心霊と人生』第十四巻八号『龍神と天狗の一考察』中の天狗の正体を、側面から語っているかの如くであり、又同記事にある霊能者のスケッチと符号しているようにもある。不思議な存在たる天狗研究には、好参考たるを失わないのであろう。西洋の霊界通信には、天狗に関するものがないようであるが、天狗なるものが、我々現世人-特に日本人に働きかける影響も少なくないのであるから、これも等閑に附してはならぬ一存在として、併せて研究の要があることであろう。

       
       
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