自殺ダメ



 解説 幽体離脱現象の諸相  カール・E・ミュラー博士 

 『驚異の幽体離脱体験記 私の霊界紀行』F・C・スカルソープ著 近藤千雄訳より


 人間とは物的身体に包まれた〝霊〟であるとよく定義される。〝霊〟という用語さえ正しく理解すればこの定義はまさしくその通りであると言えよう。かつての〝霊〟の概念においては物質とは全く縁のない最高の形而上的原理という観念的な捉え方をしており、従ってこれが物質に影響を及ぼすことは有り得なかった。そのことが哲学的に様々な行き詰まりを生ぜしめたばかりでなく、心霊現象の存在の理解を困難にし、もしてや〝霊魂説〟を到底受け入れ難いものにしていた。
 実際は人間は元来が〝霊〟であって、それが身体を具えているのである。正確に言うと、その身体と霊との橋渡しをする中間的物質をも含む複合的存在である。多分昔から用いられている〝魂〟というのはその中間的物質のことを指していたのであろう。それが、正確な知識がなかった為にいつしか〝霊〟と同じものと見なされるようになったのであろう。
 成長するにつれて人間の身体は周りの物的環境と接触する為の機能を発達させていく。魂というのは意識の場において〝自分〟と繋がっている感覚、感情、思念という形を通じてその存在が知られる。その繋ぎ役をする媒体の中で最も重要なのが〝幽体(アストラルボディ)〟で、霊視すると肉体とそっくりなので〝複体〟と呼ばれることもある。
 日常生活を営んでいる間は幽体は肉体の中に収まっており、ほぼ同じ形体をしていて、完全に一体となっている。従ってその存在を示す兆候としては、それが肉体から分離した時にしか現れない。それも様々な形をとるが、例えば睡眠がそれであり、昏睡状態がそれであり、生者の幻影(その殆どは無意識)がそれであり、そして本稿の主題である幽体離脱がそれである。これはESP離脱と呼ばれたり霊界旅行と呼ばれたりすることもあり、完璧な状態では立派に意識的体験となる。
 その完全に離脱した状態は他界した〝霊〟と全く同じ状態である。事実、死んだと思われた人間が生き返って、その間の体験を思い出して語ってくれた人の話(近似死体験)と、睡眠中に離脱して体験する人の話とが内容的に実によく似ている。その意味で幽体離脱現象は死後存続の証拠となる一連の事実を関連付ける重大なカギであることは明白である。そのことは既に幾人かの著名な研究者、特にデュ・プレル、マティーセン、最近ではH・ハート教授などが同じような認識を持っている。