自殺ダメ



 これだけのシナリオを手にしていれば、自然の摂理に適った生き方をしている人間にとって死の恐怖は無縁の筈です。シルバーコードが切れる際も痛みは伴いません。落ち着くべき階層に至ると、先に他界した縁ある人々の出迎えを受け、しかも地上に遺した人達との繋がりも切れていません。
 その辺のことを心配している方の為に、1918年に他界したセントポール寺院の参事H・S・ホーランドからのメッセージを紹介しておきましょう。
 「死は何でもありません。隣の部屋に移るようなものです。私は相変わらず私であり、あなたは相変わらずあなたです。お互い地上時代のままが、そのまま続きます。私のことを昔の愛称で呼んでください。地上時代と同じように気楽に語りかけてください。恭しさや悼みを込めた言い方は止めてください。下らない冗談で大笑いしたように気楽に笑ってください」
 「人生の持つ意味は地上時代と少しも変わっていません。そのまま続いています。去る者日々に疎し、などと思わないでください。皆さんがお出でになるのをお待ちしております。それも遠い先のことではありません。もう直ぐ、そして、直ぐ先の曲がり角で。全て世は事もなし、です」
 未知なるもの(死)への恐怖をシルバーバーチは戒めています-
 「明日(死後)を素晴らしい冒険と可能性の前触れとして歓迎しなさい。わくわくするような気持で毎日を送らないといけません。不安を蹴散らしなさい。ただの無知と迷信の産物にすぎません。皆さんは正しい知識という陽の光の中で生活出来る、恵まれた方達です」

 (訳者説明)
 レスリー・フリントは同じ霊言霊媒であっても、「直接談話」と言って、バーバネルの場合のようにスピリットが霊媒の口を使って喋るのではなく、空中から直接語るという特異なもので、それだけにSPR(心霊研究協会)の徹底した調査を受けた。そのメカニズムをここで解説する余裕はないが、唯一の著書『暗闇の中で語る声』で、出現した著名人の霊言を豊富に掲載しており、その中でも特にカンタベリー大主教コスモ・ラングの霊言が非常に興味深い。
 モーリス・バーバネルが〝ミスター・スピリチュアリズム〟の異名を取るきっかけになった生前のコスモ・ラングとの激論は、当時の英国中の話題をさらった。それは英国国教会のスピリチュアリズム調査委員会が纏めた『多数意見報告書』を巡るもので、複数の霊媒を使った二年間の調査による結論がスピリチュアリズムを肯定する内容だったことから、ラングが公表を躊躇っていたのでサイキック・ニューズ紙のスタッフが国教会の主教につぶさに当たり、ついにその報告書のコピーを入手し、バーバネルの決断でその全文を『サイキック・ニューズ』紙に掲載した。そのことに激怒したラングとの間で、書簡による激論が始まった。その内容は次のレンドール参事会員の論評が適確に物語っている-
 「この調査委員会による結論の公表を禁止させた主教連中による心無い非難や禁止令、それと何かというと『極秘』を決め込む態度こそ、国教会という公的機関の生命を蝕む害毒の温床となってきた、了見の狭い聖職権威主義をよく反映している」
 そのラングが死後フリントの交霊会に出現し、この件に言及してこう述べている-
 「もし私が今やっと知るに至った霊的知識を携えてもう一度人生を一からやり直すことが出来たら、どれほど意義ある人生を送れるだろうかと思えて、無念の極みです。その気になれば出来たのです。ですが、私は臆病でした」
 そう述べてから、大戦で戦死して次から次へと送られてくる若者達が、国教会が死後の存在と顕幽両界の交信の可能性について教えてくれなかったことに憤っていることを述べ、更に、現在の日本の心霊界にも当てはまる傾聴すべき指摘をしている-
 「スピリチュアリズムが人生に重大な意味を持ち、とても大切なものを秘めていることを強く感じますし、全ての人に知って欲しいと思いますが、同時にその捉え方を誤ると危険極まりないことも感じています」
 「高級霊、優れた霊、人類を高揚する程の力を有する階層との接触を得るには、それ相応の精神と思想、そして高度な波動を具えた霊媒ないしは霊能者を用意しなければなりません。その点、不幸にして現在の地上の霊能者は低級な人が多すぎます。咎めているのではありません。私は何とか力になりたくて申し上げているのです。高尚な精神を具え、自分の存在を地球人類の為に犠牲にする程の気概に燃える霊媒を揃えてスピリチュアリズムが正しく活用されれば、それは間違いなく人類を益するものとなるでしょう」
 「しかし、私が見るところでは、百人の内九十九人の霊媒がやっていることは、いわば幽界の表面を引っかく程度のものでしかなく、これではスピリチュアリズムはむしろ危険です。なぜなら、類は類を呼ぶの譬で、地上界にへばり付いている低級霊に利用され、いい加減なこと、不幸や面倒なことを引き起こすようなことばかり口にするからです」
 「その上危険なのは、立ち会っている人達がそうした低級霊に憑依されてしまうことです。そうなると人間性が歪められ、更には真理が歪められていきます」
 又別の日の交霊会では本章と同じテーマについて述べているので、ついでに訳出しておく。
 「人間は幾世紀にも亘って真理に背を向け、人間が本来は霊であること、それ故に永遠に不滅であるという最も大切な真理が見えずにまいりました。今、自分の地上人生を振り返ってみると、自分がいかに宗教的教訓と体験の道から逸脱していたかが分かります」
 「神の言葉を聞きに集まった善男善女に私は、あのヴァチカンの説教壇から、これこそ真理と思うことを説いてきました。その時は自分では真理を知ったつもりでいたのです。が、今から思えば、単純明快さと内部の霊性についての知識が欠けておりました」
 「イエスを始めとする初期の偉大なる改革者や指導者の教えの真意を理解していたら、と残念に思えてなりません。初期の時代から貫かれている黄金の糸に気付いていれば、と悔やまれてなりません。その黄金の糸とは、人間は信仰に関わりなく全てが大霊の子であり創造の大計画に組み込まれていること、全生命は不滅であり、地上の最下等の生命でさえ、地上だけでなく死後も存在の意味を持っているという事実のことで、これが全真理の基本なのです」
 「霊とは人間的形体や宇宙の森羅万象として顕現しているエネルギーのことです。生命力であり、エネルギーであり、バイブレーションです。全生命が同じ霊の一部ですから、不滅なのです。地上にいる皆さんは同じバイブレーション、同じ振動、同じ波長の中にいますから、肉体の五感は環境を実感があるように思い、硬いという感触を得ています」
 「しかし、今や科学によって、地上界には実体のあるものは存在しないことが分かっております。今そうやって座っておられる椅子を皆さんは硬いと感じているでしょうが、それは、その椅子を構成している素材の原子核の回りを回転している電荷と、あなた方の身体の電荷とが同じだということに過ぎません」
 「死ぬと今度は幽体と呼ばれている、より高い周波数で振動している身体で生活を続けます。その幽体は死後の階層の波長と同じですから、今皆さんが身の回りの環境が硬いと感じているのと同じ原理で、やはり全てが硬くて実感があるように思えるのです」