自殺ダメ


 バーバネルが自分の後継者と見なしていたトニー・オーツセンに「自分が他界してから開封するように」と言って託した最後の記事『シルバーバーチと私』を読むと、誘われて出席した交霊会でいきなり無意識(トランス)状態になり、その間にシルバーバーチと名乗る霊が喋り、その後自宅でも喋るようになったという。このいきさつだけを見る限りでは、日本でも、いや世界中で安直に行なわれている降霊現象と五十歩百歩という印象を受ける。そのことについて簡単に注釈を加えて警告しておきたい。
 交霊現象の古くは「神降ろし」と呼ばれ、現在では「招霊実験」と呼ばれることもある。神または霊が実際に降りて来て霊媒に乗り移って(憑依して)語ると信じられており、事実その通りのケースが圧倒的に多いと想像されるが、シルバーバーチの出現によって必ずしもそうではないケースが多い、特に高級霊が出現する時がそうであることが明らかとなった。
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 シルバーバーチは、初めの頃、フランス人の霊視画家マルセル・ポンサンが描いた北米インディアンであると自称し、交霊会の最後で述べる神への祈りの言葉も「あなたの僕インディアンの祈りを捧げます」で締めくくるのが常であったが、霊的知識がある限度まで達した段階で改まった態度でこう述べた。

 シルバーバーチと名乗っている私は実はインディアンではありません。彼は「霊界の霊媒」です。私は地球圏の波動の届かない次元の存在なので、その中継役としてインディアンを使っているのです。いわば私のマウスピースで、バーバネルはそのインディアンのマウスピースです。(「インディアン」は現在では不適切用語とされ「ネイティブ・アメリカン」、正確には「ネイティブ・ノースアメリカン」と呼ぶが、当時はシルバーバーチ自身がインディアンと言っていたのでそれに倣った。)

 別の日の交霊会では「中継役」は無数にいますとも言っている。そして「中継は瞬時に行なわれる」という。思うに、最近の車のカーナビは精度が増す一方で、実に便利になってきたが、これも人工衛星を使って初めて出来るとのことであるから、「中継は瞬時に行なわれる」というのも大げさな表現ではないのであろう。
 さて、もう一つ大事なことがある。交霊の会場及び出席者の問題である。ここに紹介した写真はサイキック・ニューズ社の青年部会のメンバーだけの交霊会の様子で、どこかしら若者らしいしゃれっ気が見て取れる。バーバネルの横には例によって愛妻のシルビアが座り、右横にはオーツセンの後ろ姿も見える。
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 この写真でもよく分かるように、いつもメガネのままで、一見すると普通に話をしているような錯覚を覚える。ところが実際は完全な入神(トランス)状態に入っており、いわば生身のアンテナのようなものであるから、受けた波動は全て口にしてしまう。ここが気を付けねばならない大切な点である。
 出席者はレギュラーメンバー十人に招待客二、三人というのが通例だった。レギュラーメンバーは無断で欠席してはならないし、次回の招待客は交霊会の終わりに司会者がシルバーバーチの許可を得なければならなかった。なぜか?これは重大なことなので、詳しく説明しておきたい。
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 司会者は、初期の段階では、この後詳しく紹介するジャーナリストのハネン・スワッファーで、「フリート街の法王」とまで呼ばれた英国ジャーナリズム界の御意見番的存在だった。(フリート街は英国の新聞社が軒を連ねる通りで、英国のジャーナリズム界の通称)スワッファーはその知名度で次々と各界の著名人を招待し、それがスピリチュアリズムの普及に計り知れない貢献をしているが、シルバーバーチは、有名人だからではなく、その人物の霊的波動が建設的か破壊的かを判断の規準としていたようである。交霊の場においては邪念が最大の悪影響を及ぼすからである。
 元々降霊ないしは招霊は太古から世界中の民族において盛んに行なわれていて、最近有名になった日本の卑弥呼も霊媒体質の族長で、戦乱の絶えなかった当時、作戦についての啓示に誤りがあって大敗を喫し、当時の掟に従って処罰されたのではないか、というのが有力な説である。
 そういう場合にも邪悪な低級霊の暗躍が考えられるが、シルバーバーチのようにスピリチュアリズムの一環として重大な目的のもとに開催している場合は、それを挫けさせようとする低級霊集団が、大した怨恨があるわけではなく、ただのイタズラ心から悪さをするものらしい。更に忘れてならないのは、「オレにも一言喋らせろ」と強引に霊媒に憑依しようとする乱暴な低級霊がいることである。
 この場合に気を付けねばならないのは、実際に霊媒に憑依しなくても、その強烈な念が霊媒に感応して、ワケの分からないことを口走ることがあることである。
 そんな次第で、誰でも参加できる交霊会は用心した方がよい。シルバーバーチの交霊会では、そうした飛び入りの邪魔を阻止する為に霊団が、デモを規制する機動隊のように、環をこしらえて守っていた。
 もう一つ付け加えれば、バーバネルは次の交霊会の招待客について一切耳に入れないことにしていた。その知識が先入主となって霊言に余計な脚色をすることがあるからだという。
 こうした事情を勘案すれば、誘われて初めて出席した交霊会がバーバネルが言っている通り「およそ垢抜けのしない」ものであっても、その背後では霊団側が万全の配慮をしていたことが推察できる。決して「ある日突然」ではなかったのである。