自殺ダメ



 『これが死後の世界だ』M・H・エバンズ著 近藤千雄訳より

 P125より抜粋

 庭作り

 次は同じくトーマスの『死の彼方の夜明けに』からの抜粋で、ここでは意念の働き方が滑稽な実話で語られていて面白い。
 「この交霊会で私(トーマス氏)の父は園芸の話を持ち出し、私の知人で地上で園芸を専門にやっていたホーキングス氏を呼んで話をさせた。ホーキングス氏はフィーダを通じて今日の会の様子は一々耳に入っていたこと、そして私の父が説いた説は非常に面白いと思うと述べ、更に次のように語った。
 ホーキングス氏「では私の話を聞いて頂きましょうか。先日とても面白い体験をしたのです。私はこちらへ来てから間もなく、ある一家の庭園の世話を言いつけられました。その一家は勿論一人ずつ前後してこちらへ来たわけですが、丁度私の界で家族の者全部が一緒になったわけです。そこで庭園を作ろうという話が出て、私がその指導をすることになったわけです。こちらでの私の仕事は、本当に庭作りに興味をもっている人、或いは園芸の鑑賞力をもっている人の為に前もって庭園を作っておいてあげることです。
 「その一家の世話は私も全く予期していませんでしたので、突然指導霊から言いつけられた時は本当にびっくりしました。が、その家へ行ってみて尚更驚きました。出鱈目も出鱈目、それこそお話にならない庭の様子だったのです。一人がバラを植えようとし、もう一人がヒエン草を植えようと考える。その念が同じ場所に働くものですからゴチャゴチャになるわけです。いつの間にかバラ園のど真ん中にリラの木が立っていたりすることもあります。まるでツギハギだらけの敷物のようで、見られたものではありません。一人が畑の真ん中に細い道を作っていくと、何時の間にかその道に石ころが積み上げられています。岩石庭園(ロックガーデン)を作りたいという誰かの意念がそうさせるわけです。そう見ている内に今度はそのど真ん中が泥沼になっていきます。誰かが水蓮を植えようと考えているのでしょう。その様子を見ていた私は思わず〝ヤレヤレどうしましょう〟と叫んでしまいました。しかし相変わらずみんな自分の思い通りにやろうとして一歩も退きません。そこで私はみんなに一旦手を引くように説得して、庭にあったものを全部取り払ってしまいました。壊してしまったわけではありません。暫く別の場所へ持って行ったのです」
 トーマス氏「いっそのこと壊してしまった方が手っ取り早いのではないですか」
 ホ氏「いえ、新参者にそんなことをすると、折角出始めた創造力の芽を取ってしまうことになりかねません。お粗末とは言え折角の創造物なのですから、一応尊重してやらねばなりません。とは言え、その時の庭の酷さに私はすっかり呆れ果ててこう言いました。〝ほう、誰かさんは水蓮を植えたくて池をこしらえようとしましたね。中々いいのが出来てるではないですか。誰かさんはリラの木とバラの花がお好きなんですね。それからどなたか芝生を植えて真ん中に水蓮をこしらえようと考えましたね。小道が半分まで出来ていて、石ころが少しばかり転がっていますね〟と」
 ト氏「随分酷いですね。で、それらを全部取り払ったわけですか」
 ホ氏「ええ、初めの内、ちょっとしたいさかいがありましたので私が〝もうよろしい。私に任せて下さい。私はそれが目的で呼ばれたのですから〟と言って、一応庭にあるものを取り払ってしまいました。それには時間らしい時間はかかりませんでした。すっかり無くなった庭を見て、みんな口々に〝折角作ったのに〟と言って不服そうにしていました」
 ト氏「小道や芝生まで消えてしまうなんて私達には考えられませんね」
 ホ氏「作るのも消すのも自由自在ですよ。その原理はお父さんに説明して頂いた方が確かだと思います。別に私が一つ一つ他所へ持っていくわけではありません。何時の間にか失くなっているのです。(ここでホ氏が何か科学的変化が起きるのだろうと思うと言うと、父が割って入って、その原理は氷が溶けて水となり、更にそれが水蒸気となり、今度は逆に水蒸気が水となり再び氷になるのと同じ理屈だと説明した)
 ホ氏「勿論その変化を司るのは意念です。その作用の原理は温度が食物を変化させるようなものだと思えばよいでしょう」
 「さっきの続きですが、一応庭を元通りにしてから私はこう言ってやりました。〝バラ園を作る時はバラ園のことだけを考えなさい。バラ以外のことは絶対に考えないように。そしてバラ園が格好がついたら、次に芝生のことを考えなさい。勿論その時は芝生以外のことは一切考えてはいけません〟そう注意しておいて私は仕事をバラ園、芝生、顕花灌木というふうに分け、それを家族一人一人に分担してやりました。そしてロックガーデンのことは後回しにして、暫く自分の受け持ちに意念を集中するように言いつけました」
 「さて、そうやって一人一人に仕事を分担させておいて、大体の形が出来上がったところでそれを順々に庭へ置いていきました。ます芝生を作り、その中にバラ園を置き、次に水蓮池を適当な場所に据えました。水蓮池は一部しか出来ていなかったのですが、〝後で仕上げますから〟と言って一応そのままで使いました」
 「そこまで済ませた時、私の頭に小石を敷いた小道で囲まれた円形のロックガーデンの光景が浮かびました。私はその光景を水蓮池の完成図と共に一先ず〝精神の戸棚〟の中にしまっておいて、とりあえず通用路の完成を急ぎました」
 「間もなく通用路が出来上がったので、次の水蓮池を仕上げ、最後にロックガーデンをこしらえてみました。家族の人達は私の仕事ぶりを観察しておりましたが、非常に感心したらしく、また出来上がった庭園がいかにも気に入った様子でした。これがその一家にとってよい教訓となったことは言うまでもありません。庭園についてのいさかいも、もうないでしょう」
 「勿論この庭作りはその一家がこちらへ来て間もない頃のことだったのですが、私にとっては、こちらでやった仕事の中では一番の難儀でした。何しろ芝生を綺麗に手入れして、やおら振り返ってみると、何時の間にか石ころが転がっていたりするのですから。誰かが石ころのことを考えたからです。私には誰が念じたかが直ぐに判るので、直ぐにそのことを注意してやります。実際癪に触りますよ。あなただって、折角芝刈り機で綺麗にした後に石ころを投げ入れられたら面白くないでしょう。その気持と同じですよ。そんな時は、やった者に仕末をさせます。勿論意念でやらせるのです。いい勉強になりました」
 「私は元々庭を作ってあげるだけが本職なのですが、実際には今お話した場合のように庭作りを通じて何らかの教訓を授けること、その他目に見えない目的を持たされております。今の一家も、あの経験によって物事は秩序立てて実行すべきこと、そして同時に工夫ということをしなければならないことを学んだ筈です。私は工夫するということを第一と心得ております。いい加減な庭は決して作りません。どうしてもいい庭が作れない人の世話もしましたが、結局そういう人は工夫ということをしないからです」
 「お父さんから頼まれた庭作りの話は以上ですが、私はこんなことばかりやっているのではありません。そうね、〝本部〟とでも言うべき所での仕事もあります。材料を配布する施設で、地上の郵便局に似たところがあります。投函された手紙が集められて本局に持って来られて、そこで選り分けられて各地へ発送されるという、あの仕組みにそっくりです」
 フィーダ「ホーキングスさんはまだ話を続けています。本部の仕組みは地上より遙かに上手く出来ていると言っています。地上だと果物を生産した人はそれをどこの市場に出すと一番よく売れるかが判らない。だから需要のない時は折角の産物を捨ててしまうこともある。地上もいつかはこちらと同じやり方にしなければならなくなるだろうと言っています。つまり情報部があって、どこで何の需要があるということが判るようになっていて、その需要に応じて供給されるわけです」
 「情報がどういう形で入ってきて、それをどう処理するかを説明しようとしていますが、私には何のことだか分からないので、言葉をそのまま取り次いでみます」
 ホ氏「この本部の仕事だけど、私も時折手伝います。ここでもやはり着実と迅速がモットーです。バラ畑だのユリ池だのという注文が各地から一杯届く。その注文を郵便局であるように地区別に分類することが出来るのです。係を決めて、君はバラ畑、君はユリ池、という具合に分けるのです。担当者は自分の受け持ちの情報だけに注意していればいいわけです」
       
       
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