自殺ダメ



 これも心霊学でいう物質化現象である。〝白い布のようなもの〟というのはエクトプラズムという特殊物質で、人体の神経細胞に含まれていて、それに霊界の化学物質を混ぜてこしらえると言われる。フランスのノーベル賞生理学者シャルル・リシェ博士が、エクトス(抽出された)とプラズマ(原形質)とを合成して命名したものである。
 物理霊媒というのはこれを多量に所有し、しかもそれを出し入れ出来る体質の人で、女性に多いようである。神経細胞が主体なので、これが大量に取られると神経が鈍り、眠気を催すことがある。女中がその姿を見ている間は何の恐怖感も覚えなかったのはその為で、姿が消え、エクトプラズムが体内に戻されると、急に怖くなったのである。
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 ここに紹介した写真はブラジルにおける心霊実験会に出現した、ローズと名乗る女性霊の物質化像で、信じられない程生々しい表情をしているが、下半身がただ白い布を纏ったのとは少し様子が違うことにお気付きであろう。残念ながらこの写真と実験会に関する詳しいデータがないので信憑性に欠けるが、女中が見たというのはこんな姿をして、もっと顔を隠していたのではないかと思う。ローズに劣らず生々しく、しかも信憑性において第一級の物質化像の写真を、三章(自殺ダメの[霊の存在する証拠の写真]に掲載してあります)で紹介する。
 近藤家で雇っていたその女中は台湾の高砂族の娘で、霊媒的体質をしていたのであろう。無学文盲だったが、こうした問題ではそのことがかえって信頼度を増すものである。母が見たというのであれば、疑り深い人は気のせいではないかと思うであろうし、そう思われても致し方ない。証拠は何一つないのであるから・・・。
 が、女中は、先程述べた母の不吉な夢や予感のことは何も知らなかった。その時点では母はまだ誰にも話していない-母一人がその不吉なものを感じ続けていただけである。そんな時に女中が、一般常識から言って突拍子もないことを言うのであるから、それ自体は事実だったと受け止めてよいであろう。
 問題はその現象のメカニズムと意図である。メカニズムについては今説明した通りであるが、その意図は何かといえば、兄の背後霊の一人が母に死期がいよいよ近いことを知らせに出たと受け取るのが自然(心霊学的に)であろう。