自殺ダメ


 シルバーバーチは自分が3000年前に地上生活を送ったことのある「古い霊」であることを認めながら、その時の身分、地位はおろか、姓名も民族もヒントすら与えなかった。半世紀にわたって週一回、時には地方や海外に出張してセイアーンスを開いているので、その回数は大変な数に上るが、いつどこで何度聞かれても、絶対に明かすことはなかった。なぜであろうか。
 既に述べたように、出現した当初シルバーバーチは地上時代は冒頭の肖像画で見る通りの北米インディアンだったと広言していたが、その内これは霊界の霊媒で、数多いアンテナの一つに過ぎないと述べ「私が地上でどういう身分の人物であったかはどうでもよろしい。私がどの程度の存在であるかは私が説いていることで判断して頂きたい。肩書きだけで判断しようとするのは人間の悪い趣味です」と述べ、地上時代の身元の問題はそれきりご破算となってしまった。しかし、これは二つの大切な教訓を示唆していると私は受け止めている。一つは低級霊ほど大人物ないしは著名人の名を名乗ること、もう一つは霊的能力は持って生まれてくるもの、言い換えれば、使命の遂行に必要なものとして授けられるものであって、単なる願望によって身に付くものではないということ。
 自慢ではないが、70冊近くになる私のスピリチュアリズム関係の訳書の中に、霊能の開発に関するものは一冊もない。唯一それに近いものとしては米国人霊能者ルース・ウェルチ女史によるExpanding Your Psychic Consciousness(直訳すれば「霊的意識を高める為に」)というもので、これを某出版社が『霊能開発入門』として出したので、不満に思っていた私はこのたび潮文社から『霊能を開く』と改題して出して頂いた。
 前にも述べたことであるが、霊能開発にまつわる危険性の一つは霊能を欲しがる人間の背後にイタズラ好きの低級霊がつきまとって僅かでも出始めた霊能を利用して人間をたぶらかそうとすることである。霊言の場合だと、歴史上の著名人や大人物の名を騙(かた)って偉そうな態度で立派そうなことを喋る。列席者がそれを真に受けて感服するのが愉快なのである。西洋での人気の筆頭は御存知イエス・キリスト、次がジュリアス・シーザー、ナポレオンなど。女性ではクレオパトラ、マリー・アントワネットといったところ。
 日本では家康、信長、秀吉といったところであろうか。あちらこちらの交霊会をかけもちして大忙しのようである。
 これでシルバーバーチが地上時代の実名を明かしたがらない理由がお分かり頂けるであろう。ということは大変な人物であったことの裏返しであるとの見方も出来るが・・・・