自殺ダメ



 もしも肉体を離脱した人間が死者の霊と同じ状態にあるとすれば、当然、霊界通信と同じ情報が報告されてよいことになる。現にそれが実に豊富にあるのである。他界した人間に会ったとか霊の助けを得たとかいう報告もよく聞かれる。
 1848年の近代スピリチュアリズム勃興以来、テーブル現象、ラップ、ウィジャ盤、自動書記、霊言等の手段によって死者からの通信が得られているが、同時に生者からの通信も得られている。心霊写真で生者の幽体が写ったこともあり、関係者を驚かせた。
 更には、物理的心霊現象に生者が出現した例もある。ダベンポート兄弟によるテレキネス現象は二人の幽体によって起こされていたと言われた。1876年には霊媒エグリントンの幽体の物質化した足の型が石膏で取られた。また直接談話現象と物質化現象に関連して霊媒M・C・ウラセク女史の興味深い話がある。
 ウラセク女史は自由自在に離脱が出来る人だった。1926年のことであるが、オハイオ州のトレドーへ列車で向かっていた車中で二晩続けて離脱に成功して、しかも最初の晩はある交霊会へ出て、少しではあったがメガホンで喋り(直接談話)二日目の晩は物質化現象の実験会場へ出て、背後霊の助けを借りて完全に物質化して出現し、列席者に話しかけた。全員が知人ばかりで、ウラセク女史であることを疑う者は一人もいなかったという。
 大抵の霊媒は少なくとも時たま幽体離脱を体験しているものである。米国のアーサー・フォード氏は二週間もの間霊界を旅行した体験を書いている。そのとき彼は入院中で、身体は昏睡状態にあった。またオランダの物質化霊媒アイナー・ニールセン女史はスピリチュアリスト・チャーチで入神講演をしている最中での霊界旅行の話を書いている。珍しい条件下での体験である。最近では英国人霊媒バーサ・ハリス女史がやはり入院中の幽体旅行記を書いている。
 私が親しくしている霊媒でやはり入神中に、つまり肉体が霊によって使用されている最中に霊界を訪ねて来た体験の持ち主がいるが、この人は更にこんな興味深い体験もしている。ある交霊会でのことであるが、ふと意識が戻ると、入神中の自分の身体を支配霊が使用して列席者の一人一人と挨拶を交わして回っているのが見えた。彼にはその霊の姿は見えたが、自分の肉体は見えなかったという。